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第三試合。
相手の自爆で順調に勝ち続ける静香の次なる相手は。
「…………」
鳥人タイプの、寡黙な魔物だった。
平成の探偵ライダーを思わせるデザインで、同じ鳥類だが、右半身が『鳶』で左半身が『雁』だ。
マフィアの殺し屋っぽい感じで葉巻を咥え、ダンディな帽子を深々と被っている。
そしてやはりコイツの手にも銃火器。ザクが持っているようなアレ。
「彼は獣鬼七将軍一、クールで寡黙な男なんだ。喋らなければ、お嬢さんの『セオリーブレイカー』とやらも怖くないさ」
それ、一番ダメなパターン!
「さぁ、『トビー・雁』! いつも通りクールに決めてくれよ」
「…………きゅう」
口数の少ない寡黙キャラなんて、存在自体が『お約束』。静香にしてみれば、一番やりやすい相手だったろう。
「……や、屋根の……質は……ラワン!」
意味不明な断末魔を絞り出し、五将『トビー・雁』もあっけなく『セオリーブレイカー』の餌食に。
「ねぇ、アナタ達やる気あるの? ここまで全員、あからさまな出落ちよね」
ごもっとも。だが、静香よ。これがエルマナだ!
「獣鬼七将軍が出落ちだと言うのかい!?」
違うのかよ。
「例えばその鳥、サワ……左腕は雁で右の翼は鷹羽。え? トビ? タカ目タカ派……タカ科じゃない、たいして変わんないわよ」
ああみえて静香も異世界冒険に幻想を持っていたのかな。
「これが楓麻の言う『エルマナ思考』ってやつなのね。だいたい把握したわ」
「ねぇフウちゃん。あの鳥、井ぶ……燻せば良い匂いしそうよね」
マミさん、もうお腹いっぱいです。しつこいのはスマートじゃないですよ?
ちなみに俺はハト野派です。
「えぇい、不甲斐ない! 審判っ!」
ストレートで三敗のミケーニャ軍。またもや侍女姉さんを呼びつけるヤミの帝王。
ずる賢い笑顔で電卓を弾き情報料を提示、二、三コソコソと囁いて、しぶしぶ頷く帝王。
「ねぇ、あなたのお姉さん、ずっと目が『¥』マークになってるけど大丈夫?」
霊仙寺がやつれかけた侍女さんに声をかける。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
侍女姉さんのアドバイスを受け、帝王が順番変更を指示する。
そして登場するミケーニャ帝国の中堅。
七将軍の中で一番小柄なシルエットは、登場時からずっとフワフワ宙に浮いていていた。
「『セオリーブレイカー』とは、いわば舌戦が可能なボス戦に特化した能力。知性の無い相手はどう対処するんだい?」
大見得を切り、滞空するローブを大げさに取り払う帝王。
「獣鬼七将軍の紅一点! 30匹で1体の『ビー・三十蜂』で勝負だ!」
ローブの下には、30cmほどの女王蜂モンスターを中心に、15cm前後のスズメバチ型魔物29体が攻撃態勢で整列していた。
「ムリムリムリ! 私、虫ダメ!」
逃げるように舞台から降りる静香。
「勝者、ビー・三十蜂!」
「お前、ナニ女子ぶってんだよ! 誰アピールだ!?」
俺の背中にしがみつく静香。
「マジ無理。子供の頃とは見えるモノ、違うんだもん」
確かにセミとかカブトムシの腹はチョットって思うけども。
「霊仙寺より忘れられがちな『ハート国は火属性』って通り、ベタな炎の能力だったらデカイ昆虫なんか余裕なんだろうな」
怖々と腰から顔を覗かせる姉の頭をポンポンしてやる。
「エルマナが大量チート持ちで溢れかえった結果なの。他者と差別化を図るために、より奇抜な方向へ複雑進化したから、こんな単純な相手に足もとすくわれるの」
エッジの効いたチートも善し悪しか。慧衣子先輩は『風属性』らしさ、サッパリですよね。
「そうは言うけど、相手のプライド加減で自滅させるってコンセプトは静香ちゃんの内面によるものよ?」
誇り高いヤツほど前口上とか多そうだからな。静香の嫌うタイプだ。
「インテリ系も騎士道系も寡黙も含め、テンプレ通りなら瞬殺なのに、知性の無い相手には無力って……」
「しょうがないでしょ、高次元すぎて雑魚には効かないのよ。悪いけど、誰か代わって」
虫が苦手という意外な弱点が明るみに出て、クソ暑い中ピッタリ背に貼り付く静香。
「お前、怖いモノ見たさで顔だけ出すなら、テントの隅っこでかき氷でも食ってろ」
静香をなだめ、不快な羽音が響く舞台周辺から遠ざける。振り返ったステージを見れば、いまだ姿を現さないルビーナが大将って以外、順番は決めていない事もあり、プロディちゃんが次鋒として上がっていた。




