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ハンカチなんて貸してやらない



「ずびばぜんでじだ……!」


我は今、バイト先の厨房の椅子に腰掛けている。そして我の視界のかなり低い場所に店長はいる。…いるというより、床に顔面擦り付けて全身を使って謝らせてる。


大丈夫。床は我が事前に、舌で舐めても問題ないほどにピッカピカにしてある。

我も優しくなったものだ…。


「売り上げ上がらなきゃ店閉めるしか無くなる。そうなれば困るのは自分達だとは思わんのか」


大の大人がガチ泣きしながらそうですごめんなさいとダミダミした声で言う。一先ず泣きやめ!見苦しい!


「我、可愛い女の子以外にハンカチなんて貸さないんだからねッ!」

「ありがとうございます…」


ハンカチは貸さないけどタオルはあげた。


『どういうツンデレよ…』


リィのツッコミは聞かないことにした。



ここの料理の味がイマイチな原因に思い当たり、元々あの店の常連という人に話を聞いたところ、あの店の料理の味が悪くなったのは、我があの店に行く直前の事らしい。


場所が場所なだけに他の店より目立たねば儲けにならない。そこで元々人気の高かったウェイトレスの服を新調したところ、デザイン料が思ったよりもかかってしまい、経費節減の一端として、調味料をケチり出したらしい。

ケチるべきはそこではない。


「今すぐ味付け元に戻せ。

売り上げが上がっている今戻して胃袋掴めなければ、常連客の足すら遠のくぞ」


そうなればどうなるかは分かるな?と割と本気で我は怒った。だってそうだろう?

この料理人、料理人のくせして、食材に対して不義理を働いたも同然なのだ。


食事とは、命をいただく事そのもの。

食材の命に、提供者に感謝して自らの生きる糧とする事。料理人の食材への礼は、自身の持てる全てで、食材を引き立てることに他ならない。だというのに、こいつは、直ぐに回収できる出費の為に、少なくとも此処数日、食材をそういう意味で無駄にした。台無しにした。



その他にも、この店潰れたらウェイトレス達はどうなる?……あ、美人だから再就職は割とすぐだな。

折角作った制服……も、他の有名店が買取とかして残りそうだな。


……兎に角食材に対してかなり失礼な事をした時点でアウト。いかに素晴らしいレシピを持っていようがアウト。


「アイスに使う塩もケチりやがって。許すまじ」


1gの不足は料理を99%台無しにすると思え!


「さあ、この事実を商業ギルドに報告されて営業停止命令出されたくなければ、今すぐに味付けを戻し、」


あの制服を作った店を教えるのだ。


デザイン料をかなり取られたと言ったが、今の我の財力なら10着は作れる。ワンピースタイプがいい。コートも欲しい。必要無いけどグローブも欲しい。だって指輪とかで飾るには我まだ幼いし。いや、待てよ?あえて此処はペインティングも有りか?


『…アー、ご主人?考え込んでるトコ悪いんだけど、その格好で足を組むのはアウトダワ』


リィが足元を見ているので視線を下ろせば、床に這いつくばった店長が、恐らく紹介状と思われるものとデザイン者の名刺を捧げていた。

…捧げる事により頭を上げて、堂々我のスカートの中身を覗いていた。


「……」

「アベシッ!」


くるくる回る椅子の特性を活かして、店長の方に身体を向けるついでに組んだ足を振り抜いた。


『……まあ、一発目だし、覗いた方が悪いワ。振り向いた先にいた店長が悪いシ、裁判になっテモ勝てるワね』


勢いよく飛んでいく店長。背中を壁にぶつけた。


「ヘグゥッ?!」


痛いはずなのだが、心なしか幸せそうな気がするのは何故だろうか。


びたん、と床に顔面から落ちる店長。

頭を上げようとしたので我は直ぐ様椅子から降りて、紹介状を回収する。


我、基本的には下着の上にパニエに隠れるミニ丈のパンツ重ねてるから見られても気にしないもんね!

今回は、反省すべき所で女性のスカートの中を覗くという不埒な不届き者に対して、正当防衛しただけだ!どすけべ!


……あれ?そう言えば今日、バイトで着替えるからパンツ重ねてなかった気が…。


……………ゆるすまじ。





「はふんっ…!」


聞きたい事を聞くだけ聞いて、最後に最早土下座を通り越して土下寝になった店長の背中を踏みつけてからバイトを辞めた。


すぐに着替えた。我が改良してズボンタイプになったボリューム満点のパニエによって、最早我に死角はない。


無駄になってしまった食材たちの供養とまではいかないので少々不満だったが、制服を作った人間の所在が割れたのでよしとしよう。


『ご機嫌ネェ…』

「まあな。あの店長、塩をケチっていたから味も食感もイマイチだったが、分量をきちんと守ればあのアイスを我でも作れる。これ以上に喜ばしい事はあるまい」


…だが、もう一発位蹴ってもバチは当たらなかったかもしれん。思い出したデザートの恨み。

しかしリィは、十分だという。では我慢しよう。


「エエ、十分ヨ…。…ご褒美は」

「?」


なんだかぞわぞわするから考えるのはもうやめにしようと思う。


そしてそんな事より、服だ服。この可愛らしい制服を作り上げた人物。


「どんな人物か、楽しみだな!」

『エエそうね…。急に行って会ってくれるかは甚だ疑問だケド……』

「大丈夫だろう。あんな服を作る人間の所に、こんなにもあの服が似合いすぎる人間が行くのだから」




読了ありがとうございます。

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