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4話 『バカ王子』地獄サイド(1)。


 4話 『バカ王子』地獄サイド(1)。


 若さを奪われ老人になったバルディは、

 側近のナイトである『マルファイ』を呼びつけた。


「なっ……陛下、そのお姿はいったい……」


「ノコが、私に、『自分の老い』を押し付けて逃亡した!」


「な、なんと! そ、そんなことが――」


「すぐに暗殺部隊を送れ! あいつを殺せ!! 絶対にぃい!」


「か、かしこまりました!」


 すぐさま配下に連絡を入れるマルファイ。

 追跡用の魔法を使えば、瞬間移動を使われても、どこに逃げたか探し当てることは可能。


 リブレイ王国は、西大陸における有数の大国なので、その手の有能な能力者も数多い。

 命令を終えたマルファイは、バルディの元に戻り、


「……ま、まさか、ノコ様が、そのような魔法も使えたとは……」


「老婆になったのも、魔法の力によるものだからな……その逆もありえると考えておくべきだった」


 『ナイトのセンが、その魔法を使った』――と言っても、なかなか理解を得られないだろうと思ったバルディは、いろいろ考えた結果、すべて『ノコの仕業』ということにした。

 もともと、『男娼を買っていた』という濡れ衣だけでは弱いと思っていたので、ちょうどいいとも思っていた。


「……ごほっ、ごほっ」


「ど、どうなさいました?」


「息がうまくできん……肺の機能も、喉の筋肉も、すべてが劣化しているようだ……苦しい……少し動くだけでも体がきしむ……」


「老化とは、それほどまで苦しいのですね……ノコ様は……そんな状態でも、民のために、毎日、あちこち駆けずり回っていたのか……」


「あ?! 何が言いたい?!」


「い、いえ! 民衆の間で、ノコ様は、その献身さから、聖女のように思われていますので……まさか、殿下に、自身の『老い』を押し付けて逃げるとは……」


「もういい。サロメだ……サロメを呼べ」




「ここにいますわ、殿下」




 そう言って、いかにも『男に好かれそうな体つきの美女』が、後ろから現れた。

 由緒あるカルバリィ家の子爵令嬢。


 サロメは、バルディに近づき、


「おいたわしや、殿下……」


「おお、サロメ……こっちにこい……体が痛むのだ……さすってくれ」


「はい。これでよろしいですか?」


 サロメに腰をなでられたバルディは、


「ああ……悪くないぞ、サロメ……美女に触れられていると、少しはマシな気がする……」


 バルディの腰をなでながら、サロメは心の中で、


(また、ずいぶんと、醜い老い方をしたものね。まるで、ボロ雑巾のようだわ。ノコ様は、老いていても、気品があって、上質な知性を感じさせた……それと比べて、この男の小汚いこと……王子としての地位と権力がなければ、指一本触れたくないわね)


「ああ、サロメ。お前は本当にいい女だ……今夜、お前との婚約を発表しようと思っていたが、婚約ではなく、今日、正式に、私と結婚しろ。これは命令だ」


 本来であれば、サロメとは婚約という状態にしておき、

 また新しい『いい女』が現れれば、そっちに乗り換えようと思っていた。

 だが年老いたことで、『心のスキマ』が広がり、

 誰かに、『本当の意味』で支えてほしくなった。


 風邪を引いた時に心が弱り、人肌が恋しくなるのと変わらない現象である。


「まあ! 私を選んでくださり、感謝します、殿下」


 表面上は、花のような笑顔を見せるサロメ。

 しかし、心の中では、


(完全に篭絡ろうらくするまで、まだ時間がかかると思っていたけれど、思わぬところで幸運が巡ってきたわね……ノコ様には、本当に、感謝しないと……)


 心の中では、舌を出しながら、

 しかし、口では、


「殿下、たとえ、老いてしまっても、あなた様に対する私の愛は変わりません。一生、あなたに添い遂げると誓います!」


「おお、サロメ……お前は、『心』も『見た目』もノコとは比べものにならないな!」


 女性に対し『グラマラスなセクシーさ』を求めるバルディにとって、

 華奢で低身長のノコは『対象外のチンチクリン』でしかなかった。

 仮に、老婆になっていなくとも、バルディは、ノコを捨てていただろう。


「お前こそが、私の運命の相手だ!」


 サロメの優しさに感動しているバルディを尻目に、

 サロメは、心の中で、


(あんたみたいな醜いジジイが『運命の相手』であってたまるか……)


 吐き捨てる。

 彼女は、『まともな感性』の持ち主なので、

 『心も見た目も汚いジジイ』のことなど、とうぜん、大嫌いである。


(ここまで老いてしまったのであれば、あと数年で死ぬわよね)


 いつ死んでくれるだろうか、とそんなことを考えている途中で、


(んー……こんな醜いジジイと、何年も一緒にいるのは苦痛ね……もう、公爵夫人の地位は手に入れたのだから……暗殺者を送って、サクっと死んでもらいましょうか。本来のこの人は、剣の天才だから、暗殺するのも至難の業だけど、今の状態なら、簡単にヤレるでしょう)



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