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理解の許容範囲を超えたらしかった




「誘拐事件の主犯と実行犯達の逮捕やら逮捕協力、集団魔術師の拘束、子供達の救出・治療…なるほどな。

対魔物戦闘は個別も集団も実力証明済、対人間集団についてもクリア…。

魔法使いの集団相手でも問題なく制圧・拘束・連行を単独でこなせる事が今回証明された。

少し前に討伐した蛇はAランク冒険者が何人かやられてる奴で危険度は言わずもがな。


Aランクは間違いないと思っていたが、まさか、Sランクの"炎槍"と"悪食"、"影法師"が揃って推薦とは…知り合いだったのか?」


道中の事を説明している間にエルサ殿がお茶と菓子を用意してくれたので、ギルマスが状況を飲み込んでいる間に手をつけていた我は、美味いお茶とルシアに詰め込まれる菓子に夢中で聞いていなかった。


「……菓子取り上げられたくないなら答えろよ?Sランク冒険者とは、知り合いなのか?」

「知らん」


即答した。そんな奴ら知らんわ。唯一知り合いがいるとするなら、料理長だけである。


「"将軍"しか知らんぞ」

「…その"将軍"はお前をSランクに上げる事に反対していたらしいが?」


まあ当然だろうな。料理長、我の心配してるだろうし。出来るだけ危険から遠ざけたいのだろうし。そこは想定内だ。料理長は身内には物凄く甘いからな。懐に入れて大事に育てすぎて駄目にするタイプだから。元配下と一緒!

ともすれば、


「"将軍"が断固反対したから、面白がって他のSランク冒険者達が推薦したのではないか?」


他人が大切に大切に目につかないようにしてるものを、使える手を使って引き摺り出すのはそれなりに楽しいからな。


ギルマスはそんな訳ねえだろと言いたげな顔をするが、それ以外に思い当たりはないぞ。そして思わぬところで援護が入った。


「恥ずかしながら、その仮説に相違ありません」


失礼、と料理長が三階の窓から入ってきた。うんうん。我の思った通り。ギルマスが仰天している。


「お待たせ致しました、アリス様。大変遅くなりまして申し訳ございません」


ところで私が居ない間に、どこのどの料理を食べましたか?と、至極真面目に料理長が質問してきた。


我は料理長が人間としては驚異のスピードである3日ほどで此処に辿り着いた事に内心拍手を送りながら、料理長と分かれた日の昼飯から順番に実物を出して答えていく。


だって、ギルマス色んな意味で仰天して固まってるんだもん。三階から突如"将軍"が侵入してきたり、その"将軍"が我に傅いたりすれば当然かもしれないが。




「……かしこまりました。本日から数日間は利用する食材の割合を変更致しますね。デザートも……いえ、…はい。わかりました。デザートについては少し考えます」

「よろしくお願いします、料理長」


かしこまりました。と、料理長は仕方なく折れてくれた。甘い、甘いぞ料理長。


(因みにそれから暫くデザートは野菜のジェラートだった。…美味しいけど、…うん…)


話も終わって、料理長が我のお茶を入れ直したあたりで漸くギルマスが回復。料理長との関係を根掘り葉掘り聞かれたが、料理長が


「私がお仕えするべき唯一の主人です」


との一点張りをした。言ったのは料理長なのに、ギルマスには我が何かしたかのような反応をされた。改善を要求したいのだが?


料理長について色々言われていたのだが、いつの間にか、元の大きさで我の背もたれクッション代わりに寝そべっているリィや、我の膝に頭を乗せて座り寛いでいるルシアの事についても聞かれた。


「そのデカい狼は一体…!?」

「狼ではない。フェンリルだ。我の従魔だ。何度かみているだろう」

「フェンリル…!?あの魔獣フェンリル!?希少種の?!」

「こっちはルシア。精霊らしい」

「精霊!?伝説の!?」

『はじめまして。アリス様の僕精霊のルシアと申しますわ。以後お見知りおかなくて結構ですわ』

「喋った…!?」

「話ができるに決まっているだろう。リィもお喋りだし」

『言ってる事が分かっているのはご主人だけヨ』

「それもそうか」


「ち、ちょっと、ちょっと待て!もう俺の理解力が限界だ!これ以上混乱させんな!」


やめろぉおお!と、我は聞かれたから答えただけなのに、ギルマスが耳を押さえて背を向けた。


うむ。仕方あるまい。


「ギルマスが正常に戻るまで、お茶でも飲んで待つか」

「和茶(*)ですね。茶菓子にいい店を知っていますので、仕入れてまいります。少々お待ちください」

「うん。よろしく、料理長」


すぐ戻りますと料理長は来た時同様ひらりと窓から出て行った。


その日は結局ギルマスはポンコツだったので、日を改めて話をする事になった。部屋を出ていて状況がわからないエルサ殿にもギルマスとした会話をしておいた。ギルマス程では無いにしろ、その場で飲み込むにはヘビーだったらしく、エルサ殿も処理落ちしかけていたがまあ、明日には落ち着く事だろう。何せエルサ殿はクールビューティーな秘書系サブマスだしな。



暫くは以前も世話になっていたユーグの跳ね橋を宿にする事を決めている我は料理長共に向かっている。

料理長も跳ね橋の料理に関しては信頼しているらしく、王都にいた時のように宿の変更はしなくて済んだ。



「それにしても、ギルマスは今日何の為に我を呼び出したのやら」

「…恐らくですが、」


そう料理長が切り出した話により、我は大仕事をする羽目になった。




*和茶: 緑茶的なもの

読了ありがとうございます。

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