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30話 すごく不愉快。


 30話 すごく不愉快。


 ノコは、間違いなく、『脳のバグレベルで心優しい女の子』だが、

 それゆえに『おそろしく潔癖なところ』があり、

 『好き勝手に生きている無法者』がとにかく嫌いだった。


「あたしは、周囲の連中から、聖女だなんだと言われているけれど、そんなの、とんだ誤解。あたしは、ワガママに生きているだけよ。自分がやりたいことを頑固にやり続けているだけ」


 それも事実。

 『医療関連の研究』と『インフラ整備』と『純粋な人助け』という、『自分のやりたいこと』に没頭していただけ。

 だから、王族連中に搾取される日々にも我慢できた。

 王族連中はバカだが、『強さ』だけは本物だから、いろいろと使い道はあった。


 誤算だったのは、バルディが、ノコ・ドローグを殺害するほどバカだったこと。

 ノコは計算が立つ天才だが、だからこそ、

 『あまりにもバカすぎる人間』の奇行は読めなかった。


 ――そこで、ノコは、レンドに右手を向けて、


「龍毒ランク17」


 強力な毒の魔法を放った。


 貴族級の毒をくらったレンドは、その凶悪な毒の力に抵抗できず、


「ぶっ……うぇぇえ……っ!」


 ゲロを吐きながら倒れこむ。

 青紫色になってピクピクしているレンドに、

 ノコは、


「……『王族級』が相手だと、簡単に抵抗されてしまう程度の魔法だけれど、あんた程度を殺すのは問題ないわ。……あんた、どうせ、これからも一般人に迷惑をかけ続けるんでしょ? それを放置する方が、むしろ悪だと思うから、ここで死になさい」


「うっ……ぐぅ……」


 苦しみながら、レンドは、


(ぐ……こ、ここまで強力な毒系の魔法が使えるとは聞いてねぇぞ……ただのヒーラータイプじゃなかったのかよ)


 リブレイの王族は、事実、かなり強いので、

 戦闘面では王族だけで十分だった。


 ノコの出番などまったくなく、

 だから、『ノコの強さ』は広まっていない。


 病気を治せるという点ばかりが注目されすぎていて、

 ほかの分野には、誰も目を向けていなかった。


 全方位に優秀である『ノコの本当の価値』を正しく理解していたのはセンエースぐらい。


(まずい、死ぬ……クダラや魔導師団もヤバいが……単純に、この毒魔法がヤバすぎる……)


 自分が置かれている『正しい戦況』をようやく理解したレンドは、

 どうにか、この場を切り抜けようと、


「……ノコ・ドローグ様……お、俺が、悪かった……これからは……反省して……まじめに……生きる……だから――」


「あんた、それ、病気を治してあげた時も言っていたわよ」


「……」


「たぶん、嘘なんだろうなぁ、と思っていたけど、多少は、変わったかもしれないと思って……だから、話してみようと思ったんだけど、あんた、結局、最低な盗賊のままじゃない」


「……今度は……嘘じゃない……だから……」


「……」


 ノコは、数秒だけ黙ってから、


「すごく不愉快」


 そう言いながら、レンドの顔面に、


「ぐぼほぉおおおっ!」


 オーラを込めた拳をぶちこんだ。

 殴り合いは得意じゃないが、

 存在値が高いので、やり方次第では高火力を出すことも可能。


 毒で体が弱っていたところに、

 膨大なオーラを込めた拳を叩き込まれたので、

 当然のように、一発で気絶してしまったレンド。



読んでいただき、ありがとうございます!

「面白かった」「続きが気になる」と少しでも思っていただけたなら幸いです。

ブックマークと評価をしていただけると、すごく嬉しいです(*´▽`*)

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