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山男とかくし金(がね)のはなし  作者: ぽすしち


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誰かが先に


 のぼりたくはないが、のぼらねば、めざす場所にはつけないのだ。




 ヒコイチは、いままでひとりでのぼった『石段』に、いい思い出はあまりない。



 むかし、山でじいさんに教えられたが、『段』も《なにかの》『境目(さかいめ)』になるらしい。



 みあげた石段は両側に生えた太くおおきな杉のせいで、黒くうっそうとした枝葉の影しかない。


 しかたなく、苔におおわれた石段に足をかけたとき、数段上の苔に、泥がのっているのに気付く。



 だれか先に、泥のついた足でここをのぼっている。



 てのひらのなかで、振ってもいないのに、粒がころころとさわぐ。



 それをしずめるように強くにぎり、 ―― 腹をきめて、のぼりだした。



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