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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第四章 『二月二日と少年』
102/237

異世界篇 2 『魍魎ごっこ。』

本日投稿の2話目になります!



ガコゼはゆっくりと右手を上げた。

屈服はしてないと云う意思表示なのか、

彼の自尊心に拠るものなのか、

とてもゆっくりとした動作で、

その姿勢は、ふてぶてしく感じる、

決して真っ直ぐでは無いものだった。


彼女(コトハさん)が今、何処で何をしているのか、

教えて欲しい。出来たら、自主的に」


ガコゼはスイを睨みつけ、

上げた右手をゆっくりと降ろそうとした。


彼は言葉を発する事を、

スイの精霊によって禁じられたままだった。


───『“息を止めろ(ジュフゥシィ)”』


「!?!?!?」


スイがそう言った瞬間、

ガコゼは呼吸をする事が出来なくなり、

のたうち回って苦しみ出した。


「スイ! やり過ぎ!! マジ死ぬから!!」


ユンタにそう声を掛けられて、

スイは我に返り、魔法を解いてやった。


「……ヒィー……ヒィー……」


「余り時間も無い。

知ってる事が有れば、さっさと教えてくれ」


「……お前……、あの女(コトハ)の何や……?」


「コトハさんは、わたしのお母さんだ」


「コトハの娘……? 娘なんか居ったんかい……」


「ネイジンで会ったの?」


「いけ好かん女やったで……、

あのアホ(ロウウェン)と一緒や、

天恵者(チート)か何か知らんけど、

与えられたもんに胡座(あぐら)かきよってからに」


「余計な事は言わない方が良い。

わたしは今、冷静では無いから」


「ホンマにあっさり殺されてまうやろなぁ、

せやけど、

出来へんやろがい?

コトハの事を知りたいんやったら、教えてやるわ。

ワイを逃がしてくれるんならな」


「スイちゃん。真面に話を聞いては駄目だよ。

君は今、加減をする事が難しいかも知れない。

この男には、ちゃんと公正な裁きの場で、

罰を与える。

コトハちゃんの事も、必ず聞き出すから、

おじさんに任せてくれ」


「ちゅうてはりますわ。

けったいな(変な)魔法を使いよってからに、

流石、あの(ビッチ)の娘なだけは有るわ、

母娘揃って、バケモンじみとるわ」


「黙れ!! ガコゼ!! 

我が王国イファルに対する狼藉も然ることながら、

これ以上、この娘を侮辱する事は、

このクアイが許さん!!」


「けっ……、

たかが、死体をなんぼか貰うただけやろが。

死んでもうたらな、ゴミや。

あんた、ゴミを大事にするか?

ワイは、要らんゴミを、

また使える様にしてやっただけやろがい?

狼藉ぃ?

しょうもない事抜かすな、アホンダラ」


「ちょっ……!! 何なんスかこの人!?

マジむかつくッス!!?」


「えーーー、もう死んでたって事にして、

殺しちゃダメかなーーー?」


「グラスランナーの姉ちゃん。

お前も亜人(ワイ)と大して変わらんやろ?

餓鬼の頃から、踏み潰されて踏み潰されて、

性根なんか真っ直ぐになる訳無いねん。

お前も人間と接してたら分かるやろ?

ワイらみたいな、人外、腐って育つもんや」 


「あ……、あんたなんかと一緒にして欲しくないッス!!」


「一緒やて。

しょうもない世界やで。

自分の腐った部分、直視して生きた方が楽や」


「もうコイツと喋んない方が良いヨ。

頭おかしいんだヨ」


「えーーー?マジコイツなんなんですー?

ロロ助に舐めた事抜かすとか、極刑ーー♪」


「殺すし。こんなヤツ亜人(あたし達)の恥だし。

知らんけど」


「ヤエファさん。

申し訳無いですが、

義妹さん達に落ち着いてもらって下さい。

……僕が先に大声を出してしまったのですが。

このままでは本当に殺してしまうかも知れません」


「……わっち達は、

人間の国で人間の法律(ルール)に従って生きとるけ。

あんたら、約束を忘れたんじゃなかろ?

手は出したらいかんけ、堪えてくれの」


「すまんなぁ、堪忍してくれるか?

ヤエファ、お前が一番、ワイを殺したい筈やのにな。

人間()()()()()()、巧いことやったつもりかも知れへんが、

もっと上手にやらなあかんわ。

せやさかい、また殺しそびれてもうたな?

殺しはお前のが得意かもあらへんが、

ワイの方が一枚上手(うわて)やったなあ?」


「そうかも知れんの」


「あっさり認めるんかい。

何が指切り姫じゃい。

なんぼ、お前らが強いかて、

人間には敵わへんねん。

ワイからしたら、お前もロウウェンも、

死んだ後に、ワイに利用されるだけのゴミや!!」


「よいよ道化じゃの」


「どういう意味や?」


「人間に気に入られようとして、

ゴミ漁りの止められんお前(ガコゼ)が哀れでの」


「何やとコラァ!?」


「いつか報われるとええの。

……応援してるね♪」


「負け惜しみも大概にせえよ!!?」


「惜しんどらんけ。

お前だけじゃ、執着し続けとるのは。

それに、

ロウ兄が、哀れで惨めなお前みたいな者を、

側に置いとった理由がよくわかるでの」


「この……!!」


「続きは言わんでも、わかるかの?

頭の良いガコゼ君なら?」


「殺す!! 殺すからな!?

殺したらぁ!!」


「ま。こんな程度のヤツじゃけの。

他人にゃ好き勝手に抜かすが、

それは自信の無さの現れじゃ。

こげな(こんな)者に、調子を狂わされる必要なんか、

これっぽっちも無いけ。

ほいじゃ(それじゃ)

スイちゃん。あとは宜しく頼むけの」


「少し落ち着いた。ありがとうヤエファ」


「『魍魎のガコゼ』。

鬼火の仲間と聞いていたので、

一体どんな人物かと思いましたけど、

典型的な小者でしたね」


それは、突然現れた男の声だった。


スイ達にとっては、聞き覚えのある、

平坦で無機質な声だった。


◆◆

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