85話『逃げる』
猛は頭がすごく痛いと思った。
そして目の前が真っ暗になった。
声がする、
この声は長谷川さんと聖さんか?
も1人の声がしてきた。
この声は知らない
あ、また声がする、これは知ってる、ビレニアの声だ。
なんだか喧嘩でもしているような言い争うのようだ。
一体何があったのだろうか?
とにかく頭が痛い、
ギンギンする、これだけでも死んでしまうのではないかと言いたくなるぐらいだった。
痛いと叫びたかったが
叫ぶことが出来ない、声が出ない、
何かにでもぶつかったのか? でも歩いたりはしていなかったはず。
なら脳血管でも破裂したのかな?
若いのに? 年齢は関係ある?
理由を考えても分からない……
ああ、目の前が明るく
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そして、猛は目が覚めた。
「お、目覚めたようだな」
目の前には本を読んでいる聖がいた。
しかし、そこは宿屋ではなかった。
明らかに外だった。
しかも長谷川とビレニアは地べたでシーツを引いて寝ていた。
訳が分からずに猛はあたりを見渡した。
すると近くに最初に通った町の入り口が見える。
知らない間に町から出ていたようだ
「え、どうして出たの? もう少しいるんじゃないの?」
猛は訳が分からずに聖に聞いた。
すると聖は
「まあ、お前が酒瓶で殴られて死にかけていたってことも理由だけど、後そこにいる長谷川がお前を殴ったオッサンを半殺しにしたことかな?」
「! え! 俺が叩かれたこともびっくりだけど半殺しにしたの?」
「ああ! あれはスッキリした! 正直良くやったと思ったよ」
と聖はニヤニヤ笑いながら言った。
それを聞いて猛は
「ええ~、俺の事で怒らなくてもいいのに、俺って囚人でしょう? だったらこういうことをされてもおかしくないんじゃあ? 聖がいったように俺たちみたいな前科者に優しい世界なんてないんだから命を無慈悲に狩られても仕方ない気がするんだけど?」
と言った。
それを聞いて聖は
(まずいな、猛の思想価値観がこうまでも歪んでしまったか……別にそこまでのことを考えるようにはしてないんだけどな……)
とさすがに責任を感じた。
そして、
「あのな、猛、いくら犯罪者だからってそいつの命をいきなり奪ってもいいってことはないんだよ? あのおっさんは警察でもなければ死刑の執行人でもないんだからさあ、そんな考え方をしない方が良いよ、囚人でも自分の命を粗末にしない方が良いよ」
と言った。
猛は
「そっそうなの? ごめん、よくわかんなかったから、これからは気を付けるよ」
と言った。
聖は
(少しこの子の心は壊れかけてるのかもしれないなあ、まあ私が作った制度とはいえ、あんな檻の中じゃ壊れてもおかしくはんあいか……)
と感じた。
そして、
「まあ事の顛末を詳しく言うと……」
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「罪人が何言い訳してんだ! お前らみたいなのに人権なんてもうねえんだよ!!」
とオッサンは言った。
それを聞いて長谷川は
「何馬鹿なこと言ってんだ! 確かに罪人だけどな! お前に裁く権利はないだろうが!」
と言った。
するとオッサンが
「黙れゴミ虫どもが! お前らは俺らに殺される権利はいくらでもあるんだよ! 存在自体が罪なんだ!」
と言い切った。
それを聞いてビレニアは
「あの! さすがにこんなことは良くないと思いますよ! 差別するのは心的に仕方ないのかもしれないけど……だからと言って自分の手で殺そうだなんて!」
と言うと
それを聞いたオッサンは
「てめえも仲間か、ならお前も死ね!」
と言って酒瓶でビレニアに殴り掛かった。
「!!」
「危ない!」
そう言って長谷川はビレニアのところまで走った。
そしてオッサンは酒瓶を振り上げて叩きつけた。
ガシャアアアアアアアアアアアン!!
「ううう!!」
長谷川は鈍い声を出して腕から血を流した。
「!! 長谷川! 何で!」
「女の子に傷をつけるのは良くないんじゃないのか! なあ!!」
と言って長谷川はオッサンの足を殴りつけた。
パアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
オッサンの足は爆ぜてそのまま床に倒れ伏した。
「いてええええええ!! いてええええええええええええええええええ!!」
「貴様! 何をしているんだ!!」
「やべえ!! 長谷川! ビレニア! 猛を抱えて逃げるぞ!」
と言って聖は2人と一緒に町から逃げた。
そして町の外で
「あの! どうして私のことを!」
とビレニアは長谷川に聞いた。
長谷川は
「男は女を守りたくなる生き物だとでも思っておけ」
と言った。
しかし、ビレニアは
「私……それでも罪人の方は……良く思えないのに……」
と複雑そうな顔で言った。
「良いよ別に、お前は罪人に酷い目に逢わされたんだろ? だったら別にそれでいい、トラウマなんてすぐには克服できないんだからな、女のわがままを聞きたくなるのも男の性ってもんだよ」
とだけ言った。
ビレニアは聖に
「私、本当に最低ですね……」
と長谷川の言葉を聞いたものの
やはりそのことに対して気にしていた。
それを聞いて聖は
「ゆっくりでいいんだよ、ゆっくりで、そう思えるだけ、ビレニアは成長してるし克服もし始めているのだからね!」
とイケボで言った。
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「……というわけさ!」
と、聖はイケボで言った。
「……そのイケボいります?」
猛は聖に聞いたら
「いる」
とだけ答えられた。




