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71話 これからは本気でいくから、全力でついてこい。


 71話 これからは本気でいくから、全力でついてこい。


 ――雑魚狩りの楽勝をいくら繰り返しても、心技体すべてを見据えた『本物の強さ(高い戦闘力)』は、永遠に獲得できない。

 『経験値という数字』を稼ぐことはできても、

 『本当の器』を磨き上げることは不可能。


 10000年という長い地獄の中で、その真理を理解したセンは、

 ある程度強いモンスターと戦う時は、ほぼ無意識レベルに、

 『自分の出力を、相手の最大値よりも下げる』という縛りを己に課すようになった。


 その縛りを徹底することで、

 センは、『本物の戦闘力』を得た。


 『まともな精神力しか持たない常人』では決して届かない『高み』に到って、

 それでもセンは『自分は、まだまだ山のふもとにいる』と認識している。



(本物の絶望と向き合える下地がなければ、ノコの剣としては不適格)



 センは、自分を基準にした上で、ゾメガをはかろうとする。

 ゾメガからすれば、たまったものではない。


 ――と、そこで、ゾメガは、


「余はゾメガ・オルゴレアム。不遜でも自惚れでもなく、事実として、全世界最強の大魔王である。そんな余と互角に対峙できる、貴様はいったい何者だ?」


 と、純粋な疑問をぶつけてきた。


「俺はセンエース。たんなる『永き時空の旅をしてきた敗北者』だよ」


 センは、自らを語ってから、


「ここからは本気でいくから、全力でついてこい。ゾメガ・オルゴレアム」


 そこで、センは、縛りを解禁した。

 本来の翼で舞うと決めたセンは、

 ゾメガを余裕で置き去りにできる。


 だが、その事実を知らないゾメガは、


「ずっと本気だっただろうが! というか、さすがに、そろそろ、ガス欠だろう?」


 ここまで、全速力で駆け抜けてきて、もはや、スタミナも底をつきるだろう――と、センを甘く採点する。


 仮に、センが、本当に存在値700前後だったら、

 ゾメガの見積もりは正しかった。

 ゾメガは決して愚かではない。

 ちゃんと、もろもろを計算した上で発言している。


 ゾメガは賢く、強く、気高い、本物の王。


「余とここまで戦えた貴様は本当に素晴らしい! 貴様を世の右腕にしてやる! 光栄に思え!」


 言い回しこそ不遜だが、

 『絶対的な王』であることを求められているゾメガにとっては、

 むしろ、それ以外の態度をとることは許されない。


 ゾメガは、『ゾメガ・オルゴレアム』という魔王を全うしている。

 それが理解できているから、

 センは、不必要にすら思えるほどの速度で、時空を駆け抜けた。


「っ?! ど、どこに――」


 ゾメガの視点では『消えた』としか認識できなかった。

 コンマ数秒の中で、センの姿を必死に追い求める。

 そんなゾメガの視界に、センが再度うつしだされた時、


 センは、すでに、過剰な暴力の準備を終えていた。

 流れるように、舞うように、


「――閃拳――」


 深い集中をオーラに込めて、

 命の最果てに届いた拳を、ゾメガに魅せつける。


「どぐほぉおおおおおっっ!!」


 先ほどまでとは、数段階ほど質の違う拳を受けて、

 ゾメガは、噴水のように血を吐き出した。


「け、欠損治癒……ランク23……」


 気絶しかけているギリギリの無意識下で、

 ゾメガは、回復魔法を使おうとした。

 その様を見てセンは、


「実戦経験が少ないというだけで、根性がないわけじゃないな……安心したぜ。お前はクズじゃない。お前なら王になれる。すべての世界を『正しい光』へ導ける王に」



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