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プロローグ3

 勢いを増すD・V・Dコールに渋い顔をするアンナ。


「もぉー、リィザ様まで一緒になって! ハイハイわかりましたよ、脱げばいんでしょ、脱げば」


 D・V・D=脱げの意図を汲めちゃう異世界人ってどうなのよ。なんて気っ風がいいお嬢さんだと、思っていたら俺の真似をして「でーぶいでー」と意味も分からず可愛く小躍りしているリィザの背後へコソコソと回り込み、


「こぉんの小娘がぁーっ! お前が脱げやぁ、りゃあっっ!」


 リィザがオフショルダーなのをいいことに、両肩を掴んだアンナがマイナス90度方向へと力いっぱい引き下ろした。


「きゃぁっ!」


 まだ起伏の高低差が乏しいリィザ平野を一瞬で通過し、インナードレスのような服は、しゃがみ込んだ膝のあたりでかろうじて止まった。

 ぺたんとしたままギャン泣きするリィザを、冷たい目で見下ろし唾棄するアンナ。


「え〜……。やり過ぎじゃねぇの?」


 俺の思い違いでなきゃ、お姫様とその侍女なんだよな。


「どうしました? 勇者様。お口ぽかんとして。チューしちゃいますよ? そう言えば、さっき盛大に拒否りましたよねぇ私のKIL……キッス」


 やっぱ殺る気だったんじゃん! 王子様、永遠に目覚めないタイプじゃん!


「いやいや、主従関係オカシイよね? まぁ俺の知ってる侍女も一様に変だったりするけども」


 それでもクラブ国の侍女さんや侍女姉さんは下地に愛を感じる。


「私がリィザ様を憎くてやっているとでも? さっきの見たでしょ、あなたに会えた事で超浮かれているリィザ様を」


 俺と一緒になってグルグルとアンナの周りを「でーぶいでー」行進してたもんな。


「あんな無邪気にピョンピョン跳ね回ってたらぁ……ホラ、小動物とかキュッてしたくなっちゃいますでしょ?」


 ますでしょ? って俺に同意を求められてもなぁ。「キュッ」の意味するところに行き違いがないことを祈るばかりだよ。


「リィザ様の教育は私に一任されていますので、気にしないでください。城内では上手くやってますから」


 不安しかねぇよ。でもここまでのリィザの態度を見るに険悪な関係ではなさそうだ。むしろ姉妹のように見えなくもない。


「リィザ様はこの通りチビで、泣き虫で、調子に乗りやすくて……もーゾクゾクしちゃいますよねっ! あなたには渡しませんよ?」


 泣きじゃくるリィザの頭を優しくぽんぽんするアンナ。


「まっすぐ育つ事を切に願うよ……」


 いまだ泣き止まぬリィザをなだめようと、俺も手を伸ばすがアンナに叩かれてしまった。

「がるるるるる」


 第一印象としてこの娘はヤバイ。ちょっと新手のヤンデレ臭がするもの。


「ほらほらリィザ様、泣かないでください。憧れの勇者様があとでケーキを買ってくれるそうですよ」


 初耳だよ。


「ほんとぅ? 勇者さまぁ」


 小さな手の甲で涙を拭い見上げるリィザ。泣き腫らした大きな瞳が潤んで痛々しい。


「うん、いいよ」


 パァッと満面の笑みが広がるリィザ。俺は怨嗟の視線をアンナに向け、懐状況を確認する。まぁケーキひとつでこの笑顔が守れるのなら安いもんか……


 一段落して、ふと思い出す。

 いろいろ圧倒されて忘れていたけど、聞きたい事が山ほどあるんだよなぁ。

 とりあえず右も左も分からない俺は、情報を求めて彼女達に同行し、ロードリア城へ進路をとった。

 途中、王室御用達の豪華なケーキ屋を経由して。


「アンナ、これだけは言わせろ」

「なんでしょうか? 勇者様」

「幼女サイズのケーキをホールでって、バカか」


 アンナがオーダーしたのはリィザの身長と変わらぬ大きさのケーキ1台。

 これから先を考えると、俺の心は財布とは逆に重く沈むのだった。

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