5-8
第四戦、勝つには勝ったが、虫を食べちゃう女児はビジュアルとしてどうなのよ?
予想通り消化不良らしく、お腹をさすっているプロディちゃん。
そして後半、第五戦目。
細い眉をハの字にして困り顔の彼女の前へ、相手の三将が優雅に歩み寄る。
その姿は、タキシードを着込み、二足歩行する『蚊』だった。
さっきの女王蜂より二回りほどの大きさで、音楽家なのか、バイオリンケースのようなものを持っている。
「我輩は『プファイファー・ユスリカ』。そこの御仁。我輩を『蚊』と思っているようだが、血液など吸わんぞ」
ユスリカって言ってるからな。それに別の部分で人名なのか銃なのか遠すぎて分かんねぇよ。
「同胞の仇、討たせてもらう」
バイオリンケースを開けるプファイファー・ユスリカ。その中身は楽器ではなく、大型の拳銃だった。
「おい、そんな細い手足で大丈夫か?」
明らかに自重より重そうなシロモノだ。反動に耐えられるのかと、敵ながら心配してしまう。
「心配無用」
銃を抱えたまま「プワァ〜ン」と浮遊し、ヨロヨロとプロディちゃんの頭上へ移動する。
「フンッ!」
5kgは優に超えるだろう大口径の銃を、高度3mから落下。
「なばなっ!!」
「ゴッ」と鈍い音を立て、ヘッドドレスごとプロディちゃんの額を割り、足もとの舞台を抉る。
やっぱり撃たなかったよ! 打撃武器扱いだよ! あまりの衝撃にプロディちゃんも意味不明な声あげちゃてるじゃねーか!
「うー……」
涙目で脳天を押さえ、うずくまるプロディちゃん。
その前へ勝ち誇ったように舞い降りるプファイファー・ユスリカ。
「どうです? 最強を誇る我輩の得物は」
顔を上げたプロディちゃんがプクリと片頬を膨らまし、怨嗟の目に不釣り合いな表情でプファイファー・ユスリカを掴むと。
「もがぁ」
やべぇ、この子なんでも口に入れちゃう!
「ダメダメ、ペッして! ペッ!! Take care of お腹っ!!」
予想できたにもかかわらず、今度は女王蜂の倍もある虫をひと飲み。
物理法則を無視した不自然な喉のふくらみが下降すると、プロディちゃんの愛らしい下腹がポッコリ膨れあがった。
「けぷ……」
「杜鷺。あの子、お腹ぱんぷくりんじゃない。棄権させたら?」
ぱんぷくりんって、そんなファンシーな状態じゃねーよ。
「すいません、棄権します!」
どうやらアニメあるあるの「ロリほど最強」は適用されなかったらしく、女児とは思えない形相でお腹をかかえるプロディちゃん。
第五試合は引き分けとなり、俺は彼女を背負ってトイレをめざした。
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残る敵は副将と大将。
こちらは俺、霊仙寺、慧衣子先輩、マミさんと、到着が遅れているルビーナの五人が健在だ。
「このままオンブにダッコって訳にもいかないな。ピョン子先生、お願いします」
「アンタ、結局他人任せじゃないのよ!」
「基本は俺が闘うよ。ピョン子、防御を頼む」
「アタシが右手だからって、うまいこと言ったつもり!?」
これで俺が2勝できれば四人は戦わずに済むからな。
「それでは、第六試合を開始します!」




