異世界篇 3 『イェン=ミナト説。』
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1話目になります!
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「亡骸や霊魂を操る魔法は非常に珍しい。
しかもガコゼさんのスキルは、
一度に複数の殭尸の、
細かい操作まで行える希少種。
その噂が、一人歩きしていた様ですが、
能力の所持者の人間性は、
どうしよう無いものでしたね」
「ちょい待て待てーー、おめー
何サラッと会話に参加してんだよ?」
「え?駄目でした?」
「駄目だよコノヤローーー」
「連絡を貰ったものの、
ちょっと要領を得なかったので、
とりあえず来てみたんですが……」
「……私、ちゃんと説明したんだけどな」
「すみません。僕の理解が足りてなかったのでしょうね」
「イェン。遅いよ」
「スイさん。僕も常に暇な訳では無いんですが」
「忙しい訳でも無いんでしょ?
わざわざ来てくれたくらいなんだから」
「物凄い言い種ですね……」
「スイちゃん。この男は誰かの?」
「具現派魔術師のイェンだよ」
「なんじゃ、その胡散臭いのは?
大丈夫なんかの?」
「指切り姫。
国を一つ滅ぼしかけ、
数多の賞金首を手玉にとって血祭りにした、
亜人史上、始まって以来の悪女。
まさか、実際にお目にかかれるとは」
「なんじゃコイツ気持ち悪い」
「ヤエファ。イェンはね、少し可哀想なんだよ」
「スイさん……。僕も傷つかない訳では無いですからね……」
◆◆
「何やねん……。また新手かいな?
けったい仮面つけやがって、取らんかい」
「はじめまして。ガコゼさん。
貴方の能力を是非一度、拝見したかったのですが、
到着が遅れてすみません」
「どういう事や?」
「今の、そのザマでは、
もう能力を発動する事も出来ないでしょうね」
「クソ……、また腹立つヤツが来よってからに……」
「申し遅れましたが、
僕はソーサリースフィアのイェンと申します」
「知らんがな!」
「貴方は、ご存知無くても、
そちらの、始教皇様なら、
我々の事を知っておられると思いますよ」
「イェン殿。
ソーサリースフィアの事は、
スイちゃんから聞いて知っているよ。
この度は、ご協力に感謝する。
しかし、今この男は護送の最中でね、
余り刺激をしてやらないでくれると助かる」
「イファル国将軍、クアイ殿。
イファル王直伝の、魔法戦闘術に依り、
異例の若さで大将軍へと抜擢を受けた」
「僕の事も知っていてくれるんだね。ありがとう」
「それに。
鉞、
土鬼、歩く地雷……百目。錚々たる面子ですね」
「キモいヨ! コイツ、キモいヨ!」
「多分オタクだし! 知らんけど!」
「そういう趣味なのかなぁ?
あんまりぃ、好きじゃないぃ」
「キッしょ。ミンシュ、この人NGですーー」
「さ……、散々な言われようッスね……」
「……あの人、こんな人だったんだ」
「……調べる事は仕事の一環ですよ。
優秀な人材のデータベースが必要なんです」
「ちょい待てや!
お前うちの始教皇知っとるんか!?」
「その名称くらいなら、
誰でも知ってるんじゃないですか?」
「何者やねん!?」
「ところでクアイ殿」
「無視かい!?」
「僕は一応、
ソーサリースフィアからの使者と云う、
体で来たんですが、
イファル王にお目通りは叶いますか?」
「それは勿論。
我々が都の王宮へと案内するよ」
「大丈夫なんーー?
コイツやっぱ、めっちゃ怪しくない?」
「ユンタさん。
貴女も鬼火のロウウェンの昔の仲間だったんですね。
以前、お逢いした時には、
すみません、僕の調査不足でわかりませんでした」
「勝手に調査しなくていーーから。
てかさ。
ウチ、あんたに聞きたかった事があんだけどさ」
「何でしょうか?」
「おめーー、ミナトか?」
「ミナト?」
「素直にゃ答えねーーと思ってたから、
別に良いんだけど。
マスク取って顔見せてくんね?」
「どうして、
そんな事をしなければならないのでしょうか?」
「好奇心」
「すみませんが……。
一応、顔を知られるとマズい仕事をしてますので」
「ま。ウチらの中じゃ、殆どミナトで確定なんだけど」
「根拠はなんなんですか?」
「あんたの立ち振舞いの全部かなーー?
独特な、むず痒さがあんだよね」
「ちょっと僕には、解りかねますね」
◆◆◆
「ミナト!!」
「シャオさん?
貴女も、そう考えているんですね」
「私は貴方に訊きたい事があります」
「何でしょうか?」
「スイと……」
「はい?」
「スイと、ちゅーしたのは本当ですか!!?」
「……はい?」
「しかも! 嫌がるスイを抑えつけて、
唇を無理矢理!!」
「な……、何を言ってるのかが、
よくわからないんですが……」
「更に……スイの元カレだと云うのは本当ですか……?
さぁ!! 答えなさい!!」
「シャ……、シャオ!? それは本当なのかい!?」
「ええ。父様。確かな筋からの情報です」
「……イェン殿。返答の内容次第では、
僕は自分の持つ全ての権力を持って、
貴殿と対峙しなければならないかもだよ」
「ちょ……、ちょっと待ってください!?
僕は、そのミナトと云う方では無いです!!
そんな事を訊かれても困ります!!」
「シャオ、クアイおじさん。
まだミナトだって確定はしてないんだから、
そんなに詰め寄ったら、イェンが可哀想だよ」
「そ……、そうですよ!」
「スイちゃん。君は美しい。
だから、君を慕う輩が居たとしても、
何ら不思議な事では無いよ。
だけどね!!
元カレ!?
おじさんは聞いてないよ!?
しかも!
あまつさえ、ちゅー!?
あの……、小さくて可愛かったスイちゃんが……、
娘の様に思ってるスイちゃんが……、
僕の知らないところで!?
ちゅー!?
得体の知れない男と!?
はぁぁぁぁぁぁ!?!?」
「おじさん。シャオにそっくり」
◆◆◆




