日時は正確に。あと茶菓子の用意も
お久しぶりです。お読みいただいている皆様、昨年はありがとうございました。今年もちまちま更新していきますので、どうぞよろしくお願いします。
本日の更新は9時、12時、15時、18時、20時…extraを予定してます。
王都のギルマスから呼び出しがかかった。
「まさか、ガドフ以外に私の呼び出しを無視する冒険者がいるとは思わなかった」
「無視はしてないぞ。手紙には、冒険者ギルドに寄った際には、ギルマスに取次を頼むようにと書いてあったもん。我、ここ数日ラギアの屋敷から出てないし」
「…………分かった。今度からは時間と場所を指定する事にしよう」
「うむ。そうしてくれ。我も暇ではなくてな。嫌な予感が予感どころか警鐘を鳴らしているのだ。此処に近づくまでにかなり酷くなって、今では耳鳴りまでする。不快で仕方がない」
ギルマスが少し顔を顰めて我の様子を伺った。
「それは…どこか体調が?」
「ああ。今すぐ惰眠を貪って、半月ほど引きこもっていれば治りそうなのだが」
じゃあ問題ないな、とギルマスは本題に入る事にしたようだ。酷いな。この病気も怪我もしないアリス様が、体調悪いって言ってるのに無視して本題とは。仕方ないから聞くけども。
「隣国のとある伯爵が、失踪中の娘を探しているらしい」
………んんん。腹痛ガ、シテキタナー。
「少し珍しい容姿をしていて、黒髪紅目だそうだ」
あー。アタマガイタイ。これはいかんな。早く料理長にたまご粥を作ってもらい、ルシアと灼華に食べさせてもらって、リィを枕に、猫たちを腹に乗せて寝ないと治らないやつだ。きっと。
「名前はアリステラというらしい」
ラギアが見舞いに飛んできそうだな。職務放棄は後で色々と面倒を引き起こすから、片付けてから来いと軟弱者経由で伝えよう。
「かなり幼い時のものだが姿絵も上層部限定で回ってきた。どこからどう見てもよく知る人物そっくりなんだが」
よし、そうと決まれば早く戻ろうではないか。
「何か申し開きはあるか?アリステラ・アトリシエ伯爵令嬢?」
「我はアリスだ。そんな令嬢知らんし、居たとしてももう死んでいる。居ない人間を探し回っている阿呆に教えてやるといい。あと、我は今から料理長お手製のお粥を食べて引きこもる病人だから。じゃ」
「そうはさせるか」
ギルマスが何やら合図すると、ドアを開けて踏み込んできたギルド職員やら冒険者達が、各窓や出入り口を塞いだ。ギルマスは逃げ道を全て塞いで満足そうである。我は逆に腹立つけど。むうう…。窓は緊急脱出口なのに…!
ふう。……だが、そういう事なら仕方がない。
誰かが言っていた。
扉も窓も無いのなら、出口を作ればいいじゃなぁーい。と。
……誰だっけ?ちょっとゾワッとするから思い出すのはやめておこう。
そういう訳で、
「じゃ!」
我の立っている場所を中心に、くるっと床を切り抜いて見事脱出!(因みにギルマスの部屋の真下はギルドの従業員休憩室だった。失礼した。ちゃんと降りてから床はいつもの魔法で直したから許して欲しい)
落下の際にチラッと見えたギルマスは、ご丁寧に魔法封じを部屋全体にかけていたにも関わらず、我に魔法を使われたことや逃げられた事により、驚愕通り越して顔色悪かった。たいへんだなぁ。悪い夢でも見たのだろうか。
「今日のお昼はなんだろなー」
とりあえず、そんな夢よりもお昼の献立が気になるのでさっさと戻るとしよう。
……まあ、当然また呼び出された。
「呼び出すに決まってるだろ。依頼だしな」
「我の所在も既にバラしたと?」
「いや、それはしてない。…未成年の貴族令嬢が失踪など、普通はありえない。何か特殊な事情があっての事だろう。例えば、身近な誰か…血の繋がっている筈の家族すら所在を知らないという事は家族の誰かに命を狙われている…とか。
下手すればSランク冒険者を失う事になる。先日の一件で同盟国だと思っていた国が一気にキナ臭くなってきた今、その依頼達成で得られる利益とアリスという冒険者を失う事による損失は比較対象にすらならない。どう考えても後者が重すぎる。
だからまだ捜索中という事にして、生存不明・所在不明で通しているが、…そろそろ限界だ。いくら口止めしても下位の冒険者やらが端金でお前の情報をペラペラと話すだろう」
だから事情を説明してほしい。らしい。もし命に関わるなら、我が冒険者であり、ギルドに所属し、最高戦力の1つである以上、庇護する責務が冒険者ギルドにはある。と堂々とギルマスは言った。
おぉ…。我は少しだけ感動したぞ!そうとも!我のような可憐で非力な令嬢が、あんな外に出ればすぐに魔物に食われそうな簡素な装備で歩いていたのには理由があるとも!
「毒殺されかけたし、好き勝手生きたいから父親公認で死んだ事にして家から出ただけだぞ?」
大した理由ではなくて残念だったな!と笑ってやれば、いや大した理由だろ。と冷静に突っ込まれた。
「……そこまでどうでもよさそうにされると、本当に殺されかけたのかと疑いたくなるが、…まあいい。わかった。暫く依頼は直接回さないように手続きをとる。王都から離れて身を隠していろ…といっても、家がないか…」
緊急事態、人命優先、宿がある町には大抵冒険者が常駐している…とか、ぶつぶつとギルマスは我の身の安全確保の為に、"見つからない"、"安全"、"見つかったとしても手を出せない"という3点で場所を絞り込もうとしているが、ラギアの屋敷ってその点で言えば最高の待機場所なんだがな。
ほら、先ず招待を受けなければ辿り着けない屋敷、招かれたとしても許可がなければ建物内で永遠迷い続ける事になるし、何より我にたどり着く前に料理長に捕まり吊るされるか、ラギアに魔法実験に使われる。
…まあ、あまり居候し続けてなし崩しに住む事になるのは嫌だから、そろそろ引っ越ししようとは思っていた。いい機会かもしれない。試運転してみたかったしな。
許可が必要とはいえ、緊急時。
「……家自体は持ってるぞ」
多少の事は見逃すくらいの度量、王は持っているだろう?
読了ありがとうございました。




