サングリーズの場合。~問題提起~
勢いだけで書き始めるとこうなります。
ここは「戦死者の館」と言われる、
「アースガルズ」にあるこの地を治める主神オーディンの宮殿・ヴァーラスキャールヴの中にある1つの会社。
この会社にはいくつもの部署があり、
そこに勤めるのは「ワルキューレ」と呼ばれる通称・戦乙女である。
ただし会社の為、
100人に満たない「ワルキューレ」だけでは仕事は回らない。
その結果「ワルキューレ」達は従業員の勧誘に日々、勤しんでいた。
そんな中、人事部人事課人事Ⅲ課長・サングリーズは頭を悩ませていた。
「ちょっと、勧誘ノルマ全然足りてないじゃない!!一体何してるワケ?」
「大きな戦争があって、たくさん従業員を連れ帰る予定だったでしょ?」
「一体、どんな勧誘をしてるの?」
「こんなんじゃ、社長の期待に応えられないし、他の課から従業員補充の督促来てるんだから、なんとかしなさいよ!!」
「ちゃんとマニュアルを熟読してる?一言一句間違えずに暗唱出来る?当然よね?当然出来るわよね?」
「ほら、聞いてあげるから、今すぐに言いなさい!!」
Ⅲ課長・サングリーズに捕まった若手社員のエリスは、
今にも泣きそうな顔でマニュアルを暗唱していく。
「今日はいい天気ですねぇ!あれ?もう戦死してるから、天気なんか気にしてないですかぁ?」
「あ、申し遅れましたぁ!ワタシは、派遣会社ヴァルハラのエリスって言いますぅ。」
「えっとですねぇ、貴方みたいな健康で強そうな戦士の方を勧誘してるんですけど、我が社で一緒に働きませんかぁ?」
「びしばしッ!」
突然、エリスの頭は丸めたマニュアル教本の強襲を受けていた。
「エリス!!全然なってない!!そんなんじゃ、勧誘が成功しないワケだわ!!」
「何そのとっぽい話し方!!それに何そのマニュアル!!全然違うじゃない!!「あ」とか「えっと」なんて、マニュアルに書いてないわよね?」
「それに「強そう」?そんな単語も書いてないわ!!そこは「屈強そう」でしょ?」
「更に付け加えるなら、もっとカラダを使ってアピールしなさい!!人間界で戦争に出るのは9割以上、オトコよ!!」
「オトコはオンナに飢えているんだから、もっとカラダを使ってアピールしないと、落とせないわ!!」
「ほら、もっと肌色を出して!!アンタみたいなドン臭くてとっぽいオンナは、肌色で魅せて色気で勝負しないとオトコを落とせないわ!!」
サングリーズは、
ビシっと着こなされているエリスのブラウスのボタンを引き千切る様に襟を引っ張ると、
むりやり胸元を露わにしていく。
更にはタイトなスカートに手をかけるとこれまた強引に引き裂き、長々とスリットまで作ってしまった。
「そんないいカラダしてるんだから、そのカッコで勧誘してきなさいッ!!どうせ、相手は魂なんだから襲われる心配はないから安心しなさい!」
「それに場所は戦地なんだから、それくらいのボロボロのカッコじゃないと臨場感が無いわ!!」
「今日中にあと200人、勧誘に成功するまで会社に帰ってくんな!!」
サングリーズに因って強引に胸元をはだけさせられたエリスは泣く泣く勧誘に向かって行くのだった。
「ねぇ、知ってる?さっきのはパワハラって言うのよ?」
会社の休憩時間にⅡ課長のゲルはサングリーズに対して意見をしていた。
「さっきたまたまⅢ課の前を通り掛かった時に、サングリーズが怒ってるのが見えたからそのまま魅入っちゃったけど、あの子エリスだっけ?泣きながら勧誘に行ったよ?」
「それに、あんなパワハラしてたらあの子の方が病んじゃうわよ?」
Ⅱ課長のゲルはサングリーズに対して忠告をしていたが、
当のサングリーズは聞く耳など最初から持っていない様子だった。
「パワハラぁ?そんなモン関係ないね!そもそも、パワハラって何だよ?」
「そんな事より、お前の所はどうなんだ?勧誘は進んでいるのか?今月のノルマは達成出来てるのか?」
同じ役職のゲルに言われたサングリーズは面白くないといった表情で話しを逸らしていく。
だが結果は、
「ゲルの所は、皆優秀よ!ノルマ達成率は200%だもの!えっへん!!」と、
誇らしげに胸を強調した態度にサングリーズはイライラを募らせていくだけだった。
「何なんだ、あのオンナは!!胸だけが大きくてオツムは空っぽなクセに、社長に色気を使って課長になったクセに!!」
サングリーズは荒れていた。
その結果、Ⅲ課には暴言の嵐が巻き起こっていく。
その為、Ⅲ課の課員は黙して嵐が過ぎ去るのをただ待つしか出来なかった。
「えぇ、アナタがⅢ課長のサングリーズ君であーるか?」
暴言の嵐が吹き荒ぶⅢ課に突如として鳴り響いた声に、
暴風の中心点であるサングリーズは凶悪な睨みを利かせて乱暴に言い放っていく。
「何モンだ?ここはⅢ課の関係者以外は立入禁止だ!早々に出て行け!!」
更に荒れ模様になったサングリーズに対して視線を向ける者はⅢ課には誰もいなかった。
「吾輩は、ハラスメント管理部長ダッタ・デアールであーる。先程、Ⅲ課のエリス君が吾輩のハラスメント管理課に来たのであーる。よって、サングリーズ君の事情聴取を行うのであーる。」
サングリーズは突如として現れた闖入者、
ダッタ・デアールに対して良く分からない顔をしていた。
「ハラスメント管理課ぁ?何を言ってるんだ?そんな課は聞いた事がねぇ!!」
「それに、ダッタ・デアールとか変な名前しやがって、フザケてんのか?」
サングリーズはゲルに言われた事から派生したイライラを突如として現れたデアールで解消しようと考えたのであーる。
いや、本当は、勢いだけじゃないんだからね(汗)