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《元締め》のこと
申し訳ございません。《元締め》については『山神様と桃 』をひろい読みしてみてください。。。
ヒコイチの商売の《元締め》は、その村から、すこしはずれた山のふもといるのだが、村の人は《元締め》のことを、『ホテエさん』とよんで慕っている。
たしかに、そのからだは丸く、顔にもよぶんな肉がついているが、その顔からはみだすほどの勢いで生えている、真っ黒で強い眉や髭は、大家が言ったように『ショウキさま』という呼び名の方があっている。
その『ショウキサマ』が、『片眼鏡』だとかいう、丸いガラスを目にあて、しかめた顔で指先につまんだ、うすく大きな金色の銭をみている。
「おい、こりゃあ・・・」
いいさして、言葉をのむようにして片眼鏡を懐にしまい、金をもとのように紙につつみなおした。
《元締め》の家の板の間には、つぎの商売の品らしい木の箱がいくつも積んである。
それを背に胡坐をかく男の尻には、なにも敷かれていない。
あれだけ尻に肉がついていれば、痛くないのかもしれないと、丸いわら編みを尻にしいたヒコイチは考える。