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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第一章 『異世界と女神と少女』
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第十一話『白銀の通り名。』


日がすっかり暮れて夜になった頃に、城の中庭ではリクの歓迎のパーティーが開かれた。


宮廷の楽団が賑やかな組曲を奏でる中、豪華な食事が次々と振る舞われ、城中の家臣の者たちや、招かれた貴族がスイとリクに代わる代わる挨拶をしにきた。


スイとリクは横並びにテーブルに座って食事をしていた。誰かが挨拶しに来る度にリクは手をとめて、たどたどしく返事を返していたが、スイは一向に気にせずに山のようにあった料理を次々と平らげていき、目の前のご馳走を口いっぱいに頬張って本当に満足そうにしていた。


「お前……本当によく食うな。もっと落ち着いて食えよ」


「パクッ。さっきも……モグモグ……言ったけどさ。モグモグ。魔法ってさ、とってもエネルギーを使うんだよ?パクッ、モグモグモグモグモグモグ。あ、あれも美味しそう。リクも食べるかい?パクッ、しかも、モグモグ。さっき使ったのは上位精霊の力を借りたからね。消耗も激しいのさ。それにこんなにも美味しい料理、パクッ、冷めないうちにモグモグ、食べた方がいいし、モグモグ、残したら失礼だろう?」


「上位精霊って。そんなに強烈そうなやつを喰らわしたのかよ?わかったわかった。食べてる最中に話しかけて悪かったよ」


「いいよ。あ、あれはとても美味しい煮込み料理だ。とってあげようか?」


「ありがとう。とってくれ」


トマトを煮込んだような赤いスープの料理を大皿一杯に注いで、「はい」とスイが渡してきた。ニンニクとケチャップのような薫りがしてとても美味そうだった。


「お食事中に失礼いたします」


ルカが現れた。


「スイ様、お食事の方足りていますでしょうか?お代わりをお持ちしましょうか?」


「あ、ルカさん。いただきます」


「嘘だろまだ食うのかよ!?」


「クスクス、スイ様は本当によくお召し上がりになられます。国を守っていただいている、とても美しくてお強いお方ですが、それと同じくらいにとても可愛らしい方です」


「ほらね」


「なにがほらね、だよ」


「リク様はお代わりの方はよろしいですか?果実のお酒もございますが召し上がられますか?」


「いえ、俺はもう腹一杯ですから。それとお酒?も、まだ未成年なんだよなぁ…」


「なんだい?パクッ、君はお酒は飲まないのかい?モグモグ」


「飲んだことねぇよ」

 

「モグモグ、そうなんだ。パクッ、この国のお酒はとても甘くて美味しいんだよ。モグモグ。君が思っているアルコールより飲みやすいと思うし、モグモグ。ウクルクじゃ祝いの席だと子どもでも少しお酒を飲んでもいいんだ。一口いただいてみたら?パクッ、パクッ、パクッ、パクッ」


「食い過ぎだろ!そうか?じゃあ一口だけもらおうかな」


「あら、リク様はまだ成人なされてなかったのですね。お若い方だとは思いましたが、それは大変失礼しました。かしこまりました。それではスイ様のお代わりと甘くて飲みやすいお酒とグラスを持ってまいりますね」


ルカが微笑んでその場をあとにした。


「ルカさんて美人で優しいよな」


「ああ。本当に綺麗でとても優しい人だよ。わたしが小さな頃から知っていて宮廷術師になってからもずっと色々と身の回りのお世話をしてくれているんだ。私は大好きだよ」


“それと………スタイル良くて、めっちゃ巨乳!!”


丈の長いしっかりとした生地の服の下で、隠しきれていないルカの大きな胸のことをリクはしっかりと見逃していなかった。


“さっきから挨拶しに来てくれる女の子たちも揃いも揃ってみんな可愛くて巨乳だったし、異世界マジ最高かよ……。あぁーーそれにしてもルカさん優しくて甘えさせてくれるけしからん身体の素敵なお姉さんって感じでいいなぁーーー!!”


