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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第四章 『二月二日と少年』
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イセカイ篇 2 『着信について考える。』

本日投稿の

1話目です!

不定期に投稿してごめんなさい!



──ヴゥゥゥゥゥゥッッ…… ヴゥゥゥゥゥゥッッ……


スマホが鳴っている。

向こう(異世界)では、当然電波が繋がらず、

バッテリーも切れてしまった為、

無用の長物となっていた、

スマホのバイブ音を、俺は久しぶりに聴いた。


バッテリーは切れていた筈なのだが。


スキルを発動してみたものの、

警告音と、例の声による案内通りに、

俺は気を失ってしまっていた。


ズボンのポケットから、

スマホを取り出し、画面を見ると、

知らない番号からの着信。


──こんな時間に?


俺はスマホで時刻を確認し、

今が夜中である事を知っている。

真夜中だ。


こんな時間に、電話を掛ける用事を俺は知らないし、

大体、俺に用事があって電話を掛けてくるヤツなんて、

俺は知らない。


「間違い電話かな……」


電話に出ることが、何となく億劫だったので、

俺は画面を見続けたまま、着信を無視していた。


しばらくの間、鳴り続け、

不在着信の表示が出たと思ったら、

またすぐに同じ番号から掛かってくる。


俺は少し怖くなったが、

次に掛かって来たら出てみる事にした。

おかしな内容なら、すぐに切ってしまえば良い。


そう思った瞬間、また同じ番号からの着信だ。


「……も……、もしもし……?」


「…………」


「あの……、すみません? どちら様でしょうか……?」


「──……、──……」


何か、テレビの音の様なものが聴こえるだけで、

相手は返事をしない。


「もしもし? もしもーし……」


よし、切ろう。

俺がそう考えた瞬間。


「……ん? ああ、何だ。繋がっていたんだ」


ようやく相手の声がした。


女だ。


因みに、俺に電話掛けてくる女の知り合いは居ない。


「も……、もしもし……?」


「もしもし」


「あの……、すみませんが……、どちら様で……?」


「君はナツメくんでしょ?」


「え!? は……、はい……。そうですけど……」


「僕の事を憶えていないかなぁ?」


「えーと……。ごめんなさい……」


「君はホントにナツメくん?

もしかして間違えたかな?

違う人に掛けてしまったかな?」


「ナツメはナツメなんですけど」


「なんだ、やっぱりナツメくんか」


「あの、それでやっぱり、

俺は貴女の事が誰なのか分からないんだけど……」


「嘘だろ?そう云う風に言われてしまうのは、

僕としては、凄く心外だな」


「す……、すみません……」


「君の電話番号を調べるのにも、

ちょっとした苦労も有ったし、

僕にとっては不慣れな事で、些か手間取ったんだ。

それなのに、君は僕の事が分からないと言う」


「ほ……、本当にすみません」


「君にとっては、些細な事かも知れないが、

これは立派な悲劇だ。僕は悲しい」


「あ……、あの……、本当に申し訳無いんだけど、

貴女が誰なのか、教えて貰えませんか?」


「名乗るタイミングを失ってしまったからね、

今更、自分から名乗り出るのも少し恥ずかしいな」


「いや、今がタイミングでしか無いと思うんですが……」


「君は昨日の夜中、スキルを使っただろう」


「……え?」


「スーキールー」


「な……なんで?」


「とっても微弱だが魔力を感知した。

調べた所、君の住む街から発されたもので、

もっと言うと、それは君の部屋からだった」


「し……、調べた!? あ……あんた一体何者なんだよ!?」


「君の電話番号を調べるのには、

苦労したと言っただろう?

それよりも、こちらの質問が先だよ。

君は、スキルを、

誰に、いつ、どこで習った?

能力の内容は?

それと、

君は()()()の部下か?」


「ちょ……、ちょッッ!?」


「答えてくれるかな?」


俺は咄嗟に感じた。

この女はヤバいと。


「ま……、待ってくださいよ、質問が多くない?

それに順調なら、俺の方が先じゃない……?」


「む。そうかな?」


「あんたは……、あっちの世界(異世界)の人なのか?」


「いや。君と同じ日本人さ」


「じゃあ、俺と同じで転移を……」


「そう。君は向こうに居たんだね?」


「ああ……。いつの間にか戻ってきちまったけどな……」


「じゃあ、向こうでスキルの鑑定を受けた訳か」


「そうだ」


「どの辺りの国に居たんだい?」


「最初はウクルク……。ここに戻って来る前には、

イファルに居た」


「ウクルク」


女はそう言うと、急に静かになり、

スマホのスピーカー越しには、

テレビの音だけが聴こえる。


「あの……、どうかしたのか……?」


「君がウクルクに着いて、誰か迎えに来てくれた?」


「来た」


「それは、誰だったかな?」


「……スイって女の子」


「……そうか。そうだったか」


「お……、おい……?」


「ナツメくん」


「はい……?」


「今から家を出て、逢えるかな?」


「あ……、あんたと?」


「うん。僕達は出逢うべきだ。

心配しなくても、僕は怪しい人間じゃない」


「いや……、めちゃめちゃ怪しいんだけど……」


「未だ僕が誰だか判って無いみたいだね。

僕の名前は二月二日(にがつふつか)だ。

まだ思い出せない?」


「二月二日……」


俺はその名前を知っている。


「出席番号なら、(ナツメ)の後ろの席」


「二月二日……!? お前……、二月二日かよ!?」


同級生の、変わった名字の女の子が、

クラスメイトに居た事を俺は憶えている。

四月一日(わたぬき)や、五月七日(つゆり)と云った、

特殊な読み方をしない、

そのままの読みで、二月二日(にがつふつか)だ。


「君はあまり学校に来なかったけど、

クラスメイトの事くらいは、

きちんと憶えていて欲しかったな」


「なんで……、なんでお前……」


そして俺はどうしようもなく、

心臓が迅く波打つのを感じていた。


「お前……、確か下の名前って……」


「ようやく思い出せたか。

僕の名前は“二月二日ことは”

君はスイに出逢ったんだね。

既にスイから聞いて知ってると思うけど、

彼女は僕の娘だ」


俺は波打つ心臓の鼓動が、

胸の高鳴りである事に気づいていた。


◆◆

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