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物凄い人物が立ち寄っていたらしい



将軍という聞き慣れない呼称と、我もよくやるクズ処理方法に、見知らぬ人間に対して親近感が湧いた。

というかそれは普通なのか?我がやったらどうせあり得ないだろ、みたいな顔するくせに!!贔屓!ダメ!ズルい!!我にもやって!


「将軍というのは?」

「ん?ああ!お前は知らねえか」


ギルマスが嬉々として説明を始めた。

それ曰く、伝説のSランク冒険者。

とある国の騎士団長から冒険者に転向し数多の怪物を薙ぎ倒し、窮地に立たされた人々を救った。数も癖もある冒険者達を見事に総括し、大規模な作戦を何度も成功に導いた事から"将軍"という2つ名を得たという。

ある日パッタリと姿を見せなくなったが、最近は神出鬼没に現れるという。本人はもう冒険者はやめたと言っているが、ギルドや国はそれを認めていないらしい。


おお…!物凄い人物がいたものだな!


「流行病が蔓延した時、自分が必要だからだと謙遜しつつ場所が場所なせいで行けなかった深海迷宮にのみ存在する、毒物を無効にする植物を単独で採ってきて無償で提供してくれたり、

野営の時に物凄く美味い料理も作って、長期の監視任務や護衛任務の際は干し肉と栄養丸、またはポーションっていう常識を覆したり、

他にも色々あるが……兎に角、大物だ」


もし会っても喧嘩売るんじゃねえぞ。と釘を刺されたが、我は自分で喧嘩を売りにいったことはない。売られた時に買ってるだけだ。

それにその程度なら、料理長もやってたもん。むしろ料理長の方が凄いもん。


「…んー、まあ、とりあえずその将軍がガルボデラグを追い払った為、もう安心という事で合っているか?」

「ああ。折角だし飯に誘ったんだが、かなり急ぎの用事があるみたいですぐ王都に向かっちまったよ。もしかしたら何処かで会うかもしれねえから、その時は一応礼を言っておけよ?」

「うむー。覚えてたら」


王都は物も人も揃う場所。情報を集めるには冒険者が殆どのエディンより、商人、貴族、冒険者、その他諸々清濁併せ呑む王都の方が都合が良いのだろうな。




「さて、暇だな」

「そうネェ。お土産も配り終わっちゃったワケじゃナイ?何するの?」

「何もしようがないだろう?エディンで浪費するにも限界があるのだし」


あの後エルサ殿から所持金総額を教えてもらい(驚くべき事に、羽振りのいいBランク冒険者の平均年収は超えているらしい)、ギルドを出てリタ殿始め世話になっている女性方や店にお土産(海産物とかアクセサリー類)を配り、…何もする事無くなった。


「いつもなら暇になったら店々の手伝いに行く所だが、それやると皆後から事後依頼申請して完了扱いにされてしまうからなぁ…」

『びっくりヨね。まさか、今までの道端で見つけたお手伝い程度の内容すら依頼として届けられてたなんテ』

「まったくだ」


道中の石ころ拾いや、積み木積み石遊びすら依頼として事後承認されているとは思わなんだ。


『…石ころ拾いって、土砂崩れの岩で塞がった道をお孫さんの家に行くって言ったリタさん送るついでに開通させた時の事ヨネ?』

「うむ」

「積み木積み石って、氾濫した川の整備で壊れた橋を直したり、バリケード作り直した時の事かしラ?』

「うむ。大きい工作、我楽しかった』

『言っておくケド、それは事後承認されるに値する功績ヨ』


まじか。リィ、詳しいな!

そしてどうやら思ったよりも功績になる事案は多いらしい。そのうち宿の子供達と遊んでいただけで達成依頼とみなされたりしないだろうか。他の冒険者達が可哀想というか、それが功績として記録に残ったら、冒険者としてかなり心配されそうなんだが?


「うーむ。もう依頼の話はいい。それより我、王都に行ってみたい」


ふと思い出したのだ。我がリィと出会った時の事を。あの時、我は冷たくて甘いお菓子やら、チーズを求めて牧場に立ち寄ったというのに、結局得られたのは干し肉と野菜だけだった…。

そろそろ甘いお菓子食べたい。アイスたべたい。


『(甘いものなら)マフェル残ってるんじゃないノ?』

「それはそれ、これはこれ」


マフェルはマフェル。アイスはアイス。


という訳で、特に使う予定は無い地図を手に入れ、数日分の食料を収納し、我とリィはエディンを飛び出した。


宿の子供達や服屋のシル嬢達には、食料収集の最中に見つかり、王都に向かう事を告げると今生の別れがごとく引き留められた。…アイス食べたら戻る予定なのだが。


しかしまあ、ここまで懐かれて悪い気はしない。次のお土産は王都限定のスイーツにしよう。


『まあ、ご主人がいいならそれで良いんだケド、…気をつけた方が良さそうネ』

「…ああ、ミランダ嬢のことか?」


酒場のクールビューティー、ミランダ嬢にも会ったのだが、彼女からも王都に行かないでと色仕掛けされた。


我とミランダ嬢では身長差がかなりある。具体的には黄色い電気パチパチネズミさんの身長程の差がある。よって、普段はミランダ嬢が我を見下ろすことはあっても、我がミランダ嬢を見下げることはない。


よっていつもは女児であることも利用し、下からミランダ嬢を見上げる形で合法的に色々なアングルを楽しんでいた。

しかし!

ミランダ嬢はまだ本気を見せていなかっただけらしい。


今回は我をちょっと高めのカウンターに座らせ、我のお腹に腕を回して抱きついて、下から見上げて「行かないで…?」と言った。


「…アレはちょっと予想外だったな」


規格外の、破壊力だった。

デレッデレになってじゃあ行かないと言いかけた我を間一髪正気に戻したのはリィの鋭い一撃だった。まさか容赦なく脳天に爪刺してくるとは思わなかった。


『ソレじゃないワよ。…いやアレに関しても色々言いたいことはあるけど』

「あ。そうだそうだ。リィよ。流石にあの一撃は痛かった。我じゃなきゃ出血多量でミランダ嬢まで真っ赤になってたぞ」


まあ服が台無しになっても、魔法で綺麗にしてついでにミランダ嬢からちょっとショッキングな記憶も消してしまえば問題ないから良いのだけれど。


『いや、そんなケロっとして言われてモ』


我の回復力舐めんなよ。


「我を刺殺したいなら、せめて瞬時に身体中全ての急所を抉るくらいしてもらいたいものだな」

『どうしましょウ。知れば知る度ご主人が常識的な人間の状態から乖離してるようにしか思えないワ。料理長に解毒ついでにどこまで改造されたのヨ……!』


解毒?……ああ、あったな。そんな作り話も。


「まあそんな事はさて置き、子供を狙った誘拐事件というのは本当だろうか?」


読了ありがとうございます。

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