55話 召喚士としての性能。
55話 召喚士としての性能。
二体の王級を相手にしていながら、
ネオ・ヘルズ覇鬼は、余裕の表情だった。
超王級の看板は伊達ではない。
「ヘルズ覇鬼! ヘバるな! 全力で闘え!」
『優秀な召喚士であるかどうかを見分ける手段』は無数にあるが、
その中でも、もっとも顕著なのは、
『召喚したモンスターが、どんな状況であれ、本気で闘うか否か』である。
「ヘルズ覇鬼! まだ敗北したわけではないだろう! 折れるなぁああ!」
圧倒的に不利な状況であろうと、召喚士の命令に対して全力を尽くす。
それを徹底させられるか否かが極めて大事。
もちろん、『強力なモンスターを召喚できる』というのも非常に重要だが、
どんなに強力なモンスターだろうと、やる気がないなら役には立たない。
「グ……ギギ……ッ」
――ヘルズ覇鬼の心はすでに折れている。
センの召喚したネオ・ヘルズ覇鬼は、実力もやる気もケタ違い。
センは、『ありとあらゆる召喚技能』が高く、
召喚したモンスターに、特殊な強化を付与することも出来る。
ただでさえ強いネオ・ヘルズ覇鬼だが、
センが有するプラチナスペシャル『不屈の魂魄』の一部を付与されているため、
どんな状況に追い込まれようと、常に120%以上の力で舞うことが可能。
――『2』VS『1』の状況だが、
ネオ・ヘルズ覇鬼の方が圧倒的に優勢。
パラミのヘルズ覇鬼とアクアゴブリンロードは満身創痍。
すでに勝負は見えていた。
と、そこで、
「――異次元砲」
『強大な火力』の『照射』がネオ・ヘルズ覇鬼に降り注ぐ。
ネオ・ヘルズ覇鬼は、とっさに両手を十字にしてガードをしたが、
「グガァアアア!」
あまりに高い火力を前に、大ダメージは免れなかった。
かなりHPを削られて、フラついているものの、
しかし、ネオ・ヘルズ覇鬼は、ギラリと光る目で、
異次元砲を放った相手をにらみつける。
その相手は、パラミの父。
グリドの王『バーサミー・グリディアール』。
グリドの王に、
『ネオ・ヘルズ覇鬼の召喚主であるセン』が、
「おいおい、この戦いは、パラミと俺のタイマンだと言っただろう。偉大な王様ともあろう者が、一騎打ちの約束をやぶるとはなにごとか」
そう言うと、バーサミー王は、
「貴様が勝手にほざいているだけで、誰も約束などしていない。それに、ナイトの遊びに付き合うほど、王族はヒマではない」
「ヒマだろ、お前らなんざ。立場を振りかざして、『面倒なこと』は、全部、下のやつらに丸投げして、バカみたいに遊び惚けているだけなんだから」
「大局がまったく見えていない、浅はかで愚かなクズが。貴様は、王族の苦労を何もわかっていない。庶民が呑気に暮らしていられるのは、我々、王族が、周辺国に対し、常に睨みをきかせているからだ。われわれがいなければ、すぐにでも飲み込まれて、グリドの民は、みな、奴隷にされてしまうだろう」
「つまり、周辺国の侵略から守ってやっているのだから、庶民は、黙って王族に搾取されていろ――と、そういうわけか?」
「搾取? 貴様は本当に何もわかっていない。国民が国のために働くのは当たり前のことだ」
「アホみたいな重税を課して、さんざん民を苦しめておいて、よく言う」




