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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第四章 『二月二日と少年』
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イセカイ篇 12 『悠さんは魔法使い。』

本日投稿 2話目です!



結局、三十体近く居たリロクの使い魔達を、

ことはが片付けるのに殆ど時間は懸からなかった。


使い魔は灰となって跡形も無く消えて、

俺達の周囲を取り囲んでいるのは、

また元の暗がりだけになっている。


「僕にばかり戦わせて、ひどいじゃないか」


俺は本当に身動きひとつ取れずに、

ことはが使い魔達を次々と打ち砕く姿に、

圧倒されていただけだった。


「強くないって言っただろ」


「少しは(ナツメくん)の能力も見てみたかった」


ことはが居るのに、

俺が戦闘で役に立つ訳無いじゃないないか。


◆◆


『りしえる』の灯りは消えたままで、

スマホで時刻を確認したが、

今回はちゃんと時間も経っている。


つまり俺達は、きちんと夜の中にいる。



「リロクの結界は、

対象を中に閉じ込める性質のものだ」


ことはが、俺にそう説明してくれた。


「結界を発動させる装置は、結界の中に置けても、

術者(リロク)は結界の外に居なくちゃならない」


今、正常に時間が経過していると云う事は、

結界を張られていないと云う事の様だ。


「一般人に目撃されるのを、

嫌がってるのかと思ってたけれど、

そうでは無いらしい」


「魔法って、こっちの世界で見られるとマズいのか?」


「人それぞれだろうね」


「お前は?」


「僕は、別にどっちでも良いかな。

自分から見せたりはしないけど」


ことはが店の入り口で、俺に手招きをしている。


「中にどうやって入るんだ?」


「じゃーん。鍵を持って来ている」


じゃらじゃらと色々なものをぶら下げた、

カラビナに付いた鍵を俺に見せてきた。


何故、これを忘れられる。


「それ……、さっき部屋に忘れてたよな?」


ことはは、俺を無視して入り口の鍵を開けた。


「……いきなり、リロクと遭遇とかしないよな?」


「それならそれで好都合じゃないか?」


「心の準備が……」


「足元に気をつけて」


ことはが電気のスイッチを探り、

ホールの灯りを点けた。


「二階だ」


俺は頷いて、ことはと一緒に二階の事務所へ向かった。


「魔力を消すのが上手いね。

注意して探っていても、

気を抜いたら直ぐに見失ってしまう」


ことはが独り言の様に言った。


「消すと云うより、()()()()()()()()のかな?

スキルの類いでも無さそうだ」


階段を上がって、二階の廊下の灯りも点けた。

事務所のドアの前に立ち、

ことはが軽くノックをした。


返事は無い。


「本当に誰かいるのか?」


「居るね。魔力は感知しづらくても、気配は感じる」


そう言うと、ことははドアを開けた。


「悠ちゃん。僕の予感は当たっているかな?」


その声は暗闇の中に吸い込まれたが、

直ぐに事務所の蛍光灯の灯りに依って、

影に隠れる様にして、

息を潜めていた悠さんの姿が露になった。


「ことは」


悠さんは眩しそうにしながら、名前を呟いた。


「同じメイドカフェで、

魔法使いが二人も働いていたなんて、

すごい偶然だと思わないかい?」


あんた(ことは)も内緒にしてただろ?」


「僕にも色々事情があってね。

悠ちゃんもそうなのかな?」


「魔法使いでーす。なんて、自分から言う訳ないじゃん」


「それはそうだ。

僕が魔法使いだと云う事を、元々知っていたのかな?

知っていて、僕に近づいたのだろうか?」


「……最初は分かんなかった。

魔力の感知なんて殆ど出来ないし。

魔法使いって云っても、私はハッキリ言ってショボい。

自分で言うのも何だけど」


「じゃあ、いつ気づいたのかな?」


「……。ことはが変な奴らと戦ってたのを見た」


「見られてたんだ」


()()()()()()に居ない生き物だったろ」


「そして君は、やっぱり異世界から来たんだ」


「……まあね」


「一人で来たの?」


「……そう」


「どうやって来たのかな?」


「質問ばっかだな」


「それに」


ことはが、「フッ」と微笑んで、

一つ間を空けた。


「……何?」


悠さんが恐る恐る尋ねる。


「もしかして、悠ちゃんは僕の事を尾けてたのかな?」


「へ!? な……、何で!?」


「僕が変な奴らと戦ってたのを、

どうして見れたんだろうか?

僕はお店の周りで戦った記憶は無いし、

悠ちゃんの家と僕のアパートは反対の方向だ。

もしかして……」


「ちがうッッ!? ストーカーとかじゃないから!?」


「ははーん」


「違うから!!?」


悠さんは顔を真っ赤に否定していたが、

おそらく、ことはが言っている事で間違い無いのだろう。


(くすぐ)ったいような、

ほくそ笑んでしまう様な、

想像をすると、

むず痒くて、ニチャニチャと顔が弛んでしまう。

俺は二人の様子を見ていた。


「さて、

悠ちゃんにそういう気質があるのが分かったところで」


「違うんだって!!」


「本題に移ろう。

君は、この世界で一体何と敵対しているんだろうか?」


ことはが、悠さんに訊いた。


「理央ちゃんと茉央ちゃんを守ろうとしていたのは、

その何かからなんだろうね。

それに、あの時の電話。

僕に何か伝えたい事があったのだろう?」


悠さんは答えるかどうかを、

迷っている様に俺には思える。


彼女(悠さん)は、しばらくの時間黙り込み、

やがて、ゆっくりと話を始めてくれた。


失言に注意して、

自分の言葉をとても厳選しながら、

俺達と、他の誰かを警戒し続けている様子だった。


◆◆◆

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