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夏休みファンタジア  作者: 和本明子
42日目 魔女が現れた
3/34

-3-「陽無の森」

   ③


 公園の隅にある森に足を踏み入れたヒカル。


 陽無ひなしと呼ばれる通り、太陽の日差しが木々の葉っぱにさえぎられた森の中は薄暗うすぐらくなっている。

 その為かこの地帯の気温は数度低く、ひんやりとした冷たい空気が流れていた。


 それ以外にも涼しく感じさせている“要素ようそ”があった。


 陽無の森には昔から色んなうわさ伝説でんせつが語られていた。


 死体したいめられているとか。

 落武者おちむしゃのお化けが出るとか。

 一度立ち入ったら出ることは出来なくなるとか。


 などと子供をこわがらせるものばかり。


 それは大人たちが子供たちを森に立ち入らせないための“うそ”なのかもしれないが、小さな森となった今では怖がらせる効力こうりょくうすれさせていた。


 それに今は真昼間まっぴるま。遠目には森の終わり――住宅街が見えている。

 昔のほどの深い森ならいざ知らず、今なら迷うこともない。


 とは言え、この場所独特の雰囲気と先の噂や伝説のこともあり、


「さっさと通りぬけよう」


 と、足早で森を進んでいく。


 ふと、これまでの夏休みの思い出を振り返った。


 おそらく夏休みの半分は友達と遊んでばかり過ごしていた。


 夏休みらしいイベントとして家族旅行かぞくりょこうに出かけたけど、一泊二日の弾丸だんがんトラベルで父の趣味しゅみ城趾しろあと神社じんじゃ仏閣ぶっかく巡りをしただけだった。


 せっかくの夏休みなのだから海外旅行をするくらいの気概きがいがあってもいいくらいなのだと不満が溢れる。

 海外旅行なんてものはヒカルが生まれる前、いわゆる親の新婚旅行しんこんりょこうで“ヨーロッパ”に行ったぐらいだと聞いた。


 親はヒカルを連れて、いつか一緒に行きたいと言ってはいるが、いまだに叶えられてはいない。


 といってもヒカルは海外旅行かいがいりょこうに興味は無かった。

 いや、旅行そのものに興味が無かった。


 神社・仏閣巡りも、古い建物たてものを眺めて、おまいりして、歴史れきし風光明媚ふうこうめいびを見て楽しむのはまだ早い。


 旅行に行くぐらいなら、家でゴロゴロしてゲームをしていた方が楽しい。それかゲームセンターや遊園地ゆうえんちとかに行った方が数倍すうばい楽しかったに違いない。


 旅行よりも八月中旬はちがつちゅうじゅん市外しがいのショッピングセンターにて、ヒカルが遊んでいる『モンスターZOOパニック』(通称、モズパ)というモンスターを集めて戦うゲームに出てくる隠しモンスターの配布はいふイベントが開催かいさいされていた。


 本当はそっちに行きたかったが、先の旅行で行けずじまい。


 隠しモンスターはゲットできなかったのが夏休みの最大の心残りとなった。

 なぜならば、そのモンスターが入手できれば、全モンスターのコンプリート(全種類獲得)できたからだ。


 その後、なんとか手に入れようとしたが、スーパーレアなモンスターをゲット出来た友達が交換こうかんしてくれる訳がない。


 インターネットのカキコミでは、“裏技うらわざ”を使えば、出現しゅつげんさせることが出来るらしかったが、それを行うとゲームデータだけではなく、ゲーム機自体が壊れて、二度とゲームが出来なくなってしまうというものだった。

 流石さすが危険きけん挑戦ちょうせんはできなかった。


 今にして思えば、ゲームをしていた時間を夏休みの宿題についやしていれば間違まちがいなく終わっていたことだろう。


 しかし、子供ヒカルにとって宿題よりも遊ぶ方が優先事項ゆうせんじこうなのだ。


 そもそも小学生にとって夏休みは短すぎるのだ。それに、まだまだ遊び足りなかった。約四十日間、毎日遊び尽くしていたとしても。だからはかなのぞみをつぶやいた。



「時間とかが戻って、もう一度夏休みを過ごせないかな‥‥」

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