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77話 グリド王国の現状。


 77話 グリド王国の現状。


「ワシはもう長くない。いいかげん、寿命が見えてきている。だから、別に粛清されてもかまわんよ」


 そう言いながら、ほがらかに笑う。

 その目には、『死を受け入れた者』特有の神秘な輝きが灯っていた。


年齢を重ね、終わりが見え始めた時、

 人間がとるパターンは二つある。

 死におびえて、憔悴してしまうパターンと、

 死を受け入れ命の小ささを悟るパターン。


 命の『意味』を悟ることはできなくとも、

 その『小ささ』と向き合うことはできなくもない。


「……あんたの感想とか感情に興味はない。情報屋らしく、有益な情報だけ教えてくれ。俺は、さっさと仕事を終わらせて帰りたい」


 若者は老人の忠告を聞き入れない。

 それは、どの世代であってもそう。

 それを経験上理解している『情報屋の老人パッサム』は、

 まるで、すべてを俯瞰でみているかのような、

 柔らかな笑みを浮かべて、


「すでに『焦らないほうがいい』と忠告はさせてもらった。ワシの役目はそこで終わり。あんたらが、実際のところ、どうするかは、あんたらが決める事。ワシは、近い将来おとずれる死を待ちながら、あんたらの趨勢を、見守らせてもらう」


 と、そう前置きをしてから、

 老人は、ヒエンが求める『グリドの情勢』について、細かく語った。


 老人がまとめたグリドのデータは極めて正確で、

 ほんの数分で、だいたいのことは理解できた。


 細かい情報を抜きにして、しごく簡単に一言でまとめると、

 トップが魔王ゾメガに変わってから、税が軽くなった。

 たとえるなら、これまでは『毎月20万ほど稼いでいた中から19万を税でとられていた』みたいな状態だったのが、『稼いだ額の15パーセント程度の税におさまった』みたいな感じである。


 インフラや社会福祉などの面でもテコ入れが入った。

 役人の中で蔓延していた汚職も一掃されたらしく、

 何人かは、物理的に首を飛ばされている。


 一般民衆は、その改革を喜んでいるが、しかし、同時に、『魔人が革命によって上に立った』ということで、周辺国から『やばい国』と認定され、貿易関連が停滞していることに関して不安も覚えている。


「まずは善政を敷いて対外アピールか……革命を起こした国の定石だが、この税収では、いずれ破綻する。施設関連に金を使いすぎだ。これでは、軍備に全く回せない」


 ゾメガが王になって以降、

 道路、水道、学校、病院といったインフラ関係に、

 これまでの十倍以上の金が投じられるようになった。


 なのに、税金は大きく下がっている。

 魔王がトップで周辺国はビビっているので、貿易で稼ぐこともできない。


「グリドは、完全に積んでいるな……」


「ちなみに、今、この国は、グリド王国ではなく『オルゴレアム帝国』となっているがの」


「リブレイの半植民地でしかないくせに、帝国を名乗るとは……どこまで愚かになれば気がすむのか」


 呆れかえるヒエンに、情報屋の老人パッサムは、


「帝国になっていく――という意味で、その名をつけたのやもしれんな」


「こんな状態で、どうやって、他国と戦うというのだ」



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