相変わらず料理を楽しそうに食べ続けるスイをチラリと見て、リクはさらに胸元も確認した。ルカやその他の女達に比べて、スイのそれはどう見ても本当に小さな膨らみだった。


“コイツ、顔は本当にすごい美人だけど胸がなぁ~……。性格も……思ったことずけずけ言うし、結構強引だし。怒らせたら怖いし。あ、でも思ってること隠さず言うから助かるかな、俺、女心なんかわからんし。裏表無いって感じだよな”


「どうかしたの?」


スイが口をモグモグさせながら、リクを見て言った。


「い、いや。なんでもない」


「フ。付き合いは短いが君の考えていることもなんとなくわかってきたよ」


「な、なんだよ」


「コレ、食べたかったんだろう?食べかけだけど、食べるかい?とても美味しいよ」


半分以上食べた骨のついた肉をリクに差し出して、スイはニッコリと笑った。


「ほとんど残ってねーわ!ほぼ骨じゃねーか!いらねーよ!!」


「おおい!リク!!どうじゃ?楽しんでおるか?」


顔を赤くした爺さんが大きな声で話しかけてきたと思ったら、国王のリンガレイだった。酒の瓶を片手に抱えてヘラヘラと近づいてくる様子は完全に酔っ払いにしか見えなかった。


「たくさん食えよ?我が城のパーティーにはなんせスイがおるからの。量だけはとにかくたくさん取り揃えるように言いつけてあるからの」


「国王様酔っ払っているね。こうなると面倒くさいんだ」


「スイは小さい頃から本当によく食うからのう。儂はスイが小さい頃から可愛くて仕方なくてな、スイが腹を空かせてしまわんように厨房の設備やらメニューやら人選は儂自ら監修しておったものだ」


「王様自ら監修の厨房て。そんで王様随分フランクに絡んでくるな」


「ウクルクの人たちはお酒の席が好きだからね。たくさん飲んで食べるのがマナーだよ。あと、コンヤハブレイコウだっけ?とにかく楽しむのが良いんだよ」


「スイ様、リク様。お待たせいたしました」


ルカがスイのお代わりにまた山盛りの料理と、果実の絵が描かれたラベルの貼ってある酒の瓶を持ってきた。


「やった。こんなにいただいても良いんですか?」


「今宵もスイ様にたくさん食べていただけて皆喜んでおりますから」


「ありがとうございます。厨房の皆にも、こんなに美味しい料理をたくさんありがとうとお伝えください」


「クスクス。スイ様は本当に可愛いお方です。かしこまりました。リク様。お注ぎいたしますのでどうぞ召し上がってください」


「あ、ありがとうございます。わ。なんだ本当にすごい甘くて良い香りだ」


真っ赤な顔をしたリンガレイが嬉しそうに言った。

「そうじゃろう?ウクルクは中央諸国でも特に水が綺麗じゃからな。果物も甘く育つんじゃ。蒸留酒もうまいぞ」


「(ぐび…)うま!本当に甘い。ジュースみたいだな」


「飲め飲め。今宵は儂の新しい友の歓迎パーティーじゃ。ウクルクに新たな風を吹かせてくれる信じておるぞ。皆の者!新たな同胞と歩む未来に乾杯じゃーーー!!杯を持てーーー!!」


「どうしたどうした。王様だいぶ酔っ払ってんな?」


「大体いつもこんなものだよ。それよりも国王様もリクのこと気に入ってるみたいで良かったね」


「気に入られてるのかね?」


「それからの、また報告が遅れたがイファルの『白銀(しろがね)』が今宵の宴に参加したいと連絡があってな、ヒック。もうじき来るはずじゃ」


それを聞いてグラスの飲み物を飲みかけていたスイの手が止まり、リンガレイに尋ねた。

「え、今から来るんですか?」


「ウイ。そうじゃ。今から来るぞ。向こうもリクに是非挨拶しておきたいと言ってきてな」


「そういや気になってたんだけど、『白銀(しろがね)』ってどんな人なんだ?」


スイが即答した。

「見てみればわかるさ。今から来るって言っているんだから、待っておけばいい。それとも何?そんなに気になるかい?『白銀(しろがね)』のことが」


明らかにスイが不機嫌になったことを察知したリクは少し慌てた。


「な、なんだよ?聞いちゃまずかったのか?」


「まずい?一体なにがまずいっていうんだい?君が聞きたかったから聞いてきたんだろう?」


“あれ?!コイツほんとに機嫌悪いぞ?なんなんだ一体?”


「イファルの『白銀(しろがね)』様が到着されましたーーー!!」


誰かが大声でそれを知らせ、その場にいた者たちが歓迎の拍手喝采を送っていった時、スイは一人その場に座ったまま不機嫌そうに食事を続けていた。

何か不穏な雰囲気をリクは感じずにはいられなかった。


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