イセカイ篇 6 『コトハ曰く。』
イセカイ篇 6話です!!
本日最終投稿ですー
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「七年間、僕は、ずっとスイに逢いたかった。
逢いたくて逢いたくて仕方なかった。
あっちに戻る方法もずっと探し続けた。
それで、七年も経ってしまった。
ナツメくん。
君がこっちに戻って来た事は偶然じゃない。
僕は君を必要としている。
一緒に戻ろう」
彼女は俺にそう言った。
「戻れる方法なんて有るのか?
七年も探してて、見つからなかったのに?」
「有るさ。
僕達は二人とも、あっちの世界に行って、
そしてまた戻って来たんだよ?
それ以上の説明が本当に必要かな?」
「いや……、何か根拠が……」
「ナツメくん。
君には少し想像力が足りない」
「想像って言っても……」
「僕の足やら肩を見て、
いかがわしい事を考えただろう?」
「ぬぁッッッ!? 何を!?」
「エッチな想像力と、
建設的な想像力の間に、
一体何の違いが有るんだろうね?」
「してないよ!? エッチな想像してないよ!?」
「僕には、その違いの説明が出来ない。
君はどう思う?」
「分かるわけないだろ!?」
「そうだろうね。
それなら、
魔法に、その違いの説明が必要だと思うかな?」
「魔法はファンタジーだから……?」
「そう。要らないのさ。
あくまでも、これは僕個人の見解だけどね。
魔法なんて訳の分からないもの、
自分の勝手で、自由に想像するべきなんだよ」
「それは……、魔法使いに怒られないか……」
「だからね、僕はこう思うんだ。
とにかく、
想像する事は止めてしまってはいけないんだ。
僕達は頭を働かせて働かせて……、
想像力と云う血液を循環させて、
魔法と云う心臓を動かし続ける。
ちょっと的外れな考えかも知れないけどね。
僕は自分に与えられた能力を、
そうやって使っている。
君も同じさ。
想像する事を止めてしまったら、
本当は出来るのだとしても、
あっちに戻る事はきっと出来なくなるだろうね」
「何か……、説得力はあるんだが……。
もうちょっと具体的にさ……、
七年探しても見つからなかったんだし……、
何か手掛かりとかは無いのか?」
「端的に云えばね、
僕達をこっちの世界に戻した魔法使いを、
倒してしまえば良いのさ」
「お前が敗けたって云う相手か。
そいつの居場所は?」
「それが最初の課題だ」
「まだ最初の課題の段階なのかよ……」
「む。
僕だって七年間、
時間を無駄にしていた訳じゃないんだよ?
相手は僕と、もう一度戦えば敗けると思ってるから、
とにかく逃げ回り続けてるんだ」
「ちょっと待て。ソイツもこっちに居るのか?」
「居る」
「つまり、
ソイツもお前と一緒に、こっちに来たって事か?」
「仕組みに関しては、よくわからないけど、
能力で世界間を行き来出来るのだと思う」
「マジか、それじゃ、ソイツの能力を使えば」
「僕達は戻れる。
もしくは、倒して、能力を解除する。
それと。
君がこっちに帰された事を考えると、
おそらく君はイファルの平原で、彼と接触をしている」
「え? あそこにそんなヤツ居たのかな」
「どういう姿形をしていたのかは、
僕にはわからないけどね」
「姿形?」
「その能力者の名前はね、リロクと云うんだけれど、
リロクはざっくりと言うと、
肉体を持っていない、幽霊みたいな存在で、
人に取り憑いて、意識を支配して活動するんだ。
だから、
リロクが姿を現していると云うことは、
それは、他の人間の姿を借りたものなんだよ」
「え……、じゃあ、あの時に居た誰かが……」
「リロクに意識を支配されていたんだろうね」
俺は少し背筋に冷たいものを感じた。
「まあ、問題はそこじゃないんだ。
彼が、君に直接、
接して来たと云う事は、
リロクが、
君を脅威に感じていると云う事だからね」
「脅威?俺を?」
「そうだよ。
僕をこっちに戻したのも、
君をこっちに戻したのも、
リロクにとって、僕達が、
異世界に居る事で、
都合の悪い何かが、
有るんじゃないかと僕は思うんだよね。
その都合の悪い事が、彼にとっての脅威だ」
「日本人が、脅威」
「僕達は何故あちらの世界に、
突然、呼び出される様にして、
訪れる事が出来たのだろうね?」
「わ……、わかんねえ」
「詳しくは分からないけどね。
あの世界は僕達に何かを隠してる」
「何かを隠してる?」
「僕の憶測だけどね。
あの世界はとても広くて、
知られてない事が多すぎるから。
僕達に一番関わりの有りそうな、
女神と日本人の伝承にしても、
よく分からない事が多いと思わないかい?」
「まあ、確かに」
「それを、日本人が暴いてしまうんじゃないかって、
あの世界の闇は恐れてる」
「じゃあリロクは、その世界の闇の一部なんだな」
「そうだろうね」
「お前に一度、勝った様なヤツなんだよな」
「そうだよ。でも、臆病風に吹かれる必要は無いよ」
「いや、普通に怖いんですけど……」
「幾ら、世界間を行き来出来ると云っても、
ここは、魔法にとって、
アウェイだ。
充分な魔力の供給は行われない」
「それはつまり……」
「異世界で戦った時ほど、強くは無い。
勿論、僕もだけどね。
だから、七年間、正直、泥試合だったんだよ。
でも、君が来てくれた」
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