銀色の腕時計
金属製のベルトに、コバルトブルーの文字盤が映える。
きっと高い腕時計なんだろう。詳しくないからわからないけど。
「いつもこの時計見てるな」
苦笑する彼から、あわてて顔を背ける。
「別に……」
「そんなにこれ、好きなのか?」
ぱちん、と音がした。目の前に、ぬっと時計が差し出される。
「ほら、はめてみるか?」
「え、いや、いいよ」
傷でもつけたら大変だ。それに――。
「別に遠慮しなくていいのに」
彼は、元のように時計をつけ直した。
ほどよく筋肉がついて、骨張った長い腕。すんなりと伸びた綺麗な指。そこにアクセントのように美しい銀の腕時計がはまっている。
高い腕時計なんだろう。詳しくないからわからないけど。それに別に、時計自体はどうでもいい。
その時計をしている、あなたを見るのが好きなんだから。