異世界篇 8 『地下牢にて。』
本日最後の投稿です!
明日も夜に2話投稿しますー
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「ガコゼ。調子はどうかの?」
王宮の地下牢で、
魔力を封じる拘束具と、
猿轡を嵌められたガコゼに向かって、
ヤエファがそう言って声を掛けた。
「……」
「めっちゃ睨んでるッスね……」
「聖域教会の使者が、
お前を取り返しに来たようじゃけ。
まだお前にゃ利用価値が有ると云う事かの」
「……」
ガコゼは憎しみを込めた眼でヤエファを睨み続けた。
「ヤエちゃんー。
ここ、何かジメジメしててヤダー」
「そりゃ地下じゃけ。
じらばっか言うたらいけん」
「地下に降りるまでに、
兵隊さんが何人も居たッスよね?
意外と此処まで来なかったりして」
「それならそれで構わんがの。
そうも言うとられんようじゃ」
地下室の石壁の隙間から、
奇妙な勢いで濁った水が溢れ出てきた。
勢いをどんどんと増していく、
床を全て水浸しにしてしまいそうな、
その水は、明らかに魔力を帯びていた。
「来よったの」
濁水は渦を巻いて三人分の人の形を取り、
その姿をジンガと二人の従者に変えた。
「わ!? ひ……人になったッス!?」
「あれあれぇ?誰だろう貴女達は?」
ジンガは首を傾げながら言った。
「亜人が二人に……、
そこの小さな娘はグラスランナーかなぁ?
こんな所で何をしてるのかなぁ。
まさかまさか。
貴女達は、
こちらの邪魔をしようと言うんじゃないよねぇ?」
「そのまさかじゃの」
「待ってよ待ってよ。
無駄だなぁ。無益だなぁ。
無理しないで欲しいなぁ」
「うっとうしい喋り方じゃ。
聞いた話と違うが、
イファル王の前では猫被っとったんじゃの」
「一応、使者だからねぇ。
あのいけ好かないエルフなんかに、
頭を下げなくちゃならないなんてねぇ。
僕は不幸だなぁ」
「交渉事には向かんタイプのアホじゃの。
それに、何と胸糞の悪い男じゃ。
気味の悪い喋り方から、醜い悪意が滲み出とるけ」
「僕はねぇ。
例外無く、人外って連中が死ぬほど嫌いでねぇ。
どのくらい嫌いかって云うと、
世界中から一匹残らず、
駆逐出来たら良いなぁって思って、
聖域教会に入ったくらいなんだよねぇ」
「きっしょ。
なんですコイツマジキモいです死ね死ねー♪」
「典型的な差別思想者じゃの。
胸糞悪すぎて逆に爽快じゃ。
ほじゃけど、ミンシュどうかの?
こんな相手なら心置きなくやれると思わんかの?」
「えー愚問ですー。
何にも残らないくらいに粉々にブチのめすー♪」
「やだなぁやだなぁ。
これだから、人外は下品で嫌だなぁ。
でも、予定には無かったけど、
下品な人外なら殺しても構わないかなぁ。
それなら、
僕は人外を三匹も殺せて嬉しいなぁ」
◆◆
すぐに想像は付くが、
やはり、ジンガは水を操る魔法使いだった。
凄まじい速度で襲い掛かったミンシュの打撃を、
ジンガは肉体を水に変化させて避けた。
弾け跳んだ水滴は、引き寄せられる様にして再び集まり、
ジンガは無傷で、その身体を再生させし始めた。
ミンシュはジンガの再生地点を予測し、
肉体の再生が完了する前に、
追撃を加えようとした。
従者の一人が、身体を水に変化させて、
それを阻んだ。
ミンシュは死角から従者に蹴りを叩き込まれ、
咄嗟に防御はしたものの、
小さな身体はアッサリと吹き飛ばされてしまった。
「ミ……、ミンシュちゃん!? 大丈夫ッスか!?」
吹き飛ばされたミンシュは、受け身を取るのと同時に、
床を蹴り、その反動で従者の頭を拳で殴り飛ばした。
が、
殴られた従者の頭は水の様に弾けて、
ジンガと同じ様に再生を始めた。
「やだー。マジキモいんですけどー?
何がキモいって、キモい人間が別々に同じ能力なのが、
キモいんですけどー?」
もう一人の従者が、ヤエファを狙って、
指先から、魔力を込めた水の弾丸を放った。
ヤエファは水の弾丸を片手で払い、
次の瞬間には従者の指を掴んでいた。
───『帯熔』
従者の指を掴んだ、ヤエファの手のひらが、
熔鉱炉の様な熱と光を放った。
従者の指は途端に蒸気を上げ、
あっという間に溶けて失くなってしまったが、
従者は悲鳴を上げる様子も無く、
ヤエファの手を振り解くと、
すぐさま離れて間合いを取った。
「しょうもない」
ヤエファは吐き棄てる様に、そう言った。
「か……、身体を水に変えれるんスか!?
ロウウェンさんみたいじゃないッスか!?
まさかこの人達全員、天恵者なんスか!?」
肉体の再生したジンガが、
ニヤニヤと笑みを浮かべながら言った。
「安心したよねぇ。
貴女達、水に攻撃は通じないよねぇ
やっぱり僕の能力には勝てないよねぇ」
頭を殴られた従者も、
もう一人の指を熔かされた従者も、
攻撃された部分の再生を終えて、
再び攻撃を仕掛けようとしている。
「浅はかじゃの。
そげ手品で満足かの。
己の強さを見誤るタイプじゃ」
「貴女、先刻からクソ生意気だよねぇ。
人外は人外らしく、
人間様に逆らわないで欲しいよねぇ」
「やれんの。
アホの相手をするのは嫌いじゃないけどの。
やれるもんなら、やってみ」
「……殺すのが楽しみだよねぇ」
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