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6-10

「見えちゃうからぁーっ、フウちゃんにパンツ見られちゃうからぁーっ!」


 いやいや、見ませんよ?


「紅音ぇーっ、セクハラだからっ! これセクハラだからっ! いったん外そ?」


 アンタが言うな。

 あえて掛かりに行った感はあったものの、鳩野さんにガッチリ極められたマミさんの身体は、聞いた事もない痛々しい音をたてていた。


「じゃ、楓麻クン。マミちゃん連れて帰るわね」


 笑顔のメリルさんが杖で地面をノックすると、鳩野親子三人を中心に魔法陣が浮きあがり、足もとからゆっくり消えていった。


「なんとか脅威は去ったな……」

「さすが紅音がいると手際がいいの。女王に特化したカウンターテロなの」


 ニュアンス的にわからなくもないですが……


「残るはあと一人なの」


 そうでした。まだクロハさんの件が未解決だ。

 パーティー確認。

 俺、ピョン子、静香、都、慧依子先輩。野良勇者は先輩から継戦不能と判断され、退いてもらった。


「先輩、勝てる気がしません!」


 トリッキーな能力の面子ばかり。タイミングが合えば瞬殺なんだけど。


「琴ちゃん相手ならパワーファイターが欲しいわね」

「侍女妹はどうしたのよ? アイツの姫なのに何やってんの?」


 俺に聞かれてもなぁ。


「ねぇ、お兄ちゃん。侍女さんの「準備整いましたぁ」って、何の準備?」


 妹よ。俺に聞かれてもなぁ、なんだよ。


「網代笠に付けた限定召喚機能で紅音達を呼ぶ算段だったの。でも、先に妹さんの能力が発動したの。結果は同じなの」

「だってさ。有力者に『ここへの直通チケットの配布完了しました』って事だな」


 侍女さんは網代笠を配り歩いていたのか。


「侍女さんはモル鷺君が召喚した方が早いの」

「そんな方法知らないんですが……」

「アンタ、何を聞いていたのよ? その笠使えってコトでしょ」

「お前、冴えてるな」


 ピョン子のくせに。

 侮蔑の思考を読み取ったピョン子に小突かれつつ、さっそく召喚することに。


「コードは『二本シメジ侍女さん』なの」


 言われるまま笠を放ると、地面の魔法陣から網代笠を被った侍女さんがせり上がってきた。


「皆様ご無事ですかぁ?」


 現在、戦力の要である唯一のパワーファイターと合流を果たす。

 この調子でメリルさん達も再召喚したいところだが、おそらく今頃はハート城で親子ゲンカの真っ最中だろう。


「効果は聞いていましたけど、実際に体験するとコレは便利アイテムですねぇ」


 笠を脱ぎ、探求心を抑えた控えめな態度でまじまじと観察する。

 好奇心を隠せない瞳で左右に首を傾げるたび、侍女さんの長い髪がワンテンポ遅れてサラリと扇を展開していた。その光景は、直前に地中から生えてくるようなビジュアルを差し引いても高破壊力だ。


「今は試験的にモル鷺←笠所有者の一方通行召喚なの。だからモル鷺君は、好きな時・好きな場所で笠所有者と存分にすることも可能なの」


 所有者の九割は野良勇者ですけどね。


「……これは私が持っててもいいんですかねぇ? 杜鷺様ぁ?」


 それこそ俺に聞かれてもなぁですよ?

 網代笠を大事そうに胸へ抱えこんでモジモジしている侍女さん。


「あらぁ、主の私を差し置いて粉かけ? まさか貴女もフーちゃん狙いだったなんて……敵認定でいいのかしら」


 侍女さんの『根っこワーク』にもピョン子の聴覚にも認識されず、まるで空気のように俺達の背後を取っていたクロハさん。


「キャふっ!」


 次の瞬間、俺が見えたのは両腕でガードしながらも数メートル先へ派手に吹き飛ばされている侍女さんだった。

 格の違いに、ここに居る全員に緊張が走る。


「侍女さん! 大丈夫ですかっ!?」


 ヨロヨロと立ち上がる侍女さんは額から血を流していたが、健気にも笑顔でサムズアップ。


「侍女さん、ひ、額の傷は!?」

「網代笠がなければ即死だった」


 俺に気を遣っているのか、打ち所が悪かったのか判断に困る返しだった。

次回更新は9月5日目標です。

送ろうと思っている新人賞の締切が残り90日なので、

第6章+「小ネタ答え合わせ」まで更新したら、

一旦、新人賞の原稿に集中しようと考えております。

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