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4-13

「ホラホラ楓麻ちゃん。とりあえず触ってみ?」


差し出された腕に触れてみれば、ネーミングに反して柔らかくモチモチしていた。


「うわ、やわらかっ! もう金属じゃないじゃん。なんか怪しいドール素材だよ!」

「楓麻ちゃんが寂しい時には『1/1プロミディアさん』をご用意できるわよ。存分にしちゃっていいからね」

「遠慮しときます」


 なんだ寂しい時って。


「お久しぶりね、プロミディア。そんなに脳天気なキャラだった? 飲んだくれてるイメージしかなかったけど、フウちゃんのおかげかしらね」


 あー、DQN法がコケて、俺が来るまではやさぐれてたんだっけ。


「あなたは相変わらずのようね、マミちゃん。少し若返ってるし」

「それが両極の特性だから。そのうち娘より若くなるかも。あ、そしたらフウちゃんの学校に転入するのも面白いわね!」


 見た目は全然違和感ないのが怖い。さらに本当に実行しそうでもっと怖い。


「ところで女神殿、ご注文のパーツはこんな感じでいかがでしょうか?」


 現状のプロミディアさんより二回り半大きい、凶悪な生々しさで再現された霊仙寺の一部が披露され、室内に感嘆の声があがった。


「ちょっ、恥ずかしいから早くしまって! ワタシどうかしてたのっ!!」


 両腕でガッチリ胸を覆い、しゃがみ込む霊仙寺。

 オリジナルこそ見てないけど……存分に揉ませてはもらったけど、俺の感想だけでああまで形にできるものなのか。モデラー班、おそるべし。


「パーフェクトな仕上がりです。ご苦労さまでした」

「お褒めにあずかり光栄でございます。これからもプロミディア様のために魔改造職人一同、精進いたします」


 なんか悪の組織みたいな絵づらだな。


「でもコレじゃ収まる服ないわねぇ。橙愛ちゃん大変でしょ、いつもどうしてるの?」

「大きなお世話ですっ!」

「まぁいいわ。『勝負オッパイ』として、ここぞという時に装着しましょう」


 そんな時なんか来ねぇし、どんなここぞだよ!


「あらためて思うけど、なんでコイツら10年選手みたいに誰とでも馴染んでるの?」


 隠しきれないワガママボディを隠しながら、俺の背中を盾がわり定めた霊仙寺がコソコソと移動してきた。


「大人の処世術なんじゃないのか? よく知らないけど。俺もこの人達と死闘を演じてたのがウソじゃないかと思える距離感になってるし」

「良くも悪くも無神経なのかしら」


 媚びへつらう(本人達がそう思っているかは別として)落ちこぼれ中年男性を見て、霊仙寺の瞳は警戒の色から哀れみ一色となり、弱々しくツインを揺らすのだった。


「今じゃスペード国、というより、慧依子先輩になくてはならない存在なのは事実だな」

「そうなの。質的には現役勇者のモル鷺君には劣るけど、ある程度の無茶が可能なの」


 落ちぶれて利用価値が無くなった野良勇者が一転、スペード国の準勇者として返り咲け、勇者が召喚できないスペード国はグレーゾーンながら元・勇者を抱える事ができてWin Winの関係だろう。


「慧依子姫は我ら野良勇者の救世主。私設ブランド『スペイ堂』の『首魁』ですからな」


 エルマナ思考がプンプン臭うけど、もと悪党集団を束ねてるから『首魁』であってるのか。


「そう、私が首魁・慧依子なの!」


 答え出ちゃったよ。


「尖ったアイテム傾向に拍車がかかった感が否めない……」

「まぁまぁ、慧依子が暴走したら僕が止めるから、おおめに見てやってよ」


 慧依子先輩だけでも大変なのに、野良勇者達が加わったらスペード国王だけで捌ききれるのかな。

 ま、心配してもしょうがないか。


「なんにしてもプロミディアさんが万全なら、俺も気兼ねなくカードが使えるってことだね」


 あとは移動手段の手配をしている侍女さんと合流すれば、いよいよミケーニャ帝国だ。


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