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年貢を納めさせに友達が来た




Sランク冒険者の証明書(身分証の勲章欄にプラチナ製の星型の宝石が埋め込まれただけ)が届いた。

エディンの冒険者ギルドにてそれを受け取った我に対し、ギルマスが、「そういうわけでさっさと王都行け」と言うので、我らはまた王都へと向かう事となった。


「折角とんぼ返りしたのだぞ!?」

「おう。それは分かってるし感謝もしてる。けどさっさと王都に行け。王都のギルマスが首を長くしてお前を待ってる」


料理長の妨害(美味しいご飯)により、まだ跳ね橋亭の新メニューコンプしてないのに。それに料理長はいってたぞ、腹黒と話聞かない系は好き勝手やるからペースに乗ってやる必要は無い。と。


だから我は全力で面倒と示してみせた。具体的には机の上に上半身をべとりと倒して見せる事で。


「ええ~?」

「不満そうにしてもダメだ!催促の手紙がもう何通も届いてるんだぞ!"将軍"もなんとか言ってください!」


ばん、と音を立ててギルマスは数枚の書簡を机に置いた。結構おこみたい。でも意味ないぞ。


「アリス様の意志が優先です。あの腹黒は別に待たせればいい。そもそも昇格とて、アリス様のご意志ではないからな」


こっちには最強のセ○ムがあるのだからな!


打つ手なし!

ギルマスが悔しそうである。愉しい。


こんな感じで数日粘り、時にミランダ嬢始めエディンの綺麗所に構ってもらい、嫉妬したルシアが出てきて両側から美女に取り合いをされるというシチュを楽しみ、時にリィや猫達(そういや名前つけなくちゃ)と戯れ、時に我の下僕を名乗り出る冒険者が出て来ては料理長により完全ブロックされと楽しくやり過ごしていた訳なのだが、とうとう年貢の納め時というやつがきた。


「あーりっすちゃーん!」


その日も回収場にとれたての"食品"を納品しに行こうとしたところで、我の名前を叫ぶ勢いで呼びつつギルドに騒がしくそいつは入ってきた。


「マリム」

「そうそう!アリスちゃんのオトモダチのマリムだよぉー!」


来ちゃった!とマリムは無邪気に笑った。




「で?何できたの」

「友だちなのに何でそんなにドライなの…?アリスちゃんに会うために決まってるでしょお?

ギルマスがね迎えに行けって。"将軍"は呼び出しを完全無視ししてるから、引きずってでも2人を連れてこいって!」


だから来たの~。途中のおやつ代ももらった~と上機嫌である。…我が言っていい事なのか分からんが、それでいいのか、Sランク冒険者。


「呼び出し無視?…そうなの?料理長」

「さて。何のことだか。アリス様にご足労いただくならまともな招待状くらい用意すべきですがそんなものは送られてきておりません。呼び出し無視ではありません」


料理長が違うというなら違うのだろう。


『何というか、アリス様は料理長様の言うことを盲目的に信じすぎてはないかと…』

「だよねぇ…」


ルシアの言葉にマリムが同意した。いつの間に仲良くなったのだ?


『系統が被らないうちは仲良くしておいた方が役に立ちそうだと思いましたの』

「とりあえず敵意を見せない方が、ボロを出すかなって」


仲良くない上どちらもロクでもなかった。…似た者同士、ある意味仲良しか…?


『そんなコトはさて置き、行くノかしら?』

「うむ。迎えにまで来られては仕方ないだろう」

「そうだよ!絶対に来てもらうから!ボクをカエラの店に連れて行く約束でしょ!?……まさかと思うけど、アリスちゃん、忘れて…「ないないない」…だよね!」


忘れてない。忘れてないとも。我、女性との約束だけは忘れないもん。


『…本当カシラ?』

「本当だとも」


最近はなんだか疑われてばかりで悲しくなってきた。どうしてみんな、こんなに可愛い少女を疑うというのか!

こんな世界間違っている!


『……小劇場、終わっタ?』

「…うむ」

『はい、じゃあ大人しく王都へ行く準備ネ』

「うむ」


料理長に明日出る事を伝えると、御心のままにと短く答えて早速準備に出た。…マリムは興味深そうにこちらを…というか、リィを見ている。


『何ヨ小娘』

「どうしたのだマリム」

「いや…。アリスちゃん、従魔と超仲良しなんだね。…人型取れるやつじゃなくて、本当よかった。まあボクとはタイプが被らなそうだからいいけど」


被ってたら闇討ちして食べちゃうところだった。と、綺麗な笑顔でいうものだから、リィがドン引きしていた。


『私だってアリス様と仲良しですわ!』


ルシアが忘れないで!と言わんばかりに我に抱きついて主張する。主張せんでも忘れとらんわ。


『リィーリィーさんが人型になったら、私勝てる気がしませんわ。ですからそのままのリィーリィーさんでいてくださいね?』

『何この威圧感ッ!』

「まあ、落ち着けルシア」

「そうだよ落ち着きなよぉ」


ルシアがリィを両手で掴んで念を送ってる。必死過ぎるだろう!ああ、リィが身を捩って逃げようと……こらマリム!どさくさに紛れてリィの毛並みを堪能するな!さっきブラッシングしたばかりなのに!


リィが助けを求めてくるので応じるが後でブラッシング直後に撫で回す事を決意する。というか、綺麗にしたばかりなのを乱されるのが嫌とはいえ飼い主にすら触らせないのは手厳しすぎるだろう。改善を要求したい。


『イイ女はそう簡単にお触りなんてさせないワ!』


と、後ほどリィは我に撫で回されながら叫んだ(というか、吠えた)。


読了ありがとうございます。

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