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変わっていく努力

それからシルビアは積極的にクラスメートと話をするようになった

周りの生徒は幼い頃のシルビアのルークへの態度や、公爵令嬢という爵位からなかなか踏み込めないでいたようで、シルビアから話しかければ親しくしてくれた


男子ともフリッツを通して少しづつ接していけるようになっていた(とはいえ、友人と話すフリッツの横に棒立ちしているだけなのだが)


ルークのことで悩み、塞ぎ込んでいたシルビアが明るくなったことで、カレンもフリッツも良い方向に進んでいると思っていた

シルビアもそう信じていた









「ルーク、最近どうかしたの?」

ルークの友人であるナリスは、最近の彼の様子に違和感を感じていた。

普段から無口である彼だが、より一層無口になり、どこかを見つめてぼんやりしたり、と思っていたら今度はムッとしていたり…

冷静沈着なルークから考えると信じられないような状況だった


「…別にいつもと変わらない」


やっぱりどこかムスッとしながらルークは答える


彼は学園でも特に仲がいいナリスにでさえ、本心は語らない


(心配しているだけなんだけどな…)


寂しく感じつつも、このまま話を続けるわけにもいかず、最近気になる噂を聞いたことを話すことにした。


「そういえばルーク知ってる?君の暴君姫が改心したって噂になってるよ」


暴君姫とは、ルークに対して無茶苦茶な態度をとるシルビアに対してつけられたあだ名だ(本人は知らない)


眉を一瞬ピクっと動かしたように見えたが、いつも通りの顔でつまらなさそうに

「噂は噂だろう」と答えたルーク



ルークらしいな〜と思いつつ、ナリスもこの噂をあまり信じてはいなかった



というのも、昔からルークの友人であったナリスは、彼の近くでシルビアの暴君ぶりを見ていた


ルークは幼い頃から無口で、自分から行動を起こすようなタイプではなかった

そういったところが彼女には許せなかったのかも知れない

なんてったってリリージア家の妖精姫、なんて呼ばれるくらい蝶よ花よと育てられていたというご令嬢だ

ルークの、気の利いたことの一つも言えない、女の子が喜ぶプレゼントも贈れない、そんなところが許せなかったのかもしれない


それでも、顔を合わせれば罵倒、罵倒しないかと思えば徹底的に避ける

ルークが珍しく声をかけようとしても「あなたと話すことなんてなくてよ」なんて子生意気なことをいうような令嬢だった


友人のルークを大事に思うナリスからすれば、最低な令嬢だ

そもそも令嬢とすら呼びたくないぐらい


その態度も相まって使用人をいじめ抜いているだとか、毎日のようにドレスや宝石を買い漁っているだとか、酷い噂が流れていた

ナリスは正直、彼女ならそれぐらいするだろうと信じていた


実際のシルビアは宝石もあまり興味がなく、ドレスも、ルークに気に入られるものはどういったものかと日々お針子と相談して決めるような素朴な子供だった

お針子をよく呼んでいたことから上記の噂が出たのかもしれないが、全てでまかせである

こういった噂の元凶をフリッツが潰していっていたのは誰も知らない





(今更変なアピールをしてルークの気を引こうってか?バカにするのも大概にしろよな)


ルークに接触しようものなら徹底的に排除しようとナリスは心に決めた








「第二回作戦会議!フリッツ隊員、報告願います」

「はい!近況としてはシルビア隊員は同性の同級生とは友人関係を築くことに成功し、男性に対しては未だ会話はできていないものの、会話の輪に入り令嬢らしく微笑んで相槌を打つことができてきているであります!」


自分の近況を客観的に誰かが話していることに恥ずかしさを覚えつつ、かなり成長したのでは、とシルビアは内心喜んでいた


「やっと第一関門到達ってところかしら」


喜びは一瞬だった


「まって、関門何個あるの」


「まず、同級生の異性同性、どちらとも問題なく会話ができること。第二関門はルーク様を視界に入れても悶絶しないこと。第三関門は…」

「も、もういい、大丈夫!…とにかく、同級生と問題なく接するようになれれば次はルーク様との段階的な接触ということね、すぐできちゃうわ」


かなり自信満々に言うシルビアだが、カレンとフリッツは白い目で見つめていた


「同級生とは話せるようになることはこのままいけば割とすぐだと思うわ。でも、ルーク様関連になると一気に躓くでしょうね…」

「俺も全くもって同感だね。そもそも、婚約者殿を前にすると言葉が出ない〜なんて可愛らしいものじゃなくて、気持ちと真逆のことをしてるんだよ?そんなにすんなり解決はできないね。ゆっくり段階を踏んでいこう。」


婚約者殿の卒業もまだ先だしね、とフリッツは続ける



それはそう、本当に私もそう思うの


でも、大好きな人と同じ学園に通っているのに顔も見れない、言葉も交わせない

何年経っても本心ではずっと悲しかったのだ

慣れることなんて、なかった


(でも、もし治ったとしても、そもそもルーク様は私を望んでくださるのかしら)


カレンとフリッツが今後の段階について相談している側ら、シルビアの心はどんよりと陰っていっていた


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