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快適すぎて驚いた




アリステラ・アトリシエを名乗る令嬢を乗せた馬車が連なる横を通り、我の乗る馬車は問題なく魔導国へと入った。


「全部偽物って分かってて、わざとああして検問を受けさせている所に悪意を感じる」

「そもそも、お嬢さんの名を騙っている時点で悪意の塊みたいなものですし、気にする必要ないでしょ」


それもそうか。


そして馬車はまた進む。問題なく王都まで。…進むはずだった。



いや、進んだには進んだのだがな?


「では次!名前を名乗ってから水晶に魔力を流せ!」

「あー、名前はアリス…なのだが、…この程度の水晶だと我の魔力を図るには…「ごちゃごちゃ言ってないでやらんか!この学園の入学試験を受ける事自体が名誉だと思え!早よしろ!時間の無駄だ!」……」


この試験官、間違えて吹っ飛ばしちゃダメ?


折角興が乗ったから声かけられた時に試験を受ける事を了承したが、こんな不躾な野郎が試験官だとはきいておらんのだが。


隠れているアノクが全力でノーと主張しているので、諦めて目の前の水晶に魔力流して粉々にする事で腹立たしさを紛らわせることにした。


魔力を目の前の水晶にぶち込むと、案の定砕けた。内側から弾け飛んだ。試験管の額にも砕けた破片がぶつかった。よっしゃぁ!


「………あー。…脆く、なってたのかな?なに、予備がある!ほらさっさと魔りょ…ぐぺらッ?!」


一瞬目を剥いた試験官だったが、気を取り直した。チッ!

予備を出されたのですぐ様魔力を流してまた粉々にしてやった。今度は破片が鳩尾に当たったらしい。


「この程度の軟弱なガラス玉に、我の魔力が測れるわけが無かろうが」


何度も砕けた水晶と胡乱な目を向けている我を行ったり来たりする視線がまたうざったい。我、暇じゃねえんだよ。超絶可愛いこのアリスちゃんをジロジロ見るな。減るだろうが!我のご機嫌パラメーターが!



我は今、魔導国の王都の学園都市部で足止めを食らっている。

馬車の旅飽きたし、面白そうな店が並ぶ街だったので、少し観光することにしたのだ。そこで灼華を休ませるために獣姿に戻して、我が抱えて歩いていたら、この国の魔術学校の入学希望者と間違えられ、そこの教授だというマトモそうな人間に、半強制的に試験会場に連れてこられたのだ。曰く、才能がありそうな者を見つけたら、スカウトするのが仕事のひとつだとか。

試験日と重なったのもよろしくなかった。入学希望者は大抵小動物を連れている事が多いらしく、灼華を連れていたことでより入学志願者と判別された所もよろしくない。こればかりは我の運のなさを呪うしかない。

だが、魔法力を測る試験というのは面白そうだったから、試験を受けてから自主辞退も出来ると言質を取った上で参加することにしたのだ。


「ま、魔力量と、質が測れない…!?」

「我の魔力を測りたいならそんな屑石の寄せ集め水晶ではなく、Sクラスの魔鉱石もってこいや」


まあ、無いだろうけど。だって魔王だった時、魔導国自体を滅ぼすのを全力阻止された腹いせに、魔導国の人間らに力を与えたり、生活を助けそうな魔法具も魔石関連も全部ぶっ壊したから。Sクラスと我が称し、今世ではおそらく伝説級とかいわれるであろう代物は、全て、ジャンル問わずに壊すか壊すか壊した。


「…!……?…リ…さ……!」


だって、嫌いなんだもん。なのにルシア達が邪魔を……?ルシア達、精霊が、邪魔して…?あれ?



「アリス様っ!」

「何だ。アノク。この試験官ぶっ飛ばして良いのか」

「違いますけど!?ボーッとしてるから、心配したんです!ほら、次行っていいって言われてますから!」


それより我、今何か重要なこと思い出しそうになったんだけども。


埒があかない!とアノクが我を抱き上げて次の試験へと移動を始めた。振動は最小限、我が呼吸をしやすいよう力を入れ過ぎずしかし落とさないようしっかりと。……快適ッ!今度から運んでもらうときはアノクを使おう!


「…何か、碌でもないこと考えてません?」

「いいや全く。寧ろラギアにかけあって、アノクの昇給か特別手当を与えるよう取り計らおうか考え中だ」

「……何をさせる気か知りませんけど、流石に命はかけませんよ?」

「大丈夫大丈夫。いざとなったら勝手に身代わりにする」

「……」


ぽとっと落とされたのは細かい魔法陣の描かれた巨大な石板の上。六芒星を含むその陣は、星の頂点に6つの宝玉が嵌め込まれている。


「此処では貴女が使える魔法の属性を調べ……何してるんですか?」


石板に刻んである魔法陣を調べようとしてる。


「す、すみません。うちのお嬢様落ち着きとかと無縁で…!アリス様!こら!」

「いやちょっと今この魔法陣見るので忙し「自分で受けるって言ったからお供してるんです!最後までやってからにしなさい!」…う、うむ…」


渋々と言われた通りに魔法陣の中央に立つ。うーむ。どっかで見たことあるんだよなぁ、この魔法陣。どこだったか。

しかしアノクが怒るので仕方がない。一先ずは試験だ試験。


「えっと、先程の試験で本来なら魔力量、魔力質、そして適性を見るのですが、…あの水晶を壊せている時点で魔力量と魔力の質は莫大かつ良質と判断し、適性を見ます。

貴女は何もせず、そこに立っていてくれれば問題ありません」


よく見れば、可愛らしい顔立ちの試験官だ。なんかこう…町の治療院にいそうな感じの。控えめな…性格の…。……スタイルも。


まじまじと見過ぎたようだ。何故か顔を赤くして始めますと宣言された。怒ったかな?


魔法陣が輝き出し、すぐにおさまった。特に我に変化はなし。…よく見てみれば、我の足元に光が集まっている?それがゆっくりと移動し始めた。陣の溝を這うように、光で再度陣を描くように。


「む、無属性…!」


石板の宝玉が輝いた。色は白。周囲でそれを見ていた者たちがざわめいた。


「大変珍しいですね…!」


なんかよく分からんが、興奮気味の試験官。覚めやらぬまま我の所に駆け寄ろうとするが、それを止める手があった。物静かそうな老人の手だ。


「……まだ、終わっとらんぞ」


その言葉に続いて、もう一つ宝玉が輝き出す。赤、また次、青、緑、と順に宝玉が輝き、最終的に六つの宝玉は全て光を灯した。


周囲の騒然とした様子はもう無く、逆に沈黙だけがその場に横たわっている。え。なんだ!?何だというのだ!


「…ど、」


人間とは此処まで驚きを表現できるのかと目を疑いたくなる程驚いた顔をしている試験官が、どうして全属性の魔力が使えるのだと震えていた。


いやどうしてって。


我、元魔王。全ての属性の魔法が使えるの。

…なんてことを言うわけもなく、アノクにどう言うこと?と目で聞いたが、アノクは頭を抱えて沈み、灼華が可哀想なものを見る目を彼に向けていた。


…出る前にリィに持っていけと言われた胃薬でよければやろうか?

読了ありがとうございます。

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