趣味の悪い知り合いが尽きないようだった
魔獣暴走から数日、我はエディンの冒険者ギルドにて、ギルマスと対峙していた。
「何であの首輪が原因だと思った」
「あんな気持ちの悪い呪いがかかってて気づかないわけが無いだろう」
「普通は気付かねえ」
「そうか」
我が普通として見てもらえないのはもう知ってる。まったく!こんなに可愛いアリスちゃんを何だと思っているのだ!
「エルサも気付けなかった程の高度な隠蔽魔法がかかってた。それに気付けるなんておかしいだろ」
「ほう?まるで我が全て知っていたかのような口ぶりだな?」
エルサは生まれつき魔眼を持っているらしい。先祖の誰かが魔族の血をひいてたんだろうな。その為虚偽判定や鑑定なども行なっているとのこと。そのエルサが見抜けなかった魔法やら呪いを見抜いた我が疑わしいらしい。
ギルマスはやけに据わった目で我を見ている。我を疑うのはやめといた方が身の為だと思うのだが。
「アリス様にケンカを売っているのなら、私が買いますが?」
ほら、余りにも不躾だから最強のセ○ムが発動してしまうではないか。セ○ムが何か知らんけど。
ギルマスは非常にやりにくそうにしている。
「……今回の事で、お前の事が気に入らない冒険者やら、他の支部のギルマス達からの問い合わせが酷いことになってる。どこから見てたのか知らねえが…、お前が空から落ちて来て魔獣達を制圧した一部始終を知ってやがった。
冒険者についてはデマとホラばかりだから黙らすが、ギルマス達からはお前の経歴について説明しろだとよ」
それはそれは。誤魔化しがきかないから困っているのか。うむうむ。いいぞ、もっと困れ。
「誰かが記録玉でも持ってたのではないのか?で、それが共有されてしまった」
「……それについては私の失態かもしれません。アリス様」
ん?料理長?
「どこぞの怠惰な冒険者が、どこぞの性悪から預かった記録水晶を私に取り付けていたようです」
料理長が語るに、どうやら我の実力が見たくて勝手に覗き見をする趣味の悪い輩が知り合いにいるらしい。縁切りをお勧めしたいが、料理長は多分からみつかれているのだろう。あの商人といい、ブティックオーナーといい、曲者に好かれる料理長だ。そんな料理長でも我好きだぞ!尊敬してるぞ!
……誰か我も曲者っていった?
「…まあ、あの場には冒険者も多数いた。料理長に記録玉が付けられていなくとも、口止めや事実隠匿その他諸々出来るものでは無いだろう。気にしないで」
料理長がお礼を述べて我に跪いて頭を下げた。アリス様は本当にお心が広い、と。
……心なしか、前より料理長から敬意が感じられるのだが。どうしよう。このまま元配下のようになっていったら。心から隷属するのやめて欲しいんだが。飼い主になるのって重いよな。
「ですが…ご安心ください。アリス様が煩わしく思うこともじきに無くなります」
と、いうと?
「あの性悪は性悪でも、仕事のできる性悪ですから」
答えになってない。と、ギルマスが呟いたが、料理長の言葉通り、世間が騒がしかったのは本当に少しの間だけだった。
世間には正式に我がSランク冒険者になる事が発表され、各支部のギルマス達には王都のギルマスから直接説明があり我が魔導国の血を引いている事がそれとなく伝えられ、口さがない冒険者達については頼んでないのだが何者かによって速やかに黙らせられたという。
「料理長、私の悪口言った冒険者が次々闇討ちにあってるらしいんだけど、何か知らない?」
「いいえ?私は何も」
というので、本当に料理長は知らないらしい。
(エディンにいた冒険者については、久しぶりに利用されていた5番の小部屋に呼び出され、そこから出て来てからは静かになった。何があったのだろうか。
出てきて我を目にした何人かの1人の第一声がこれだ。
「アリスさん!今まですみませんでした!これからは心を入れ替えてアリスさんみたいな弱きを助ける優しい冒険者を目指します!」
……ぞわっとした。
他も似たようなもので、我はあの小部屋について誰かに問うのはやめようと誓った。人格から矯正されてるではないか。怖。)
ギルマスは世間の噂が落ち着いてきた頃にまた我を呼び出して、冒頭と同じ事を聞いた。やけにこだわるな。
この場にいるのはギルマス、エルサ、料理長、リィとルシアのみ。(狐と猫は宿で留守番中)
……うむ。身内はさておきギルマスとエルサについては信頼、まではしていないが、信用はできる。
言えるところは言っておいても良いだろう。必要なら料理長が補完もしくは誤魔化すだろう。
「エルサ殿がどれだけ希少な眼を持っているのか私は知らないが、"その程度"で私が測れると思ったなら大間違いだ。
…折角の機会だ。本来素性を探らないのが冒険者の暗黙の了解だろうが、私の事を教えてやろう。よく聴いて、そしてその上で尋ねるのなら答えてやる」
ただし、理解が出来ればだが。
読了ありがとうございます。




