異世界篇 5 『怪物。』
異世界篇 第5話になります!
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イファル王立ち会いの下、
王宮でガコゼへの取り調べが行われた。
妄言や戯言で挑発を繰り返すから、
と云う理由で、
スイ達が取り調べの場に来る事は許可されなかった。
「なあに。心配要らないからねー。
僕が居るんだからさ。
任せてよー」
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「聖域教会から、使者が来るってさ」
ガコゼの取り調べが終わり、
ラオは謁見の場にスイ、ユンタ、ヤエファ、イェンの、
四人を通した。
正確には、
大勢で押し掛けて、
国王に失礼があってはいけないから、
義妹達は連れて行かないとヤエファが言ったからだ。
それを聞いてシャオに都案内を頼み、
ロロ、それにハツも、
義妹達に同行する事にした。
「それは、教会がガコゼを救いに来るって事ですか?」
「ざっくり言うとそうだねー。
交渉の場を設けて欲しいとの事だったけど、
実際には、どういう意味合いなのかは測りかねるね」
「攻撃を仕掛けて来る可能性もあるという事ですね」
「まあ、そうだね」
「それで、国王様はガコゼをどうする御見積りかの?
あっさり教会側に引き渡すんかの?」
「まさか。
あの男の能力を、
ヤエファちゃん達も見たでしょ?」
ラオはニコリと笑った。
「亡骸を使って戦力を増加させる能力なんて、
厄介だし、悪趣味で不愉快でしか無いよね。
あの男は、この国で僕が必ず裁く」
「そうかの」
「君の兄の様な、
実力者をまた利用されないとも限らないからねー」
「その通りじゃの。まさか百年も前に死んだ者を、
能力で操れるとは知らんかったけ。
アイツは、自分の能力について、
未だ嘘をついとるやも知れん」
「鬼火のロウウェン。
その妹君が、こんなに美人の、
良い女とは知らなかったなぁ。
ユンタ、君はガコゼの能力について、
どこまで知ってた?」
「ウチもヤエファと同じだよーー」
「つまり、あの男は、
仲間にも自分の能力の詳細を明かして無かったって事か」
「そーーなるね」
「と云ってもね、
ガコゼの能力でロウウェンに勝てる訳が無いし、
幾ら、ガコゼがズル賢いと言っても、
逆らう気すら起こらないと思うんだよなぁ」
「どーーゆー事?」
「ガコゼを唆したヤツが居る。
ガコゼに仲間を裏切る様に仕向け、
当時、
ロウウェン一派と戦ってたファーレンとガコゼを繋げた人物がね」
「百年前だぞーー?居たとしても人間じゃねーな」
「まだ生きてるだろうね。
そして、おそらく、
その人物は重要な手掛かりに繋がると、
僕は思うんだよねー。
ガコゼなんかが、個人で、
ファーレンや聖域教会を渡り歩けると思う?
誰かの手引きが無いと、間違いなく無理さ」
「その人物の事についてガコゼは?」
「訊いてはみたけどね。
何も教えてはくれなかったね。
口を噤むのは、
ガコゼの意思だけの力じゃ無かった。
魔法で口封じをされてる。
スイ、君の言葉の精霊ならさ、
ガコゼの口を割ることも出来るかな?」
「出来ます」
「少しは悩めよー。
僕の解析魔法じゃダメだったんだぜ?」
「わたしの精霊と、
国王様の魔法じゃ術式が違うからじゃ無いですか?」
「あっさり言うなよー」
「魔法の事は、国王様の方が詳しいでしょ?」
「そうは云うても、
今スイちゃんの魔力は低下しとるからの。
すぐすぐには、どうにもならんじゃろ」
「スイの魔力が回復するより先に、
使者が来るだろうねー」
「なんかポーションとかねーーの?」
「そりゃ有るさ。
でも、スイの精霊魔法に因る消費は普通じゃない。
自然の回復じゃないと駄目なんでしょ?」
「まあ、そうですね。
何か、難儀な身体でごめんなさい」
「いいさ。
それも踏まえて、僕はスイを気に入っているから。
可愛い娘だ」
ラオは嬉しそうだった。
「とにかく、
ガコゼを聖域教会に引き渡す事は出来ないね。
あのクソッタレは、
世界を陰鬱に覆ってる暗部を、
引き摺り出す為の鍵かも知れないと僕は思ってるからさ」
「暗部?」
「超長生きするとね、
見えてくるモノがあるんだよねー。
女神と、国々と、聖域教会。
暗部はさ、それらに気づかれ無い様に、
その上に乗っかってる巨大な怪物だ。
ガコゼは、その巨大な怪物の間接の一つだね」
「イファル王は、
とんでもなく長生きと存じ上げとるがの、
何やら意味有りげに、話しんさるのも、
埒があかんの。
もっと核心に触れた話が聞きたいんじゃが」
「急かすなぁ。
僕は王様だよ?少しくらいゆっくりと語らせてよ。
それとも、二人きりだったら、
もう少し僕の口も軽くなるかな?」
「そりゃ光栄じゃがの。
わっちは、どちらかと云えば女が好きじゃけ。
すまんの」
「わーーん!! クアイ聞いたか!?
僕が! この僕がフラれたぞ!?」
「陛下……。僕としても、もう少し砕いて話して下さった方が理解が追い付くのですが……」
「君達はせっかちさんの集まりだ。
なら、結論から言おう。
この世界には、何やら怪しい勢力が、
ずっと長い間、蠢き続けている。
聖域教会やネイジン、イェン君のソーサリースフィア、
そんなチャチなもんじゃあ無い」
ラオはイェンの反応を伺ったが、
特に何も変化が無く、つまらなそうに溜め息をついた。
「それはもう、ずっと遥か昔から、存在していてね。
現存する古い神々でさえ、
その存在を知る者は少ないと思う。
神すらも欺く見えざる手に依って、
この世界に干渉をし続け、
時には歴史に改竄を施し、
都合の良い様に操り、造り変えている連中がね」
「一体、何じゃろうな?その連中とは」
「その存在に気づいている、
僕を含めた数人の連中は、
彼らの事を管理者って呼んでる」
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