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異世界に願いを  作者: 妖精1号ちゃん
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003

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 朝の日差しが大樹の葉によって攪拌減衰され、柔らかな木漏れ日として窓から入り込む。


 木の扉を開け放ち外に出る。


「やっぱ、自然はいいね」


 清々しい。


 コンクリートジャングルなどと比べるべくもない。

 やはり文明は自然を破壊しないレベルで有るべきだ。



 小鳥が囀っている。

 蝶が花の蜜を物色している。

 リスが2匹、木の実を取り合っている。

 サイっぽい動物がまったりと草を喰んでいる。




「人を見に行こう」


 とりあえず一番近い人里を見ることにした。


「この辺の案内ならわたしにまかせて!」


 マリーが案内を申し出た。じゃあ任せるか。



 ====



 奴隷が居る。


 奴隷とは、社会がその大多数を占める構成員、多くは市民だが、その更に一段下の人の階級である。


 有体に言えば、貴族が市民を虐げ世の栄華を謳歌するばかりだと、すぐ革命が起きてしまう。

 だから市民にもストレスを発散できる人間を作った。スケープゴートである、奴隷だ。


 奴隷は社会に属しながら社会に属する恩恵より社会から受ける障害の方が大きい。故に、逃亡防止、身分偽装防止の仕組みがある。焼き印や足枷などで奴隷を拘束する。




 社会に属さない者も居る。外国の商人や貴族、旅行客、旅人、指名手配犯、難民、戦争国の構成員、逃亡奴隷、様々居る。


 彼らは社会に属さない。

 その外国の身分を社会がどう扱うかに拠るが、大抵は一段低い扱いをされる。社会に属さない者は社会に参画できないものだ。




 片田舎の開拓村の所有の奴隷、ベアチェも、どうしようもなく虐げられて、生かされていた。


 ベアチェは物心付く前に口減らしで売られた。今となってはまだ間引いてくれた方が良かったが、運悪く行商人が訪れていた。


 奴隷商に集められ、年齢、能力、器用、処女膜の有無、色々な項目で分類され、商品として仕上げ、出荷される。

 まず変態貴族に売られる。

 変態貴族の当日の機嫌などで奴隷はまた分別される。

 様々な奴隷がいた。考えるだけで気分が悪くなる悍ましい扱いであった。女児の奴隷は特に悲惨である。まず変態貴族に犯されて生きていられるかが問われる。

 貴族にとって性奴隷は消耗品である。大きくお気に入りの奴隷と、消耗用の奴隷に分かれる。

 消耗用の奴隷はとにかく処女で、嫌がり泣き叫び、犯されて血を流して死ぬ様な過程が貴族を満足させる。


 私の場合は貴族がそこまで精力が無く、死ぬまで犯されなかった。

 後日の調教の時は瘡蓋が丁度邪魔をして、それどころか変態貴族のイチモツを傷つけた。

 貴族はそれを認めたくなかった。私は処分のルートに乗った。

 貴族の使った性奴隷、普通であれば処分となると殺処分か、貴族の所有のまま長く生きられない仕事をやらせて使い潰す。


 しかし、貴族は私を含め多くの奴隷を買っていて資金が不足気味だった。


 要らない奴隷は奴隷商に下げ渡す事になった。


 痩せっぽちの力仕事も針仕事もできない非処女の女児。幼くして無理やり犯された関係で、性器が嫌な感じに癒合してしまったらしい。入れると角質が当たるらしい。


 労働できない労働奴隷として売られた。


 今度は農園主が私を買った。


 綿摘み様に身長の低い奴隷が欲しかった様だ。


 だが、農園主は私を犯した。どうも貴族が調教を諦めたのを噂に聞いていて、その私を調伏することでマウントを取りたかった様である。

 木の棒を何度も入れられて角質を丸くして、改めて犯された。




 そのまま農奴兼性奴隷として暫くが経った。

 私の身長の成長が止まった頃、幼少から犯された私は不妊であったが、どうやら妊娠したようであった。

 奴隷の子供は主人の所有物である。


 この腹の子を想う。

 堕ろすと決めた。

 次はもっと良い母親のもとへ行きなさい。


 堕胎用の葉の生る木を探す。



 前方から何かが駆け抜け、私の後方へ抜けた。


 向かい風を感じる。だがそれだけではない。


 地面を見る。


 小枝や葉の塊が、自然ではありえない小さな風で存外コロコロと転がる。


