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82話 それでは入社試験を開始しようか。


 82話 それでは入社試験を開始しようか。


「降参する。まいった。貴殿の強さは理解した。降伏する。一度、断っておいてなんだが、『先ほどの提案』をぜひ受け入れさせていただきたい。今日より、我々は、あなたの下につく。だから、どうか、殺さないでいただきたい」


「――と、言っておりますが、師よ、いかがいたしますか?」


 ヒエンが、ゾメガの視線の先を追うと、

 黒髪のナイトが、壁際に背中を預け、腕を組んだ状態で、ヒエンたちを見つめていた。


(い、いつから?! まったく、気配に気づかなかった……そ、そんわけがあるか? ゾメガとの戦闘に集中していたとはいえ……いや、集中していたからこそ、ありえない。全方位に気を配り、意識の死角を殺そうと努めた……なのに……わずかも気配を感じなかったなど……そんなこと……)


 全力で動揺しているヒエンに、黒髪のナイト――センは、


「お前ら、知ってた? 人を生き返らせるのは、死ぬほど難しいんだが、死者の思念を現世に顕現させるだけなら、ある程度の魔力をつぎ込むだけでも可能ってこと」


 脈絡もなく、急にそんなことを言われて、ヒエンたちは返答に困った。

 そもそも、彼が何者なのかすら分からない。


(さっき、ゾメガは、あの青年のことを『師』と呼び、敬語を使っていた……ということは、ゾメガの上位者? い、いや、そんなわけあるか? ゾメガは、王族級の力を持つ本物の超越者。ゾメガよりも上位の存在など、いるとは思えない……)


 センが何者なのかと悩んでいるヒエンに、

 センは、続けて、


「初手から、本気でゾメガに平伏していれば、その決断力と判断力を買って、即雇用していたが、お前らは、ゾメガの高みを知ったから日和っただけ。……つぅか、本気でゾメガの下につくつもりはなく、ふところに潜り込もうとしているだけ」


 思惑を言い当てられて、ヒエンは表情をこわばらせた。

 暗部の人間なので、感情をそのまま表に出すような無様はさらさないが、人間である以上、本気の動揺を完璧に隠すことは不可能。


「いえ、われわれに、そのような裏の意図などは存在しません。本気でゾメガ殿の力に感服したため――」


 と、精一杯の言い訳をするヒエン。


 センは、そんなヒエンの言い訳をシカトして、

 自分の言いたいことだけを口にする。


「というわけで、テストをさせてもらう。みごとクリアできたら、お前らはゾメガの配下になれる」


「っ……」


 センの空気感を見て、『言い訳は無意味だ』と理解したヒエンは、ギリっと奥歯をかみしめながら、


「く、クリアできなければ?」


「ん? さぁ、知らんけど……たぶん、死ぬんじゃない?」


「……」


「さて、それじゃあ、さっそくはじめようか」


 そう言いながら、センは両手で複数の印を組んだ。

 その直後、ヒエンたちの周囲に、無数のジオメトリが描かれる。

 そして、その無数のジオメトリから、

 数えきれないほどの『実体のない、ユラユラしている影』が出現した。

 その影たちは、黒い涙を流しながら、ヒエンたちを睨んでいる。



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