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15話 ガルム様に助けなんて必要ないさ。


 15話 ガルム様に助けなんて必要ないさ。


 突然、悪寒おかんに襲われたガルム。


「げほっ、ごほっ……なんだ……これは……」


 目がかすみ、体が痛み、

 『喉を刺すようなセキ』がとまらない。


 自分の身に何がおこったか分からず困惑しているガルムに、

 センは、


「流行り病と同レベルの苦しみを伴う病気系の魔法をかけさせてもらった。一般人であれば、『辛くて苦しくて仕方がない状態』だが、ガルム様なら、もちろん余裕だろう」


「うえぇ……げほっ、ごほっ、がはっ……うぅう……」


 ガルムは、うずくまる。

 余裕など一ミリもない。


 全身の筋肉がピシピシと痛んで、体を自由に動かせられない。

 苦しさのあまり、頭がまったく働かない。

 体の痛みに引っ張られて、心がどんどん弱っていく。



「た、助け……」



 助けを求める彼に、

 センは、冷徹れいてつな目を向けて、


「ガルム様に助けなんて必要ないさ。ガルム様なら、その程度の病気は、自力でなおせる。だって、お前は、『ノコなんて必要なかった』なんてことが言い切れるほどの豪傑ごうけつガルム様なんだから」


「ひゅー、ひゅー……」


 呼吸が苦しくて、息がおかしくなってくる。

 足・肩・腰がズキズキして、寒気が止まらない。


「尊敬するよ、ガルム様。その苦しみを前にして、あれだけの啖呵たんかを切れる男はそういない。少なくとも、俺は無理だった。くるしくて、つらくて、助けてほしくて仕方なかった。けど、誰も助けてくれなかった。当然だ。みんな、苦しかったんだから。けど、そんな中、ノコは、誰よりも深い苦悩を背負って、どんなに辛くても、国中をかけずりまわって、苦しむ人々に手を差し伸べ続けた。――絶望のどん底で救いを求めていた俺に、優しく微笑んで、『もう大丈夫』と言ってくれた」




『――あなた、自分も病気なのに、周りの人を介抱しているの?』

『……ごほっ……人手が足りないので……』

『すごいわね。尊敬するわ』

『……ここには近づかないでください。うつってしまいます……この病気にかかると、治す手段がないので――』

『治す手段なら、ここにあるわ』

『は?』

『横になって。もう大丈夫』




「――どれだけ嬉しかったか……どれだけ救われたか……」




『ノコ様、無理をしてはダメです。今日はもう休んでください』

『大丈夫……まだやれるわ。だいぶ老いてしまったけれど、まだギリギリ動けるから』

『歩く事さえままならないじゃないですか! もう、本当にやめてください!』

『あと少しで、病を完全に駆逐することができるわ。ここまできたんだもの。最後までやるわよ』

『ノコ様……どうして……そこまで出来るのですか……』

『単純な話よ。あたしは、世界中のすべての女が束になっても敵わないくらい、美しさに対して貪欲だから』

『……は?』

『若さしかない女よりも、あたしの方が美しいでしょう?』




「……なぜ、ノコを侮辱できる……」


 センは、つい涙を流しながら、


「お前も……あのクソ王子も……おかしいぞ、ほんと……」



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