 なにか、とてつもない事が起きる予感がする。だが、良くあることだ。

 誰かが私を助けてくれないかと何度も願って、その都度諦めてきた。


 私はもう諦めた。真っ当な生活をすること。


 恨みを晴らす事。全てに対する憎悪と否定だけが、私の持ち物だ。


 私の処女を奪った貴族は、またどこかの女児を犯した際に興奮しすぎて死んだらしい。



 春の、どこまでも青い空、農場の清々しさ。


 なんで私は、子供を堕ろそうとしているのか。


 犯されるとき絶対に泣かないと決めた私だが、今にして涙がでた。


 力の限り大声で泣いた。


 全ての膿を、怨嗟を吐き出すように。




 泣きつかれて座り込みながら、空に何かある気がして見上げると、街の方角から煙が上がっているのが見える。


 遠くから歓声…どちらかと言うと悲鳴が絶え間なく聞こえる。


 どうやら私は大声で泣いていて気付かなかったらしい。


 葉っぱを組み合わせて作ったような人形が、私の前方の地面に、糸もなく自立して、こちらを見上げて居るように見える。


「人形?」


 その人形に手を近づけてみる。


 奴隷というのは恐れを許されないのだ。


 仮にこの葉の人形に手を近づけたが為に殺されたとしても、まぁそれまでかと思うばかりだ。


 自らの命を軽んじる。


 寧ろ、地獄で苦しみ藻掻く命が終わる事を望んですらいる。




 葉っぱの人形はぴょんと私の手のひらに飛び乗った。


 そのままカサカサと腕を攀じ登り、肩の上で立ち上がった。


 良く分からないがそれで満足したようだ。




 とにかく異常事態である。



 異常事態が発生したら、奴隷は主人の居る屋敷の庭に集合して、家令などの上位者の指示を仰ぐ事になっている。


 私は農場主の屋敷に戻ることにした。


 農場主の屋敷前は凄いことになっていた。


 メイド含め、市民以上の身分の人間が全て木の枷を嵌められて並んでいる。


 全員生きている様だ。


 木の枷は首と手首を上下で挟み込んで一枚板にして固定するもので、奴隷や犯罪者を拘束する物だ。


 そこら中に木や、葉や、石でできたゴーレムが忙しなく動き回っている。


 ゴーレムは手あたり次第に人をひっ捕らえては板を嵌め込む。


 倒壊した家は瞬く間にゴーレムと拘束具と枷、拘束台になる。


 あっという間に、村には奴隷と、拘束された市民以上だけになった。


 拘束された人間はこちらになにか叫んでいる。私を毎夜犯した農場主も、奴隷用の残飯に毎度態々虫を入れるメイドも、休憩中に私を犯す監督官も、今は同じく枷を嵌められて一歩も動けずに居る。


 なにか顔を真っ赤にしてこちらに訴えている。


 解放しろだの、恩を掛けてやっただろうだの、なにか言っているのだろう。


 全然頭に入ってこない。


 文脈が合わないと読み取れないというか、理解できないのだ。


 どうやら、奴隷に対する命令の呪いが効いていないようである。


 令呪の束縛がなければ、当然自分を虐げてきた存在の命令などは聞く必要がない。逆に怒りが沸くだけだ。


 人を奴隷として扱った人間は、奴隷に一切の慈悲を乞う資格を失う。


「いやーっ!」


 農場主の娘が男の奴隷に犯されている。


 農場主が女奴隷に鞭で叩かれている。


 奴隷世話係のメイドが口に肥溜めを流し込まれている。


 奴隷の傍にゴーレムが居る。どうやら奴隷一人にゴーレム一体が付き添っている様だ。


 私の肩に乗っているのもその一体なんだろう。


 農場主の性器が切り取られ、口に詰め込まれた。


 農場主がこちらを見た。


 例え今助けたとしてももう助からない出血だろう。


 すぐに死ねて良いな。


 あくまで奴隷に傷害されて死んだだけの事。


 人としての尊厳を奪われ、それを受け入れさせて生かされるのに比べれば生ぬるい。


 農場主は私から視線を外し、意識が遠くなって動きが少なくなってきた。


 じきに死ぬだろう。




 やはり、社会の仕組みが悪いんだろう。

 人も、エルフの様に集落単位で、自然の中で穏やかに暮らすべきだ。


 村人、それを纏める村長の身分だけ在れば良い。国王も、貴族も奴隷も要らない。



 オスド帝国。



 私が居るこの辺りを支配している国だ。



 身分差のある国なんて滅べばいいんだ。

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