表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第四章 『二月二日と少年』
117/237

イセカイ篇 10 『理央と茉央。』

本日投稿分です!


すみません!今日はこの1話のみになりますー




段々と人気(ひとけ)が少なくなったのを見計らって、

ことはが、歩きながら煙草にライターで火を灯した。

そのまま勢い良く煙を深く吸い込むと、

旨そうに、ゆっくりと、

白い息の様に煙を口から溢れさせた。


「おい。灰皿無いぞ」


「誰も見ていやしないよ」


彼女(ことは)は、

帰り際に事務所の冷蔵庫から拝借して飲んだ、

エナジードリンクの空き缶に、

煙草の灰をポンポンと落とした。


「マナー悪!」


「うるさいな」


彼女は挑発する様に、俺に向かって煙を吐いた。


「やめろ! てか! 

もう結構歩いてんだけど、

何処に在るんだよ?

俺も今日働いたんで疲れてるんですけど」


「それは僕が悠ちゃん(店長)に口を利いたお陰だろう?

つべこべ言わないで黙って歩く」


彼女はそう言いながら、

キョロキョロと辺りを見回しながら歩き続けた。


煙草が短くなると、灰皿代わりの空き缶の中に落として、

ジュッ、と火の消える音がした。


「ここじゃ無い。移動してるね」


「は!? こんなに歩いたのに!?」


「僕のせいじゃない」


彼女は用心深く、周囲の様子を探っている。


「ならもう帰ろうぜ。流石に疲れたわ」


「文句が多いな君は」


俺達は引き返して、同じ道をまた歩き、

再び『りしえる』の前を通った。


店はもう電気も消えて、

大勢の客で賑やかだったのが、

嘘の様に静かで真っ暗だった。


「お前、凄かったな」


「何がだい?」


「モテてたじゃん」


「そうかな?メイドさんだからかな」


「どっちかって云うと、王子様だったけどな」


「ちょっとコンビニに寄っても良いかな?」


『りしえる』から、

一番最寄りのコンビニに俺達は寄って帰る事にした。


コンビニの入り口に、

女の子が二人居た。

缶のアルコール飲料に、ストローを差して飲みながら、

何やら楽しそうにスマホで自撮りをしている。


「あれー?ことはさーん♥️

まだ帰ってなかったんですかー?」


見覚えのある女の子達だと思ったら、

『りしえる』の従業員の理央と茉央だった。

メイド服から着替えた、私服の彼女達は、

所謂、量産型女子のゆるふわっとした服装だった。

ほんのりと顔が赤いのは、チークでは無い。

理央達は酔っている様子だ。


「おつかれ理央ちゃん、

茉央(まお)ちゃんもおつかれさま。

こんな遅くまで起きていて、悪い娘達だな」


「きゃー♥️」


理央と茉央は手を繋いで楽しそうにはしゃいでいる。


事務所に居た時に、本当に挨拶程度だったが二人とは、

言葉を交わした。

その時に彼女(ことは)から、紹介をされている。


二人は双子の姉妹だ。


「リク君もおつかれさまー。

今日忙しくて大変だったでしょ?」


「おつかれさまです。

初めてだったんで戸惑ってて……、

疲れました」


俺は店に居るときから既に気づいていたが、

この二人は、かなりスタイルが良い。

返事をしながら、俺はそう考えていた。

巨乳だ。


「まだ高校生だっけ?

遅くまで出歩いて補導されちゃうよ?」


「ことはさんが一緒だから捕まんないでしょ」


「えー羨ましい♥️

こんな綺麗な親戚のお姉さんが居てくれるとか、

神懸(かみがか)ってるー♥️」


「一緒に暮らしてるんでしょ?

その辺、高校生男子的にどーなの?

お風呂とか、着替えとか!

刺激強すぎないの?」


「えーと……、理央さん?」 


「ブー。茉央だよん」


かわえッッ(可愛い)、楽しッッ。


「あ……、すみません。お二人とも本当に似てますよね」


「左の胸の下にホクロがあるのが、理央ちゃんだよ」


「きゃー♥️ことはさんえっちー♥️」


「何で知ってんだよ……」


「あ、でもー。リク君も、

一人で出歩く時は、本当気をつけた方が良いよー?」


「そうそう。この辺でも、最近よく聞くよね?

高校生シッソー(失踪)ー。とか?怖いよねー」


俺は(うっす)らと、

流れていたニュースの話題を憶えていた。


「何かテレビで見ましたね」


フリ(前触れ)とかも無くて、

急に居なくなっちゃうらしいよ?」


「家出とかと違うんじゃないかー、

って噂もあるよね?」


俺はどうだったのだろう?


