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この払いで
「 ・・・キヘイジが、えらくいい仕事を頼まれたんだと。 前金でもらって、いつものようにでむいて、むこうで仕事して、のこりを、しあがってからあとでもらう、っていう仕事だ」
「まあ・・・、キヘイさんなら、そういう仕事も舞い込むだろうよ」
「この払いでか?」
大家が着物のたもとから、おりたたんだ紙をとりだした。
ずいぶんと、古めかしい様式の手紙で、粗い目の和紙に達筆な墨のあとと、どこかの寺の札に押されていそうな、立派な朱色の印。
文字は、すべて読めたわけではないが、あいだにしるされた『前金』と、『御仕事』、『手間賃』という文字と数字は、はっきりみてとれた。