5-7
「プロディちゃん無理するなよ」
まぁ四元素同時に錬るだけの高スペックだから問題なさそうだけど。
「らーいじょうぶ! むぁーかせて!」
半目で指を中途半端に曲げたピースを向けるプロディちゃん。
どっから仕入れてくるんだ、この子は……
「そのロボ娘が大魔王の娘なのかい?」
「あ・ん・ろ・ろ・い・ろ」
いやいや、言えてないから! 俺のせいだけども! そして君はアンドロイドじゃないよ?
「モル鷺君とジェイショッカー隊員達の偏ったオタ知識が解放されつつあるの。モル鷺君がうまく舵をとらないと、残念幼女に成長しちゃうの」
「責任重大じゃないですか!」
理想は淑やかで、儚げな中にも凜とした芯を持つ子に育ってほしいなぁ。
「第四試合、始め!」
プロディちゃんの完成形を夢想していたら、いつの間にか試合が始まっていた。
女王蜂の指示で猛然と突撃する29匹の兵隊蜂。白いゴスロリ衣裳に群がり、瞬く間に黒山となって身動きを取れなくする。
再び女王蜂が指示を出すと、兵隊蜂全ての禍々しい針が一斉にプロディちゃんを襲った。
針を撃ち込んだ兵隊蜂が、やりきった感を醸しだして離脱。距離をとって滞空する。
「根本を分かってないの。女神素材の粘土細工に毒なんか透らないの」
プロディちゃんの全身には、目視できるほど大きく長い29本の針が深く刺さっていた。
「痛々しくて見てられないよ」
が、慧衣子先輩の言う通り、女神のカケラ配合の張りツヤで潤う肌の前には無力だったようで、押し返された針がポロポロと落下していく。
兵隊蜂は次弾装填の間もなく、無表情のプロディちゃんが繰り出す業火に包まれた。
一体だけ残った女王蜂へ手を伸ばすプロディちゃん。
「ぱくり」
食べちゃった!!
「ちょっ、プロディちゃん! ダメダメ、出して! ペッしなさい!」
慌てて駆け寄るが、無情にも俺の目の前で白い喉が動く。
「あー……飲んじゃったか」
「まじゅい」
だろうね。
「勝者、プロディちゃん!」
試合内容に難ありだが、俺達は四勝目をあげた。
「ヘイヘーイ! ミケーニャさんよぉー、負け知らずの七将軍じゃなかったのかーいっ!」
活躍の場がないマミさんが野次る。
「ワタシ達必要なさそうね。これじゃ相手がお粗末なのか、シズカのチートが凄すぎるのか分からないわ」
「切磋琢磨する勢力もなく孤島でノホホンとしてるからなの」
姫をさらわれた97国は、抵抗できなかったのだろうか?
「橙愛ちゃんは必要ないなんてコト、ぜんっぜん無いわよぉーっ!」
どこから出したのか、派手なパラソルのもと、ビーチチェアに寝そべっているマミさん。涼しげな空っぽのガラス容器を差し出し、スプーンでチンと鳴らす。
「審判。ちょっとなの」
めずらしく慧衣子先輩が動く。侍女姉さんと何やら話し、バニースーツの胸元を広げると、ちょっと羨ましそうな瞳で札束を魅惑の谷間に捻り込んだ。
手際よくビーチチェアごとマミさんをグルグル巻きにし、担ぎ上げる侍女姉さん。
「お届け先は例の岩場なのー」
試合は暫く中断になったが、文句が出ることは無かった。




