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6-2

 俺を雑に抱え込んだ侍女さんは、アクション映画さながらにガラス窓を体当たりで突き破り、二階下の植え込みへ落下。そのまま転げて態勢を立て直すと、ジグザグに走って木の生い茂る城の裏手へ身を隠す。


「なにがあったんですか?」

「かなりやばいです、杜鷺さまが。クロハ様が目覚めてしまいました」


 手際よく『根っこワーク』を展開し、周囲の情報を集める侍女さん。


「クロハ様? え、俺がやばいって何?」

「クロハ様はミツバ様ともヨツバ様とも違う人格です。ザックリ説明しますと、杜鷺さま専用に特化した重すぎる人格」


 いわゆるヤンデレキャラって事だろうか。他にも人格があったなんて知らなかった。


「俺、理不尽に刃物で刺されたりはゴメンだよ」

「刃物っちゃあ全身刃物よね、あんたの姫」


 ピョン子も耳を立て、警戒する。


「そこなんですよねぇ。徒手空拳ならトップクラス……と言うか、ミツバ様の頭ひとつ分以上あります。真正面からでも呼吸するみたいに殺れちゃいますよ、姫なら」


 気を紛らすためか、少しヨツバさんの人格について話してくれた。

 小さい頃、静香が俺のフリをして恋敵のヨツバさんを手酷く振ってから数年。

 静香の嘘を真に受け、俺の理想の真逆へと、無理な性格改善をして生まれた人格がミツバ姐さん。

 同時に、怪しいと思いつつも俺への信頼を裏切る訳にはいかず、愛憎入り乱れた感情が一線越え生まれた人格がクロハさん。


「クロハ様が恐ろしいのは、無敵の攻撃力に狡猾さを兼ね備えている所です」


 単純明快なミツバ姐さんとは無縁な要素。


「ナントカに刃物ね」

「しかも二刀流だよ……」

「たぶん杜鷺さまにはダダ甘だと思うので、命の心配はいらないでしょう。成人するまでは」


 高校生の俺にはよく分からないが、法律的な何かで護られているようなニュアンスだ。


「ちなみに、見つかっちゃったら俺どうなる?」

「数年分溜め込んだ存分にで存分にされるかと」


 存分にで存分にですか……いまだ存分にの意味がわからないんですけど。


「元の人格に戻るまでアンタの貞操が常時狙われるってコトよ」


「いいかげん察しろ」と俺の頬をタッピングするピョン子。


「ウサ子ちゃんの言う通りです」

「解決策はないの? 無いから逃げてるんだろうけど」


 過去にクロハさんと遭遇した侍女さんはどう対処したのか。一縷の望みを託して聞いてみる。


「このリボンが結べればなんとかなるかも……」


 侍女さんが優しく取り出したのは、ミツバ姐さんの人格が憑いた改造リボンだった。

 その時はクラブ国王と侍女姉さんがクロハさんを取り押さえ、侍女さんがリボンを結ったらしい。


「わかった。俺がやるよ。まずは話し合ってみる」


 人格統合の手伝いをすると決めていたからな。


「アンタ、主人公っぽいこと考えてるみたいだけど、現実見えてないわよね」

「こう言ってはなんですが、簡単に組み敷かれちゃうと思いますよ?」


 それも困るなぁ。確かに俺の身体能力なんか、クロハさんにしてみれば無いも同然。


「逆に、女の子以下の抵抗力で足掻く杜鷺さまに興奮して大変なコトになるかもですねぇ」


 何が逆にかは置いといて、良く考えれば熱量は別として、俺に説得が出来るほどの技量はないだろう。マンガみたいに心に響く内容を情熱と気合いに乗せてお伝えできればなぁ。


「それでも会ってみるよ。侍女さんはフォローをお願いします」


 まだ城内にはマミさん達が残っているはず。なんとか人手を集めて最悪の場合に備えてもらう事にした。


次回更新は8月2日前後の予定です。

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