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めんどうなスジ
さあなあ、と首をかしげたついでに汗をぬぐった元締めは、ぶふう、と大きくいきをついた。
いつも、ひょうひょうとして、あまり『しまり』がいいとはいえない髭の中の口が、ぎゅう、とむすばれ、しぶい顔をしたままだ。
「それで、その、めんどうなスジってのに、心当たりがあるんだろ?」
ヒコイチがあぐらの足をくずし、立てたひざに腕をのせると、もとじめは、さかだった眉毛をさげるようにして見返してきた。
「 ・・・あのなあ、ヒコさん。 『心当たり』ってほどじゃあねえが、あるにはあるよ。 ―― ただなあ・・・ヒコさんが考えてるような《スジ》じゃあ、なくてだな・・・」