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体長2mはある熊の魔物で、顔はクマというよりイノシシに近いか。
分厚い手と鋭いカギ爪は、ズングリした体型に焦げ茶色のボディとあいまって、トゲ付きハンマーを楽々キャッチしそうな雰囲気だ。
そして巨大な体躯に似合わず、狙撃ライフルのような銃を背負っている。
「オレ様は獣鬼七将軍が一人、地属性S種族の『グリズリー・大猪』だ! こんな小娘が相手とはなぁ」
「私は『セオリーブレイカー』の杜鷺静香。口は災いの元よ?」
サラッと能力発動させたな。
「それでは第一試合、始めっ!」
『グリズリー・大猪』が狙撃ライフルを振り上げ静香に襲いかかる。
「ソレ使い方間違ってるよね!? ってか、アンタ素手の方が絶対イイって! なんのための爪だよ!」
これが普段の戦闘スタイルなのだろうか。だとすれば非常に効率が悪い。
「ガハハハッ! 初戦から俺様が相手とは運が無……きゅう」
脳筋デカブツキャラが、まさにセオリー通りなセリフを咆えれば当然、
「勝者、杜鷺静香!」
そうなるわな。
静香は一歩も動かないまま、数秒で決着。
相手側の次鋒がローブを投げ捨て、静香の前へ立つ。
「次は俺が相手だ。獣鬼七将軍・水属性S種族の『コールド・バイソン』参る!」
今度の相手も見た目パワーファイターのベタなタイプだ。相手ながら大丈夫か?
大きい鋭角なツノを生やした、逆三角のマッチョな体型。ガンホルダーにリボルバーを携帯していた。
どうでもいいけど、『蛇』じゃないのかよ。水牛て……で、また銃か! 残念な予感しかしないよ!
「第二試合、始め!」
コールド・バイソンが静香へ突進しながら、銃を抜く。
「だから振り上げるなって!」
ダメだ。こいつら、頑なに銃を鈍器として使用する傾向が強ぇ。
「ハッハッハッ! 俺はグリズリー・大猪のようにはいかんぞ、だいたいヤツは我ら獣鬼七将軍の中でも……ギュウ」
牛だけにか! あ、水属性だから水牛? 寒いよさすがに凍るドだよ!
「アンタうるさいわよ! さっきから心の中でツッコミすぎ! 誰も聞いてないからって『凍るド』はどうなのよ?」
ピョン子に怒られてしまた。
「スマン。今まで緊張してた分、反動でな。ある意味エルマナって平和なんじゃね?って」
続く第三試合の直前、ヤミの帝王が動く。
「審判! ちょっと」
侍女姉さんを手招きし、何か耳打ちしている。
「ピョン子、聞こえるか?」
「あ?『あの能力は何だ』とか言ってるわ」
立て続けに自慢の将軍が秒殺じゃ無理もないか。なんらかの対抗策を練ってくるかな。まぁ、あればだけど。
「なんか揉めてるな」
「はぁ、姉が静香様の能力をリークする代わりに、高額な情報料を請求しているようですねぇ」
根っこワークで闘技場の芝に耳を傾ける侍女さん。
「あ、すげぇ札束」
ごっそり胸元にねじ込んだ侍女姉さんは、何事もなかったかのようにコホンと咳払いをして、舞台中央に戻る。
「さぁさぁ! ドンドン行きましょう!」
マジか。
溢れる札束を隠そうともしない侍女姉さんに、諦めと潔さを感じ、俺は試合の行く末を見守るしかなかった。
次回更新は7月3日の予定です。
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