みないふり
『西堀の』隠居のともだちヒコイチが、またちょっとうすら寒いことにまきこまれるはなし。
同じ長屋のキヘイジを探すことになるのだが、そこはなんだか。。。。
いつもとおなじ、ホラーまでいかない怪談っぽいはなしです。
木が、陽射しをさえぎっているのだ。
あたりはどこにも陽がささず、足元にしきつめられた石の間には、苔がみっしりと生えている。
陽はあるはずなのに、足もとは暗い。
そこかしこに生える杉のせいだろう。
どれも太く、それなりの年月をたえながら、ほかよりすこしでも陽をあびようと上をめざしたのだろう。みあげてもどこまでの高さなのかは知れない。
ただ、はりだした枝がお互いかさなりあい、黒くしげった葉がここに蓋をしているのだ。
あしをはやめる。 なぜだか、いやなのだ。
くらくて、しめって、土と杉のにおいと、雨みたいなにおいが。
ばきり、と。上で枝がおれるような音がして、葉をゆするような音とともに、ほんとに枝がおちてきた。
みあげるのは嫌なのに、上をみあげた。
「 あ 」
黒いかげが、枝から枝をつたうのを見た。
見た が、 見なかったことにして、足をすすめた。
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