俺の両親は、残念ながら俺に本当に興味が無いので、

おそらく、特に何の騒ぎにもなっていないのだろう。

それに、

異世界と、こっちの世界では、

時間の経過の様子が、どう考えてもおかしい。

俺が異世界で過ごした時間は、

ほとんどノーカウントに近いのだ。


俺は、ことはをチラリと見た。


彼女(ことは)は、

七年も異世界で過ごしたと言っている。

だけど、こっちの世界で実際には、

そんなに時間は経っていない。


それに、彼女は戻って来て、七年も過ごしているのだ。

タイムスリップしてないと、説明がつかない。


そんな俺の考えを、

見透かす様な表情で彼女は俺を見つめてきた。


オーケー。

SF的な考察なんて、必要では無いのだ。

俺はそこで初めて実感が出来た。


君達(理央茉央)も、

例外では無いかも知れないよ?」 


「きゃー♥️こわいー♥️」 


「ことはさんが守ってくれますか?♥️」


「勿論さ」


「きゃー♥️♥️」


「でも、悪い狼って云うものは、

この世界の何処にでも潜んでいるものだからね、

僕が駆けつける前に、

君達が食べられてしまわないと良いのだけれど」


「えー♥️こわいー♥️」


理央と茉央は、そう言いながら彼女に抱きついている。

俺は何を見せられているんだ。

しかし、二人ともけしからん身体をしているので、

彼女の身体に押し付けられて、

柔らかな物体(おっぱい)の形が変形している事を、

勿論俺は見逃していなかった。


「あれ?何か、ことはさん煙草の匂いがする?」


「悪いね。

先刻、仕事終わりに一本だけ吸ってしまったんだ。

お店では吸わない様にしているから、

知らなかったかな?」


「ことはさんカッコいいー♥️」


もう、何言ってもオッケーじゃねぇか。

羨ましい。


◆◆


その時、

彼女のスマホが鳴った。

スマホが鳴るのは大体が唐突だ。


「悠ちゃんからだ。すぐに切れたけど」


彼女は掛け直したが、悠ちゃんは出ない。


「出ないな。何か用事があったのかな?」


「悠さんってー……、ことはさんと何かありました?」


少し意味深に、理央がそうやって聞いた。


「いいや?どうしてだい?」


「えー……、少し噂しててー……、悠さん、

ことはさんのシフトを、

自分が居る時間帯に合わすじゃないですかー?

だからー、何かあるんじゃないかって」


「それに、ことはさん、悠さんに誘われて、

うち(りしえる)に来たんですよねー?

もしかして……、よからぬ関係だったりして♥️」


「きゃー♥️」


「あはは。そんな事は無いよ。

とても可愛い人だとは思っているけど、良い上司だ」


「えー……、でも悠さんて、ちょっとケバくないですか?」


「そうそう、すぐ怒るし」


「本人の居ない所で、

そういう事を言うのは感心出来ないな。

君達、少し酔っ払ってしまったかな?」


「もー酔っ払っちゃったー♥️」


「今日ことはさん()に泊まるー♥️」


(うち)は狭いよ?この子(リク)も居るし」 


「やだやだー♥️お泊まりしたいー♥️」


「ねー♥️リク君は良いよねー?」


「リク君が良いって言ったら、

お泊まりしていいですか?♥️」


「君達は少し刺激が強いからね。

貞操を守れる自信があるなら、僕は止めないよ」


「やだぁ♥️ことはさん守ってくださいー♥️」


「ことはさんになら捧げるー♥️」


「襲いませんけど!?」


「ところで。

君達は先刻から随分と美味しそうなモノを飲んでるね。

良かったら、僕にも飲ませてもらっても良いかな?」


「えー♥️間接ちゅーになっちゃうじゃないですか♥️」


「ことはさん、理央の飲んで♥️」


「ありがとう」


彼女が理央から缶を受け取り、

ストローに唇をつけて、一口飲む姿を、

何かの奇跡にでも出会した様な雰囲気で、

俺達はうっとりと眺めていた。


「美味しい。余り見ない銘柄だけど、

此処のコンビニで買ったのかな?」


「えーそうですか(銘柄)

珍しいやつなのかな?

悠さんが、

間違えて買っちゃったからって()れたんですよ♪」


「そうなんだ。僕には何故くれなかったんだろう。

仲間外れにされてしまったな。

これは悠ちゃんにお仕置きしないとだね。ニヤリ」


「きゃー♥️きゃー♥️」


◆◆◆


理央と茉央は腕を組んで、(もつ)れながら、

千鳥足で俺達の前を歩いている。


時折、大きな声で笑ったりして、

相当に酔っているらしかった。


「おい……! 本当にこの人達(理央茉央)泊めるのか!?」


(リク)が我慢したら良いだけの話だろう」


「ていうか布団も無いじゃん!!?

何処でどうやってどういう風に寝るんだよ!?」 


「少し狭いけど、僕と、あの娘達がベッドで、

君が床。

代わってあげようか?」


ちょま(ちょっと待て)ッ!?」


「たった一晩さ」


「待て待て待て!?」


「冗談に決まってるだろう。

本当に変な事を考えていたんだね」


「お前が、変な事(お仕置き)とか言わなけりゃな!?」


「あの娘達、ああいう事を言えば悦ぶんだ」


「いかがわしいわ!!」


「それにね」


───ペッッッ!!


そこで、彼女はいきなり道端に向かって唾を吐いた。


(きたな)ッッ!!? 何!!?」


「あの娘達が飲んでた酒さ。

飲み込んではいないんだけど、口の中が気持ち悪くて」


「飲みたくなかったのに貰ったの!?」


「ごく僅かだけど、魔力が込められてた」


「嘘!!? マジ!?」


「マジ。

それに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「薬入ってんのかよ!!? 

理央さんと茉央さん、

そんなもの飲んでて大丈夫なのかよ!!?」


「あんなに酔っ払ってて平気そうなんだ。

身体に害は無いと思うけど」


「誰がそんな事を?」


「いずれ解るだろうね。

それに、見ただろう?

()()()()()()()()()()()()()だったんだぜ?

こういう時の僕の予感は、よく当たるんだ」


「ど……、どういう意味だよ!?」


「ナツメくん。

知ろうと思う事は良い事だけれど、

何でもかんでも他人に聞いてちゃダメだ。

大まかな定義で云えば、

君も立派な魔法使い(異能力者)だ。

考えるんだよ。

思考するって事が、

僕はこう云う場面で最も大切な事だと思うよ」


彼女は楽しそうに言った。


一体何が起ころうとしてるのか、俺には分からないが、

彼女が言っている事を、少しでも理解しようと、

俺は頭を全速力で回転している。


◆◆◆◆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