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宇宙旅猫

作者: ひよ六

よく晴れた昼下がりに、

縁側で猫が毛づくろいをしていました。

おいしいご飯を食べた後なのでご機嫌です。

顔をごしごし洗い終えた猫は寝転びました。

なんて気持ちが好いのでしょう。


ぽかぽかの陽気にいっぱいのお腹。

気持ちが好すぎた猫はうっかり

地球から転げ落ちてしまいました。


気が付くとそこは宇宙だったのですが、

猫から見た宇宙は人間が知っている宇宙とは

違っていました。


土の地面があって、草木が生えていて、

小川が流れていて、青空が広がっていて、

とても明るい所だったのです。

それらは地球で見た物と似ていながら、

違った物で出来ているようでした。


猫が足元を見ると、

そこには小さな木が生えていました。

小さな木には若葉が二枚着いていて、

一粒ずつ雫が載っています。

片方の雫を覗き込むと、幾つかの島が

浮かんでいるのが見えました。

これが地球なのでしょう。


雫に飛び込めば帰れるだろうと猫は思いました。

しかし、目の前に広がっている宇宙が

猫の旅心をくすぐります。


散歩だけでもしようと決めた猫は

小さな木の根元におしっこをかけた後、

そこを背にして歩き始めました。

すると、大きなひまわりが小さな木の方を

向いて咲いているのが見えました。

あれが太陽なのかも知れません。


ひまわりを横目に歩いていると、

なんだか足取りがとても軽い事に気づきました。

足が地面に着く前に次の足が出てしまうようで、

だんだんと駆け足になってゆきました。

そして全速力になると、体のばねが何処までも

伸び縮みするようでした。


草原を走り続け、小川を飛び越え、

森を駆け抜けると、そこは崖になっていました。

崖の下には海が広がっています。


猫はしまったと思いました。

散歩をしていただけなのに、

どうやら宇宙の果てまで

やって来てしまったようです。


帰ろうとしたその時、海の向こうから

風船が海風に乗って飛んで来ました。

風船から垂れ下がった紐が

ゆらゆら揺れ動いているので、

猫は思わず飛びついてしまいました。


風船は猫を引っ張り上げて空へ昇り始めました。

爪が紐に絡みついて解けません。

風船にぶら下がっていても

まったく疲れを感じなかったので、

猫はこのまま空の旅を楽しむ事にしました。


しばらく昇ってゆくと、猫が居た宇宙は

ちっぽけな島だった事が判りました。

広い海には幾つもの島が浮かんでいて、

島と島の間には虹が架かっていました。

猫が居た島にも虹が架かっていて、

他の島々と繋がっていました。


よく見てみると、沢山の生き物が

虹の上をゆき交っている事が判りました。

その光景を眺めていると、

何故か懐かしい想いが込み上げてくるのでした。


風船はやがて空の終わりに辿り着きました。

気が付くとそこには地面があって、

猫のおしっこの臭いがする

小さな木が足元にありました。

風船はいつの間にか紐が解けていて、

そよ風に吹かれて飛んでゆきました。


小さな木には若葉が二枚着いていて、

一粒ずつ雫が載っています。

片方の雫を覗き込むと、

宇宙の集まりである島々が見えました。

もう片方の雫は見覚えのある地球でした。

そして雫と雫の間に小さな虹が

架かっている事に気づきました。


このような雫が他にも沢山あって、

宇宙の全てが繋がっていたのです。


猫は一緒に暮らしている

人間のおばあちゃんが急に恋しくなって、

地球の雫に飛び込んでゆきました。


そうして猫は縁側で目が覚めました。

宇宙を一巡りする旅をしていたはずですが、

あまり時間が経っていないようです。

あくびをしながら弓なりに伸びをした後、

猫は部屋に入って行って、お裁縫をしている

おばあちゃんの膝の上に乗っかりました。


喉をごろごろ鳴らしながら、

猫はお昼寝の続きをするようでした。

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