異世界篇 7 『使者とは名ばかり。』
本日投稿の最終話です!
明日は夜に投稿しますので、
よろしくお願いします!
◆
聖域教会からの使者がイファルを訪れたのは、
ガコゼが捕えられた翌日の午後だった。
ラオの待つ、
謁見の間に通されたのは三人の男だった。
黒い法衣を羽織っている、
中年の男二人を引き連れて、
若い男が、まず口を開いた。
「どーもどーも。
この度はお招きに預かりまして。
お初にお目にかかります、
私、聖域教会より参りました、
ジンガ、と申しますので、以後お見知りおきを」
ジンガと名乗った男は、
若そうな見た目とは相反して、
熟年者の様な軽妙な口調だった。
「この度は、我らが教会に所属しておりました者が、
貴国にて大変な御迷惑をお掛けしまして、
先ずは、謝罪をさせていただきます」
「おりました。
もう、あの男は君達とは関係が無いと云う事かな?」
「ええ。ガコゼ殿の除籍は決定事項ですから。
かといって、我々に責任を問うな、
と云う事ではありません」
「当たり前じゃん。
そんな事わざわざ言う必要があるのかな?」
「それは失礼しました。
では、結論から言いますけど。
教会はガコゼの行動には、一切関与しておらず、
誤解を招いてしまった事を謝罪し、
イファルとの和解を望んでいます。
そして、ガコゼの処刑に関する全ての事を、
教会が負担し、それを執り行います」
「だから、ガコゼを解放して寄越せと?」
「まあ……、そうですね。
勘違いしないで下さいね?
教会なりの貴国への配慮ですよ?
ガコゼをネイジンに連れて帰る、
それから処刑。
それでおしまいです」
「配慮? 何かの間違いでしょ。
わざわざ、
ガコゼを自国に連れ帰る意味がわからん」
「自国の罪人の処刑を、
他国に任せるバカは居ないと思いますが?」
「いやいや。
ガコゼに利用価値が、まだ有るからってのが、
見え見えでしょ?
ガコゼは引き渡さないよ?イファルで裁く」
「困りましたね。それでは我々にどうしろと?」
「クソして寝ろ、って事かな。
わざわざ来てもらってご苦労だったね」
◆◆
「って感じでさ、お帰り願ったワケだよ」
ラオはそう言った。
「なんつーーやり取りだよ?
そのジンガって奴、本当に使者なんかよ?」
「聖域教会には、マトモな奴なんてのが少ないからね」
「そんなんで、よくすんなり帰ったな?」
「あのジンガって男は、
強行突破でガコゼを取り返しに来るだろうね」
「そんで?」
「牢破りだぜ? 合わせ技で完全にアウトだよ」
「捕まえてから、ガコゼと一緒に処刑?」
「いや。すぐには処刑しないね。
ガコゼに見切りはつけてるものの、
聖域教会は、
まだガコゼを利用したいみたいだしね」
「こっちもガコゼを利用しようって事?」
「そうだね。
人間性は、とんでもないクズだけど、
ガコゼの能力は実際使える。
聖域教会との戦力差を埋めれる」
「言う事聞くかなーー」
「大丈夫大丈夫。洗脳魔法と云うものがある」
「それでも、そのジンガとか云う使者、
かなり手練れじゃろ?
従者を連れとるにしろ、
たった三人で敵地に来るとはの。
おそらく、イファル王の言う通り、
真正面から牢破りに来るぞ」
「舐めてるよね」
「勝てん事は無かろうが、
街中で派手に暴れられても困らんかの?」
「案ずるなよヤエファー。一発で決める」
「待て待て待て。王様自ら行くんじゃねーーだろな?」
「そりゃ、流石に宜しう無いの。
かと云って、下手に人員を割くのも得策じゃないけ」
「じゃあ、どうする?」
「わっちが行こう」
「義妹達は?」
「ミンシュを連れてこう。
あの娘、昨日はサボっとったけの。罰じゃ」
「余裕だね。それに美人だ。
出来たら、僕もヤエファに罰せられたいんだけど」
「王よ。わっちは女の方が好きじゃ」
◆◆◆
「えーーーー。
何でミンシュだけ行かなくちゃなんですかーー?」
「ほいじゃけ言うとるじゃろ。
サボった分の罰じゃ」
「やだやだやだーーー! ヤエちゃんーー!
許して欲しいですーー!
ミンシュ、まだロロピーと一緒に居たいですーー!」
「じらを言うとるの。
チャチャッと終わらせりゃ済む話じゃけ」
「いーーやーーだーー!!
じゃーロロメロも連れてっていい!?
それだったら行きますーー!!」
「やれんの」
「あの、ヤエファさん。
ご迷惑じゃなかったら、自分ついてくッスよ?」
「きゃわわわわわわわ!!
ロロペンギン、ミンシュの事、
心配してくれてるんですーー♪」
「そうは言うてもの。
ロロちゃん、呪歌を歌いっぱなしじゃったじゃろ。
まだ喉が回復しとらんじゃろ?」
「そうなんスけど。
相手は三人なんスよね?頭数はそれで揃うッス。
スイちゃんや、ユンタちゃん達が行くよりも、
自分が行った方が戦力の分散にならないと思うッス!
……自分、戦闘は出来ないんで」
「やれんの。
惚れてしまうかも知れんの。
おぼこい顔して、胸がデカいのも高得点じゃ」
「ダメーー!
ヤエちゃん、本当につまみ食いしちゃうからーー!!」
「あの……、自分そういう趣味無いんで大丈夫ッスけど」
「きゃわわわわわわわわわ!!!」
「ロロちゃんの好意に甘えて、同行を願おうかの。
ミンシュ、怪我せんように守ってやらんとの?」
「合点承知ーー♪」
「それじゃあ行くかの。
人外の者を舐めとる、
聖域教会の連中に思い知らせる良え機会じゃ」
◆◆◆




