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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第四章 『二月二日と少年』
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異世界篇 11 『無遠慮であるという事。』

本日の投稿 1話目になります!



お前(スイ)は“中央の魔女”の娘だ。

魔女は、この世界で一番強かったかも知れない女だ。

(クジン)は知っている」


「魔女。いきなり他人の親を魔女呼ばわりとは、

少し失礼過ぎじゃない?」


スイはあからさまに不機嫌だった。


「なら、何と呼べば良い?“魔人”か?」


「クジン。止めなよ。

初対面の人には、もう少し愛想を良くするもんだよ」


お前(シンヒ)は黙ってろ。俺はスイと喋っている」


「ちょっとさーー?口の利き方とか知らない?」


ユンタも苛ついた口調でクジンを問い詰めた。


獣巫女(クラウドナイン)、お前の事も知っている」


「その、“知っている”っての、もーいーから。

イェンといい、お前といい、

知識披露するのが具現派魔術師(おめーら)の仕事か?

気持ちワリんだよバーカ」


「昔は強かった」


「ああん?」


「西国で、

お前(ユンタ)の名が馳せていたのは百年以上前だ。

鬼火が死んだ後、お前は表舞台から消え、

隠遁し続けた。

だから、今のお前は弱い」


「……試してみるかコノヤロー?」


「俺達が金で雇った使い走りの雑魚(ツァンイー)にすら苦戦した。

スイ。お前もだ。

お前の使役する精霊は強いが、

その所為で精霊を頼りにし過ぎて、

お前自身が隙だらけだ」


「なんて偉そうなんだ(クジン)は」


「俺はお前達より強い。だからだ」


「あッッたま来たー! コノヤロー!! 表出ろい!!」


「“中央の魔女”は強かった」


「しつけーよ!!」


「二百十七人」


「はーー!?」


「十四年前に中央の魔女が異世界から現れて、

七年前に姿を消すまでに、

魔女が此の世から葬った魔法使いの人数だ。

勿論、俺が把握しているだけで、

実際は、もっと多い。

当時、世間を恐怖に陥れていた、

悪名高い、おたずね者の魔法使い達の大半が、

中央諸国から依頼を受けた魔女によって倒されている」


「けっ……」


「魔法史上、俺が知る限り、

魔女はこの世界で最も強い」


「だからなんだっつーーんだよ?」


「俺は魔女の様に強くなりたい」


「はーー?」


「魔法使いは、強く在るべきだ。

此の世の理の範疇から外れた異端の力を、

魔力だの術式だのでは無く、

自由と創造に依って、

発現させるのが魔法だと俺は思っている。

今、此処に居る大半の者が、

魔法のスキルを持って産まれて来ている。

なのに、お前らは弱い。

俺は弱い魔法使いが嫌いだ」


「ウチもおめーーの事嫌いだけどね!?」


「ごめんなさいね。コイツ、頭おかしいから」


シンヒが舌を出して(おど)ける様に言った。


「君が相当な実力が有る事は、

此処に居る全員がわかってるよ。

だけど、

今は僕達(イファル)君達(ソーサリースフィア)で同盟を結ぼうと云う場だ。

少し口を慎んだらどうかな?」


「それな!」


「紹介した(イェン)の面子も丸潰れですね」


「お前の面子など知った事か。

曲がりなりにも敵は聖域教会とネイジンだ。

こんな戦力で本当に戦うつもりなのかと、

俺には甚だ疑問だ」


「乗り気だったじゃん。あんた」


シンヒは相変わらず楽しそうにしていた。


あたし(シンヒ)はね。

コイツと違って不満は無いんですよ?

別に、お手々繋いで仲良く戦う訳じゃ無いんだから。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「足を引っ張られるくらいなら、俺は同盟を組まない」


あんた(クジン)、ちょっと黙ってな。

主旨がズレてんのさ。

この同盟にゃメリット(女神の痕跡)が有るのを忘れてない?

ネイジンに乗り込みゃ、

今までみたいにチマチマ集めなくたって済むんだ。

多少の不満くらい我慢する事を覚えなさいよ」


お前(シンヒ)に言われるまでも無い」


「と云う訳で。

皆さん。よろしくお願いしますね」


シンヒはそう言って、

スイに手を差し出して握手を求めた。


「魔女」


「え?」


「わたしの母を、

魔女と言った事をまだ謝ってもらってない」


「ああ。それも本当にごめんなさいね」


(シンヒ)にじゃない」


「……。クジン。この娘に謝りな」


「どうしてだ?」


「いいから。凄く怒ってるのが見たら判るでしょうが」


「何故怒ってる?意味がわからない」


「ごめんなさいね。アイツ、頭がおかしいんだよ。

あたしが代わりに謝るから、許してくれないかな?ね?」


「魔女は魔女だ。

それ以外の名称が必要だったのか?

誇れ。

お前は魔女の娘だ。お前は強くないが、

お前の母親は強い」


「あんた、いい加減に……!」


───ドゴッッッッッ!!!!


シンヒがクジンを叱責しようとした刹那、

その場に居た誰もが眼で追えない速度で、

シャオがクジンの顔面に、

正面から拳を叩き込んでいた。


信じられないくらいに、重い一撃だった。

噴水の様な鮮血が周囲に飛び散っていく。


クジンは少しよろめいて、

後退りをしながらシャオを睨み付けた。


「“白銀”」


「先程から……、どう考えても無礼でしょう……?

スイの大切な方を愚弄するのならば、

この白銀が相手になりますけど……?」


シャオの周囲を取り囲む様にして、

冷厳な闘気が漂い始めている。

必死に堪えているらしかったが、

その眼は殺意で凍てついていた。


「お前は魔法使いでは無い」


「魔法使い相手でないと、戦う事が出来ませんか?」


「戦う必要が無い」


「臆病ですね。

ご覧になる勇気が有れば、

自慢の魔法を、貴方ごと粉砕して差し上げますけど」


「待った待った。

ちょっと二人共落ち着きな?」


クジンは鼻と口から溢れ出て止まらない流血を、

腕で拭い、口の端を舌で舐めた。


お前(シャオ)は、

物理攻撃一辺倒だと解釈しているが、

魔法を侮辱しているのか?

ならば、

これで戦う必要が出来たな。“白銀”。

俺はお前の事を知っている」


◆◆

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