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シーズン2 エピローグ

おまたせしました。

シーズン2の最終回です。

 良くも悪くも密度の濃かった夏休みも終わり。

 ヨツバさん、ミツバ姐さん、クロハさんの脳内協議の結果、クロハさんの学力向上が急務と出たようで。


「フーちゃん、褒めて褒めて! 九の段をマスターしたわ」


 年上の女性が屈託のない笑顔で俺の膝と胸に背を預け、九九を唱える。

 二学期が始まってからは夕方の数時間を使って都とクロハさんの二人は、たまにプロディちゃんを交えてラビ庵で勉強会をしていた。

 ツーサイドアップを左右に揺らす彼女は、一の段から始まり九の段まで言い終えると、20センチほど上にある俺の顔を横目で見上げて「撫でて」とばかり首を伸ばしてくる。

 ベースがヨツバさんだけに、整った横顔も、たまに覗く白いうなじにも毎回戸惑ってしまう。


「あーっ! お兄ちゃん、わたしもぉー!」


 プロディちゃんとクロハさんの影響か、妹が日に日にバカっぽ……幼くなって行く気もする。


「ホラホラ、クロハさまぁ! 帰りますにゃっ」


 今日のお迎えは侍女姉さんか。


「嫌よ、今度は私がフーちゃんを撫でるんだから。お尻にあたってるコ・ノぉ、かたぁいヤツをねぇ」


 うん、ヒザだね。


「はいはい。ビッチぶってなんだかんだ杜鷺様を誑かそうとしても、簡単なお使い程度でお釣りごまかされるようじゃ十年早いんですにゃ」

「ソレ、秘密って言ったのに!」


 お姫様なのにお使いさせられてんだ。まぁ、侍女姉さんによる教育の一環なのだろうけど。


「正確なお釣りの計算ができるまで何度でも三時間かけてお使いに行ってもらいますにゃ」


 ルビーナがバイトしている片道三時間のケーキ屋は、新たに雇い入れた「ヤミの帝王」が女性人気を集め、ルビーナを店長とした2号店『ルビーニャ帝国』がオープンしていた。


「オーナーが私のうちは姫さまであろうと容赦なくボリます。えぇ、隙あらばお釣りだって豪快にイきますともですにゃ。10借りてくるくだりでプチパニックに陥るようでは、まだまだ搾取しほーだいですにゃ」


 クラブ国はこの小さなケーキ屋を買収し、こちらの世界での拠点に据えていた。


  ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■


「杜鷺、ちょっといいか?」


 昼休み、担任の先生に呼び止められ、職員室で向かい合うこと数十分。


「……どうも埒があかんな。結局お前、イジメられているのか、それともオレを含めた男子生徒全員にケンカ売ってるのか?」


 事の発端は朝に集めた進路調査票。夏休み前に鳩野さんが『お嫁さん』と記入していたアレ。


「鳩野との事情は彼女からだいたい聞いているが……」


 担任教師のデスク上、申し訳程度に作られたスペースに展開される四枚の進路調査票。


「明らか人数増えてるよな? 霊仙寺、琴宮、兵藤って。三年の担任からコレ見せられて、先生ビックリだわ。ある意味スゲェな、あの兵藤を動かすヤツがいるなんて」


 いや、俺もビックリですよ。もうイジメの線でいきましょう……とは言えない。


「俺も初耳なんですが」


 霊仙寺は分からなくもないが、両先輩、とくに慧依子先輩はどんな心変わりがあったのだろう。


「そうか。まぁ今度全員のご両親を交えて面談するしかねぇか……メンドクセェなぁ……行っていいぞ」


 よくクビにならないな、この人。三十路を目前に控えた無精髭の担任に一礼し、職員室を出る。


「弁当食べる時間ほとんど無いじゃん」


 教室へ戻ると、鳩野さんが直前まで俺の帰りを待っていたようで。


「時間かかりましたね。すみませんがお先に食べ始めちゃいました」

「あぁ、気にしないで。わざわざ待ってなくてもよかったのに」


 今日は霊仙寺が家の用事で休んでいるため、昼食は鳩野さんが対面になっている。


「一体なにがあったのですか?」


 ほうれん草のゴマあえを、ピンクの箸で小さな口へと運ぶ鳩野さん。


「霊仙寺ほか二名の進路調査票の第一志望が、全員『俺のお嫁さん』と記入されたものを突きつけられたよ。壮大なドッキリとしか————」

「ぷふぁっっ!!」


 香ばしいゴマの香りとともに、緑の飛沫が油断していた俺の顔面に降り注ぐ。


「きゃあ、二人とも大丈夫?」


 近くにいた山田さんが呆然とする鳩野さんと俺の間に入って顔や机を拭いてくれる。


「杜鷺くん、わたし学校でこういうプレイはどうかと思うナ」


 頬を赤くした山田さんが俺の耳元でコッソリ囁く。

 なんのプレイだよ。確かに前科あるけど、事故だから。

 多くの疑問と誤解をはらんだ二学期は始まったばかりだ。


だっと! シーズン2 おわり

シーズン3 は2018年の予定です。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++


以下、小ネタ答え合わせです。


2-4

■「はい。むかしミツバ姫様がよつば姫様だった頃、ビイワ湖の南で恐ろしい呪術が蔓延してると噂がありまして……」

●金目教編のアレです。


2-6

■うすら笑いながら、参謀次官とその愛人チックな小芝居をする野良勇者たち。

●ここからCCAをベースにゼータ、ユニコーン風味のネタがスタートします。


2-8

■重冷気剣の竜、『イースト・ドラゴン』て名前だったのか。東?ああ、ダイヤだからか。

●イースト・ドラゴン=東竜、ダイヤジャックです。


3-8

■「もぉ……1回だけだよ? 低空だよ?」

●ゆゆ式のアレです。


■「————気狂い蹴り助のお通りだぁ〜!」

●ピーナツコミック、スヌーピーのアレです。最近の版では「気狂い蹴り助」じゃないようですが。


3-14

■「慧依子先輩、ドリフの次は猫ですか! ホンット、わかりずれぇーなっ!!」

●本編内でも答え合わせしていますが、

粘土=クレイ、磁気球体八つ→磁気八つ=ジキヤッツ=クレージーキャツです。

ヒートショック→等植(木)=植木等です。(ただ、ガチョーンは谷啓さんのギャグなので楓麻がつっこんでます)


4-8

■『ラ・クンパルシータ』

●「河童の三平」のアレです。(掲載誌によって複数バージョンがあります)


5-6

■「……や、屋根の……質は……ラワン!」

●わかりずらいですが、井伏鱒二先生の「屋根の上のサワン」です。左腕とガン(銃)つながりです。


5-5〜9

●『グリズリー・大猪』『コールド・バイソン』『トビー・雁』『ビー・三十蜂』

『プファイファー・ユスリカ』『ゴールデン・リボルバー』『ロケット・らんちゅう』は、それぞれ銃火器+生物です。


6-1

■モンゴウイカ風の魔物、カルイシガニとマタマタガメ風の魔物

●ゲゾラ・ガニメ・カメーバ風の魔物。


6-3

■「意見が合うのは●カ・●ーラだけってね!」

●むかしのCMソングです。


6-7

■「見事なドラゴンロケットなの」

●「らんぽう」の方です。


6-11

■「なぁんだ、小六か」

●カムイ伝のアレです。




10月以降は新人賞へ送る原稿を書くため、シーズン3開始は2018年春頃の予定です。

よろしくお願いいたします。

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