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朦朧とする意識の中、頬を張られる感覚が次第にはっきりしてくる。
「良かった、気がついたのね」
目を開けると、馬乗りになった姉が握り拳を振り上げていた。
「ホント、正拳入れられる前に気がついて良かったよ」
「楓麻が気絶してる間にだいたいの事は聞いたわ」
ポニーを解いたクセっ毛を利用してやや小ぶりな胸を隠してはいるが、チラチラ見えるのは
拷問だなぁ。正しい意味で。
「とりあえずコレ羽織っとけ」
燕尾服でも着ないよりマシだろう。
しおらしく袖を通すと、俺から離れて心許ない胸と脚を恥ずかしそうに押さえる。
「で、手伝ってくれるのか?」
「琴ちゃん絡みなんでしょ……当然じゃない。手伝うわよ」
責任を感じているのか、ばつが悪そうに赤らめた頬で視線をそらす静香。
姉の協力を得た俺達は、ピョン子レーダーを頼りにマミさん達の背後へ進路をとる。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「トシマジョが来る!!」
ピョン子アラートを受け、身を潜めた岩陰から周囲をうかがっていると。
「ホホホホ、待ちなさぁ〜い!」
目の前を全速力で駆け抜けるニセ俺を追って、のん気なスキップでジリジリ距離を詰めるマミさんを確認。
「アーーーーーーッッ!!」
倒れ込んだ草むらから上がる断末魔。
「ホホホホ、フウちゃん討ち取ったりぃ〜! さぁ観念しなさぁーいっ」
ニセ俺の貞操ピンチ!
「ははははは」
仮想空間に響き渡る複数の笑い声。
「誰? フウちゃんとのお楽しみは邪魔させないわよ」
マミさんがニセ俺を組み敷いたままニタリと辺りを見回し、指をワキワキさせる。
「モル鷺」
「こちらもモル鷺」
木や岩の陰から三人のニセ俺が姿を現し、マミさんを取り囲む。
「フウちゃんがいっぱい! なんで? 私の下にいるのは?」
「ははははっ、モル鷺とは人の名ではない」
人の名前だよ! あだ名だけど!
「たいした活躍をしない者、それらは皆モル鷺という」
否定はしないが、釈然としねーよ!!
「あはっ! 夢のようだわ、ローテで一人頭どれだけ楽しめるかしらぁ」
さして怯んだ様子もなく、逆に火を付けてしまったようだ。ヘンな所に。
「なんか雲行きがあやしいの。助けてくるの」
当初の予定では野勇者達がマミさんの足止めをするはずだったが、瞬殺されそうな勢いだ。性的な意味では足止めできそうだが。
「ちょ、先輩! あぶないですって」
「みすみすウチのクズ勇者共を放っておけないの」
そう言うと、慧依子先輩は一触即発の包囲陣に向かって出て行った。
「腐っても姫なのね、あの人」
「あら、慧依子ちゃん。今から大人の時間よ? 子供は寝てなさい。あ、あと紅音に妹か妹達が出来るって伝えといて」
「モル鷺君は紅音のカレシ? なの。諦めるの」
微妙な疑問形ですね。まぁ、そんな仲じゃないですが。
「なおさら寝取る方向でっ! ひゃっほう」
改めて倒れているニセ俺へ、飛び込むようなポーズで襲いかかるマミさん。
なんか新ルパンのOPで観たことあるやつ!
手がつけられねぇよ、あの人!
次回更新は8月24日前後の予定です。




