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筋肉自体はいい筋肉だった




【王都の東の小さな村の出身。下に弟4人に妹2人。報酬の半分はその都度仕送り。顔は怖いが年の離れた弟妹が多いことからか子供の面倒見は良く、懐に入れた人間にはなんだかんだで甘い。】


港町の入り口門の手前。大きな岩に座って、我が開いたメモにはそんな豆知識が書かれていた。


我が冒険者登録をする際に脅して来たのは、恐らくその妹弟達と歳が変わらない様に見えたことも大いに関係しているのだろうな。


『ご主人、ソレ。何かしラ?』

「菓子袋に入ってた。余程あの男を信用してやって欲しいようだ」


あの男、と我が見るのは、我の遥か後ろを走っている筋肉。だいぶ息切れしているようだな。


「まあ、別に人間的に嫌いな部類の男ではないのだがな」


初めて会った時も、殺気の類は全くなかったし、恐らくこのメモから考えると、我と妹の姿を重ね、冒険者になり怪我をする可能性が出てくる前に追い出そうとしていただけなのだろうし。我はわざと受け止めたが、脅しの為であって当てる気が無かったのは分かっている。


『所でご主人?あの筋肉といつ会ったワケ?』


そういえば、リィには多分大まかにしか言ってなかった。あの筋肉との出会いの詳細を話せば、リィはやっぱり噛み砕いていい?と敵意を剥き出しにした。うむ。見知らぬ子供達の…見た目はともかく多分子供達にとっては良き兄を永遠に葬り去るのは忍びないと説得した。


それよりも、打たれ強そうだから遊べるだけ遊びたい。マッチョで。


「ほれ急げーい!Cランク冒険者の体力そんなもんかー!」


とりあえず発破をかけてやる事にした。


「て、メェ…!どんだけ、ばく、…爆走、して……!こっちの、み、にも……!なれやッ…!!」


息も絶え絶え汗だくマッチョ。……うええ。残念ながら我が視界によく無いものが写り込んでいる。落ち着け、落ち着くのだ我。料理長も言っていたではないか。どうしても視界に入れたく無いものには、想像という名の目隠しを貼り付け、進路も退路も塞いだ上で一思いに焼くか潰すのが1番だと。


無様にも地面に倒れて疲労を訴えるマッチョに菓子袋に入っていたレジャーシートをかけてと。…無駄に身長があるせいで、脚は出てしまっているがまあいいか。


「えっと、あとは炎魔法で消し炭「何しようとしてんだ!?」え」

『ご主人!待って!ダメよ!?』


消し炭にしようとしていたのだが、と言いかけた所で思い出す。これ、台所に棲む悪魔への対処法だった。間違えた。


「いやうっかり☆」


てへ。すまん、という意味も込めてにっこり笑ってやったのに、何故かドン引かれた。

一体、何がそんなに不満だというのか。


「いや人殺しをやろうとして笑顔とか、しかもうっかりとか怖いだろ…」


3日間、俺は生きてられるのか?と悩み始めたマッチョを他所にリィに説教された。しかし、リィに何か釈明はあるかと聞かれたので、料理長から習った見たく無いものへの対処法と台所の潜伏者の話をしたらあっさり解放された。


『そうネ…。確かに、汗が滴ろうが鍛えた筋肉はイイ筋肉…ケド頭部だけ残念…見たくない気持ちは分かるワ。でも…!このマッチョ、筋肉だけはイイのヨ…!』


マッチョを殺ると残念ながら筋肉も死んでしまうので、筋肉の為にマッチョは生かしてやろうという話でまとまった。


「リィと筋肉の為に今回は大人しく護衛されてやろう。うっかり殺さないように気を付ける。よろしくマッチョ」

「色々癪な言い方だが仕方ねえ。護衛してやるからありがたく思えよアリンコ」

「…うっかり魔獣解体用包丁でブッツンしないよう気をつけるとしよう」

「お前はマウント取らないと死ぬ病か何かにかかってるのか…?」


いや、女性に対してならいくらでも謙るどころか喜んで踏み台になるのだが、輩は踏みつけて砕くものと教わったものだから。勿論料理長に。配下は女性だろうが子供だろうが我の前に平伏させるのが道理だと言ってきかなかった。我フェミニストなのに。


「とりあえず、我を下に見ようとする男は1人残らず足蹴にしてやりたいとは思っている」


我、男に見下されて喜ぶ趣味は持ち合わせておらんからな!

リィも同意見らしい。流石我が相棒!


『アタシみたいなイイ女が、ご主人以外に伏せなんてしないワ!アタシより低く平伏すがいいワ!オホホホホ!!』


……なんかちょっと、違う気がするけど、まあよかろう!それよりも今は今日から2泊分の寝床の方が大事だ!


その後リィはまた我の頭の上に陣取り、門をくぐった。時刻は既に暮れの2ルタ。マッチョの体力が無いせいで…。つつがなく宿を取り、食事も取り、少し早いが、さあ明日に備えて就寝……。しそうになって思い出した。



マフェル食べてない!!



……と、いうわけで。


「迷宮探索と宝石採掘行くぞ」

「今からかよッ!?」


我が寝たと思って酒場に行こうとしていたマッチョを引きずり、マフェルを持って迷宮へと足を伸ばしたのだった。


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