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プロローグ 2

 森の中の拓けたスペースに沸く、質素な露天風呂。時折吹き抜ける風が湯気とともに頬をなでて行く。


「わ、わたくしはロードリア・リーザネットっ、です、勇者さま! リィザとお呼びくださいっ。こ、こっちはじじょのアンナですわっ!」


 なんでこんな舞い上がってるんだ、このコは。無防備なピョン子をメインにキラキラした瞳でスキンシップが激しい……

 もしピョン子がいたらキレるであろうほど存分にぺたぺたするリィザ。その蕩けた表情を生暖かく見守っていたアンナさんが口を開く。


「この子は……リィザ様は姉のローザ様から聞かされた『右手がウサギの勇者』に憧れてるんです。あ、ローザ様というのは、ヤミの帝王に『姫コレ』として捕らわれていたウチお姫様なんです」


 ミツバ姐さんも同様にフィギュアにされ、真夏の炎天下、気合いを入れて挑んだ割には半日で決着がついた対ミケーニャ帝国戦。


「姫コレの犠牲者でしたか。災難だったね」


 救出後100人近いお姫さま達に揉みくちゃにされたのは良い思い出。


「はい。無事に救出されたローザ様は、リィザ様にせがまれ毎晩のように勇者様一行の武勇伝を語っておりました」


 リィザの反応を見るに、話はかなり盛られているご様子。そんなに活躍してないですもん、俺。


「欲しがりなリィザ様がなかなか寝つかないもんで、私がローザ様から聞いた話に冗談半分で豪華な尾ヒレを付けたらこの有様で……いやぁー、純粋無垢って怖いですねぇHAHAHAHA」


 犯人あんたか。


「まぁ、悪いことに都市伝説級にまでに膨れ上がった土産話をリィザ様がお友達に聞かせたところ、ウソつきのレッテルを貼られてしまいましてHAHAHAHA」


 笑ってる場合じゃねーだろ、明らかリィザ様いじめられてんじゃねーか、他人事だなあんた! どんな盛り方したんだか怖くて聞けねぇよ……


「ねぇねぇ、勇者さまぁ! 今日はどんなご用できたの?」


 イヤぁっ、このまっすぐな瞳がいたたまれねぇ!


「さ、さぁ〜……俺に聞かれてもなぁ……」


 なんとなく口にした言葉にひどく悲しげな表情になるリィザ。


「勇者様ともあろう方が小さい子泣かしちゃダメですよぅ」

「な、泣いてないもん!」

「あ、今更ですけど勇者様に確認です。あなた、ホントにローザ様を助けた勇者なんですよね?」

「アンナ、なに言ってるの? 凛々しいお顔に純白のえんび服。右手には輝くエメラルドの縞ウサギ。ちゃんとお話しのとおりだよぉ」

「私にはキュートなお顔にしか見えませんがね。ロードリアが僻地なのをいいことに、勇者様を慕うロリ……可憐なリィザ様を存分にしに来た犯罪し……ニセ者かも知れませんよ?」


 凄い言われよう。


「確かにお姫様達を助け出したけど、俺は『普通の高校生』だし、勇者と言われるほど活躍をした訳じゃないからなぁ……」

「あ、確認とれました。自分で『普通の高校生』と平気で言える痛い方は間違いなく勇者です。ま、本物の縞ウサギと一体化している時点で確定でしたが。ホラ、一応こういうのやっておかないと! リィザ様に何かあった時、わたし職を失っちゃうんでぇHAHAHA」

「リィザ、殴っていいんだぜ?」


 GO! と顎で指示すると痛みが走った。原因を思い返せば、ここへ召喚? された時、最初に目に入ったのは猫の手のように丸めた細い指先と柔らかそうな掌だった。


「そう言えば俺、あんたの掌底でアゴ打ち抜かれたんだったよなぁ!?」

「はぁ。これでもかってくらいキレイに入りましたもんね」

「『はぁ』じゃねーよ、死にかけたんだぞ! リィザの縦ロールみょんみょんやってる場合じゃねんだよ! まずは謝罪を要求する」

「そーだよぉ、アンナ。早く勇者さまにゴメンナサイして」


 またも小さな主に窘められ、アンナはタオルを巻いてアップにしていた黒髪を雑に纏めると、ヤレヤレとばかりに大げさな溜め息をつく。


「なんですか、二人してぇ。リィザ様はどっちの味方なんですか! 不審者から身を挺して護ってあげたというのに」


 状況からすればアンナの行動は正しいのだろう。


「ほらほら、ちゃんとあやまってアンナ」

「そうそう、謝れよな、ほらっ! D・V・D! D・V・D!」


 なにがDVDなんだか自分でもわからないが、そんなニュアンスってことで。

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