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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第四章 『二月二日と少年』
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異世界篇 8 『地下牢にて。』

本日最後の投稿です!


明日も夜に2話投稿しますー

 


「ガコゼ。調子はどうかの?」


王宮の地下牢で、

魔力を封じる拘束具と、

猿轡(さるぐつわ)を嵌められたガコゼに向かって、

ヤエファがそう言って声を掛けた。


「……」


「めっちゃ睨んでるッスね……」


「聖域教会の使者が、

お前(ガコゼ)を取り返しに来たようじゃけ。

まだお前にゃ利用価値が有ると云う事かの」


「……」


ガコゼは憎しみを込めた眼でヤエファを睨み続けた。


「ヤエちゃんー。

ここ(地下牢)、何かジメジメしててヤダー」


「そりゃ地下じゃけ。

じら(ワガママ)ばっか言うたらいけん」


「地下に降りるまでに、

兵隊さんが何人も居たッスよね?

意外と此処まで来なかったりして」


「それならそれで構わんがの。

そうも言うとられんようじゃ」


地下室の石壁の隙間から、

奇妙な勢いで濁った水が溢れ出てきた。


勢いをどんどんと増していく、

床を全て水浸しにしてしまいそうな、

その水は、明らかに魔力を帯びていた。


「来よったの」


濁水は渦を巻いて三人分の人の形を取り、

その姿をジンガと二人の従者に変えた。


「わ!? ひ……人になったッス!?」


「あれあれぇ?誰だろう貴女達は?」


ジンガは首を傾げながら言った。


「亜人が二人に……、

そこの小さな娘はグラスランナーかなぁ?

こんな所で何をしてるのかなぁ。

まさかまさか。

貴女達は、

こちらの邪魔をしようと言うんじゃないよねぇ?」


「そのまさかじゃの」 


「待ってよ待ってよ。

無駄だなぁ。無益だなぁ。

無理しないで欲しいなぁ」


「うっとうしい喋り方じゃ。

聞いた話と違うが、

イファル王の前では猫被っとったんじゃの」


「一応、使者だからねぇ。

あのいけ好かないエルフなんかに、

頭を下げなくちゃならないなんてねぇ。

僕は不幸だなぁ」


「交渉事には向かんタイプのアホじゃの。

それに、何と胸糞の悪い男じゃ。

気味の悪い喋り方から、醜い悪意が滲み出とるけ」


「僕はねぇ。

例外無く、人外って連中が死ぬほど嫌いでねぇ。

どのくらい嫌いかって云うと、

世界中から一匹残らず、

駆逐出来たら良いなぁって思って、

聖域教会に入ったくらいなんだよねぇ」


「きっしょ。

なんですコイツマジキモいです死ね死ねー♪」


「典型的な差別思想者じゃの。

胸糞悪すぎて逆に爽快じゃ。

ほじゃけど(だけど)、ミンシュどうかの?

こんな相手なら心置きなくやれると思わんかの?」


「えー愚問ですー。

何にも残らないくらいに粉々にブチのめすー♪」


「やだなぁやだなぁ。

これだから、人外は下品で嫌だなぁ。

でも、予定には無かったけど、

下品な人外なら殺しても構わないかなぁ。

それなら、

僕は人外を三匹も殺せて嬉しいなぁ」


◆◆


すぐに想像は付くが、

やはり、ジンガは水を操る魔法使いだった。


凄まじい速度で襲い掛かったミンシュの打撃を、

ジンガは肉体を水に変化させて避けた。


弾け跳んだ水滴は、引き寄せられる様にして再び集まり、

ジンガは無傷で、その身体を再生させし始めた。


ミンシュはジンガの再生地点を予測し、

肉体の再生が完了する前に、

追撃を加えようとした。


従者の一人が、身体を水に変化させて、

それを阻んだ。

ミンシュは死角から従者に蹴りを叩き込まれ、

咄嗟に防御はしたものの、

小さな身体はアッサリと吹き飛ばされてしまった。


「ミ……、ミンシュちゃん!? 大丈夫ッスか!?」


吹き飛ばされたミンシュは、受け身を取るのと同時に、

床を蹴り、その反動で従者の頭を拳で殴り飛ばした。

が、

殴られた従者の頭は水の様に弾けて、

ジンガと同じ様に再生を始めた。


「やだー。マジキモいんですけどー?

何がキモいって、キモい人間が別々に同じ能力なのが、

キモいんですけどー?」


もう一人の従者が、ヤエファを狙って、

指先から、魔力を込めた水の弾丸を放った。


ヤエファは水の弾丸を片手で払い、

次の瞬間には従者の指を掴んでいた。


───『帯熔(ユエドゥイ)


従者の指を掴んだ、ヤエファの手のひらが、

熔鉱炉の様な熱と光を放った。


従者の指は途端に蒸気を上げ、

あっという間に溶けて失くなってしまったが、

従者は悲鳴を上げる様子も無く、

ヤエファの手を振り解くと、

すぐさま離れて間合いを取った。


「しょうもない」 


ヤエファは吐き棄てる様に、そう言った。


「か……、身体を水に変えれるんスか!?

ロウウェンさんみたいじゃないッスか!?

まさかこの人達全員、天恵者(チート)なんスか!?」


肉体の再生したジンガが、

ニヤニヤと笑みを浮かべながら言った。


「安心したよねぇ。

貴女達、水に攻撃は通じないよねぇ

やっぱり僕の能力には勝てないよねぇ」


頭を殴られた従者も、

もう一人の指を熔かされた従者も、

攻撃された部分の再生を終えて、

再び攻撃を仕掛けようとしている。


「浅はかじゃの。

そげ(そんな)手品で満足かの。

己の強さを見誤るタイプじゃ」


「貴女、先刻からクソ生意気だよねぇ。

人外は人外らしく、

人間様に逆らわないで欲しいよねぇ」


「やれんの。

アホの相手をするのは嫌いじゃないけどの。

やれるもんなら、やってみ」


「……殺すのが楽しみだよねぇ」


◆◆◆

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