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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第四章 『二月二日と少年』
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異世界篇 9 『もどき、くそたわけ。』

本日 最終話です!


明日も、夜に投稿しますー



ジンガは、自分の能力(水に変化する魔法)に絶対的な自信を持っていた。


予想していたよりも、遥かに速度も手数も上回っていた、

ミンシュの猛攻も、自分には通用しない。


先刻から何度も攻撃を加えられているが、

ジンガは無傷だった。


ヤエファと、ミンシュは高い魔力を持っている。

その事が裏目に出ているのだ。


ジンガの能力は、

魔力に反応して身体を液体にさせる事が出来た。

ヤエファとミンシュの攻撃には、

必ず魔力が込められていたので、

攻撃が当たる瞬間に水に変化する事が出来たのだ。


(液体)になってしまえば、

ダメージを受ける事は無い。


天恵者(チート)の中には、

自然物に変化する能力を持つ輩が多いが、

ジンガのそれは、チートとは仕組みが違うのだ。

しかし、

ジンガは自分の優勢を確信し、

水の攻撃魔法でジリジリと二人を追い詰めた。


「僕の能力は厄介だよねぇ。

警戒して、隙を()こうとしているから、

先刻までの勢いも無くなったよねぇ」


地下牢の広さはそこまで無い。

ミンシュとヤエファの機動力は高かったが、

彼女達が間合いを取ろうとして離れれば、

壁に追い詰めて、得意の中距離攻撃魔法で狙い撃ちにし、

接近して来れば水に変化する。


実にいやらしい攻守を、

ジンガは自分の能力に忠実に徹底した。


───それに。


もう一人のグラスランナー(ロロ)は戦闘要員では無い。


ロロを守る為に、

二人の動きに微かに乱れが起きている事を、

ジンガは見逃していなかった。


──このまま、削って行って確実に仕留める。


ヤエファの方を見て、ジンガはそう思った。


(あっちの人外は、侮っては駄目だねぇ)


その時、ジンガの水魔法が、一瞬だけ勢いを衰えさせた。


「隙ありー♪」


ミンシュが魔法を掻い潜る様にして、接近を試みた。


───『水人形(ドールオンハイドロ)


従者の一人が身体を水に替え、

ポンプの様な役割を果たす様にして、

ジンガに補給を施した。


「残念だったねぇ。抜かりは無いよねぇ」


───『底より這い出る水撃コンプレッサグラウンド


ミンシュの足元から爆発した様な勢いで水飛沫が上がり、

彼女の身体を宙に打ち上げた。


「ミンシュちゃん!?」


「魔力切れを狙ったんだろうけどねぇ。

水人形(こいつら)は魔力の込めた水を貯めた、

僕の生きる貯水庫だからねぇ。

(ミンシュ)の方が隙だらけだねぇ」


ミンシュは天井に叩きつけられる寸前に、

空中で体勢を変え、脚を天井に向けると、

スキルを発動した。


───『跳ネル翔ル(リコチェット)!!』


跳弾の様に、天井を蹴り上げたミンシュが、

そのままジンガに再度スキル攻撃を放った。


───『蹂躙スル兎ダゾ(アサルトトゥツイ)!!』


跳躍して勢いをつけた反動で、

そのまま踵落としを叩き込んだ。


しかし、やはりジンガの身体は魔力に反応し、

その身体を液体化させて、ミンシュの攻撃を躱した。


離散したジンガの身体は、再び間合いを取って、

復元を始めた。


「なかなか当たらんの」


「キーーッ!! キモいキモいキモいキモい!!」


水人形の従者は、ヤエファとロロを捕らえようと、

二人を追いかけ回していた。


ヤエファはロロを小脇に抱え、

水人形に指一本触れさせずに逃げ仰せていた。


半分程、復元したジンガは、

水人形の片方を呼び寄せると、

再び補給を始めた。


「あ! また水足してるッス!!」


「ふむ。無限にゃ無さそうじゃが、

それでも貯めてある水が多いの。

補給の間隔が(みじこ)うなったけ、

本体の方は、疲れてきとるの」


「だからと云ってねぇ。

このまま僕にダメージを与えられなかったら、

貴女達の方が先に死ぬよねぇ」


ジンガは、水人形一体の水分を殆ど吸収し、

身体から滴るほどの水に、

余す事無く魔力を張り巡らせた。


───『暗渠瀑布(フォールアウトマディ)!!』


魔力の通った水が、真っ黒に見える程に濁り、

ジンガの身体から放たれると、散弾となって、

隙間無い弾幕を張り、三人を襲った。


「汚!! マジNGですー!!」


「わっち達の勝ちじゃの。

あのアホ、焦りよるけ。

あんた(ミンシュ)なら躱せるじゃろ。

()()()()()()()()()()()()()()


なる(成る程)ー♪」


蜂の巣になりそうな程の、水の弾幕を、

ミンシュは全て躱した。


その眼には狂喜的に、輝かしい光が宿っていた。


「嘘だよねぇ!?」


自分の最大の攻撃魔法を、

容易く躱されたジンガに向けて、

ミンシュは固く拳を握り締めると、

犬歯を覗かせて笑った。


「いっくよー♪」


───ガッッチィィィィッ!!!!!


ガコゼの身体は水に変化する事が出来ずに、

ミンシュの、魔力の込められて無い、

通常の打撃で、真面(まとも)に喉を殴りつけられた。


「……ゲェッッ!? ゲッ……!? ボべェッッ!?」


「これで詠唱出来ないですー♪」


(喉!? 喉潰された!! クソ!! クソ!!)


「ヤエちゃーん♪ いつでもオッケーでーす♪」


「怖ッッ!! 躊躇無く、喉殴ったッス!?」


「『歩く地雷(ミンシュ)』の通り名は、

伊達じゃなかろ」


喉を潰され、詠唱が出来なくなったジンガは、

すぐさまに逃亡を図り、

地下牢から、地上へ上がる階段へ駆け出した。


「逃がす訳なかろ」


ヤエファは人差し指の先の、皮を噛み破ると、

指先から流れ出た血で、

空中に向かって複雑な図形を描いた。


真っ赤な鮮血が発光し、

ヤエファは詠唱した。


───『尾裂の獣焔(フゥアンイェン)


空気が、チリチリと灼ける様な感覚がして、

尾の裂けた、火焔に包まれた獣が、その場に姿を顕した。


「ちゃちな弱点じゃったの。このクソたわけが」


ヤエファは冷酷な笑顔を浮かべて、

ジンガに向かってそう言った。


◆◆

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