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6-8

 朦朧とする意識の中、頬を張られる感覚が次第にはっきりしてくる。


「良かった、気がついたのね」


 目を開けると、馬乗りになった姉が握り拳を振り上げていた。


「ホント、正拳入れられる前に気がついて良かったよ」

「楓麻が気絶してる間にだいたいの事は聞いたわ」


 ポニーを解いたクセっ毛を利用してやや小ぶりな胸を隠してはいるが、チラチラ見えるのは

 拷問だなぁ。正しい意味で。


「とりあえずコレ羽織っとけ」


 燕尾服でも着ないよりマシだろう。

 しおらしく袖を通すと、俺から離れて心許ない胸と脚を恥ずかしそうに押さえる。


「で、手伝ってくれるのか?」

「琴ちゃん絡みなんでしょ……当然じゃない。手伝うわよ」


 責任を感じているのか、ばつが悪そうに赤らめた頬で視線をそらす静香。

 姉の協力を得た俺達は、ピョン子レーダーを頼りにマミさん達の背後へ進路をとる。


  ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■


「トシマジョが来る!!」


 ピョン子アラートを受け、身を潜めた岩陰から周囲をうかがっていると。


「ホホホホ、待ちなさぁ〜い!」


 目の前を全速力で駆け抜けるニセ俺を追って、のん気なスキップでジリジリ距離を詰めるマミさんを確認。


「アーーーーーーッッ!!」


 倒れ込んだ草むらから上がる断末魔。


「ホホホホ、フウちゃん討ち取ったりぃ〜! さぁ観念しなさぁーいっ」


 ニセ俺の貞操ピンチ!


「ははははは」


 仮想空間に響き渡る複数の笑い声。


「誰? フウちゃんとのお楽しみは邪魔させないわよ」


 マミさんがニセ俺を組み敷いたままニタリと辺りを見回し、指をワキワキさせる。


「モル鷺」

「こちらもモル鷺」


 木や岩の陰から三人のニセ俺が姿を現し、マミさんを取り囲む。


「フウちゃんがいっぱい! なんで? 私の下にいるのは?」

「ははははっ、モル鷺とは人の名ではない」


 人の名前だよ! あだ名だけど!


「たいした活躍をしない者、それらは皆モル鷺という」


 否定はしないが、釈然としねーよ!!


「あはっ! 夢のようだわ、ローテで一人頭どれだけ楽しめるかしらぁ」


 さして怯んだ様子もなく、逆に火を付けてしまったようだ。ヘンな所に。


「なんか雲行きがあやしいの。助けてくるの」


 当初の予定では野勇者達がマミさんの足止めをするはずだったが、瞬殺されそうな勢いだ。性的な意味では足止めできそうだが。


「ちょ、先輩! あぶないですって」

「みすみすウチのクズ勇者共を放っておけないの」


 そう言うと、慧依子先輩は一触即発の包囲陣に向かって出て行った。


「腐っても姫なのね、あの人」

「あら、慧依子ちゃん。今から大人の時間よ? 子供は寝てなさい。あ、あと紅音に妹か妹達が出来るって伝えといて」

「モル鷺君は紅音のカレシ? なの。諦めるの」


 微妙な疑問形ですね。まぁ、そんな仲じゃないですが。


「なおさら寝取る方向でっ! ひゃっほう」


 改めて倒れているニセ俺へ、飛び込むようなポーズで襲いかかるマミさん。

 なんか新ルパンのOPで観たことあるやつ!

 手がつけられねぇよ、あの人!

次回更新は8月24日前後の予定です。

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